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第二十四話 王国の立場

「五カ国同盟軍がシウアン島へ強襲上陸しました。これに対し、全ての連合軍構成国が同盟国陣営に宣戦布告し、戦闘状態に陥っています。ナチャーロ帝国と崇ノ国については、先の紛争の延長という扱いです。

僅か数時間で双方に多大な被害が出ており、艦隊が全滅したサラ合衆国は撤退の模様。」


夜が明け、パナスブラン王国仮首都スバルにも、その戦況が続々と入ってきた。緊急で王宮(元植民地総督府)での御前会議が行われ、王国の今後の方針について論議される。


玉座のユーラシエに意見が求められる事は無いが、彼女もそれを不安げに聞いていた。

パナスブラン王国としては、今回の五カ国同盟軍の一斉攻勢は寝耳に水。ユーラシエの意向により、休戦期間中にナチャーロとの和平会議を進め、占領された島々の返還も一部決まっていた。


その結果にパナスブラン側も安堵した。このまま行けばシウアン島の返還も実現し、崇ノ国とナチャーロの紛争も終結するだろう。そうなれば、その紛争にかこつける形で互いの利益を求める同盟の存在意義も無くなり、中央海は一先ず安泰だ。西大陸、東大陸、空飛ぶ島々が本格的に通商条約を結べば、植民地支配の必要も無くなる。

戦争では無く、こうした平和な解決方法がある。


……そう考え、「協力者」である五カ国同盟にもその方針を打診し、積極的な戦闘を避けるよう伝えたのだが……。


「聞き入れられなかったか。」


大臣の一人が、苦々しげに吐き捨てる。


「こうなった以上、我々も五カ国同盟と運命を共にし、連合国と戦う他ありません。自衛部隊を残し、軍を前線へ移動させるべきです。」


「阿呆!国防軍にそんな余裕があるか。」


若い将校の発言を、軍総司令官レーバが切り捨てた。しかし、両者の発言はどちらも正しい。唯一新生王国へ支援を行う勢力が敵対勢力と戦闘を行うのだから、こちらとしても心理的には参加を表明したい。一方で、それを行う戦力が不足していた。


現在の新生パナスブラン王国国防軍の総戦力。


陸軍……歩兵一万。戦車十輌。各種重砲三十。装備は全て支援物資で、二線級の品々。

海軍……無し。

空軍……飛行艦三隻。旧式戦闘機が幾らかと、崇空軍からの傭兵部隊。


これでも、数か月で準備したとは思えない大兵力である。女王の演説の後、新たに六つの島が王国へ参入したからだが……。もう一つ、錬度不足という決定的な弱点があった。


「銃の使い方をやっと覚えたような人間に、前線での戦など土台無理だ!……せめて対空兵器がもう少しあれば、使いようもあったが……。」


レーバは、そこで口を閉じた。無い物ねだりをしても詮方ない。周囲がザワつき始めた。


「……とりあえずは、我が国の防備を固めるのが先決でしょう。レーバ殿の言う通り、我が軍には余力が無い。」


「そうは言うが、地上の奴らに恩を売っておかねば、後々軋轢を生む。」


「そもそも、今回の……。」


辺りは喧騒に包まれた。


僅かな隙に、ノイスがユーラシエに問い掛ける。


「どうですかな?通信の具合は。」


「……ダメです。上手く意識を繋げる事ができません。」


「ふうむ……今の所、彼が基地に持ち帰る前線の情報以外、利点がありませんな。」


ユーラシエが、少し曇った顔をした。









いない。


雄一のマグ降爆は、慌てたように翼を震わせた。


無数の軍艦がひしめいているはずのズナーク島には、水雷艇一隻 の姿さえ見えない。穏やかに広がる海が、今は逆に腹立たしかった。


二日前まで、確かにナチャーロの大艦隊がここに集まっていたのだが。……とすると、もう中央海東部まで行って、味方と戦闘しているのだろうか。

彼はナチャーロが奇襲を察知し、外洋へ展開中である事を知らない。


「とにかく、報告しないと。」


即座に翼を帰るべき巢へ 向け、雄一は懐から赤い石を取り出した。


つい数日前、女王から直々に下された命令。彼は未だに、その真意を知らせれていない。だが、彼としてはひたすら任務をこなし、信頼に応えるしかなかった。


「第十二定時報告。我、ズナーク島に到達するも敵艦隊は見えず。」


彼は今、パナスブラン王国軍の「目」として、極めて重大な任務に着いていたのである。






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