第四章 あなたはいま何処にいますか?(2) 夜間編
色々な参考書を読んでると分かるけど、万人に理解出来る文章は本当に難しい。判りにくい表現があったら教えてください。
序
『球面三角法』というのを知っているだろうか? 小学生の事にやった『平面』三角法を地球のような球面上でやる方程式である。
三角形の六つの要素。三辺の線の長さと、三つの角度の内、三つを知れば他の三つも知る事が出来る。
球面でやる三角法も三つの要素が判れば他も判るようになっている。
具体的な方法は割愛するが、調べれば誰でも判る筈だ。難易度的には、高校二、三年生が電卓を使えば可能な筈。公式にsin cos tan などが多用されるので、電卓なしで解くのは難しい。
例え計算が面倒だという方でも大丈夫。道具を使って、判明している三つの要素を満たして三角形を作れば誰でも答えれる。
第四章 あなたはいま何処にいますか?(2) 夜間編
(夜の部へと移行する合間のスタジオの楽屋)
太「……その道具が、この三つの輪が付いた地球儀ですか? 前回VTRの中で使いませんでしたね」
伝「考えてみれば、異世界に飛ばされたばかりの人が持つには不自然かなと思って。やっぱり台本無いと用意が悪いわね」
太「何となく、その三つの輪で三角形を作って計測するんだろうなと思いますが、その三つの要素を異世界に来たばかりの状況で満たせるんですか?」
伝「よく考えたら、無理だわ。その星の何処に磁軸があるか調べようとしたら、星を一周しないと無理だし」
太「大体、考えすぎなんですよ。地図も何も無い状態で経度を測っても仕方ないじゃないですか?」
伝「そうね。要は現在の経度をゼロとして、ずれた分を計算する方法を教えればいいわけだし」
太「それより前回のVを見直したんですが、結局経度の測り方言ってませんよね?」
伝「……言ってなかったっけ? まずいな、自分は理解しているから無意識に流してしまった」
太「それにその地球儀、本当に使うですか?」
伝「最後に使おうかなって思ってるわ。そろそろスタジオも準備出来たみたいよ」
(スッカリと、夜も更けてまいりました)
伝「さて、ドップリと夜も更けた事で天体観測をするんだけど、どんなふうに観測すると思う」
太「そうですね。写真機があれば夜空を撮りたいですよね。そして最終的には全ての季節の天体図を完成させれば、星空を見るだけで何処にいるか判るようになりますし」
伝「おお、少し前に話した事を覚えていたんだね。その写真を撮る方法として、真北、つまりは北極点を中心にカメラを構えて、シャッターを開いた状態で放置すると面白い絵が撮れるのは知ってる?」
太「シャッターを開いた状態で? ん~~ん、確か北極点を中心に星が回転しているのが線で表現されてたような」
伝「よしよし、その回転は右と左どっちだった?」
太「静止画なので判りません」
伝「そういうだろうと思って、ここに満天の星空をご用意しましたので、時間を早回しして回転させてみましょう」
太「星空というか、ただのプラネタリウムですよね。おおっ、真北を中心に確かに回転してますね」
伝「天体は何故回転するのか。それは、地球が北極点と南極点を軸に自転する事によって相対的に人の目には天体が回転しているように見えるの。
それで、回転方向なんだけど、右回りに見えるわね?」
太「そうですね。どうしてですか?」
伝「それももちろん、地球の自転が東回り(北を上にしたら右回りですね)をしているからよ。これも自分で体感すれば判るけど、天井に何か目印を付けて、そこから少し離れた所で上を見ながら自分でグルグルと右回りをすると、右回りしているのが判るわ」
太「へえ~~」
伝「南半球では逆に北極点ではなく、南極点を軸に天体が回転するわ。つまり、南が上を指す事になるから、東は左向きになるので、星空も左回りをする事になるわ」
太「南半球だと逆回りするんですか?」
伝「これも自分で体感すると判るんだけど、床に何か目印を置いて、下(つまり南)を向きながら右回りをしてみて。目印が左回転しているように見える筈よ」
太「おおっ、実体験するとよく判りますね」
伝「少し話を逸らすと、この右回り左回りは、他の現象でも見られるの。竜巻の回転方向は北では右で、南では左を。渦潮やお風呂の栓(形状によって変化するかも)を抜く時の回転方向も、やっぱり北は右で、南は左回りをするわ」
太「知らず知らずの内に、ボクたちは自転の影響を受け続けていると云う事ですか……」
伝「ちなみに、地球の北半球ではその軸(中心点)に北極星と言う星があって(異世界では判らない)、南半球の天体では見られないから、その有無だけで自分がどちらにいるか判断出来たりするの。さらに北と南では回転軸が上下逆だから星の位置も月などの『惑星の模様』も、上下左右逆に見えるから、異世界に行った時は必ず天体観測をする事。それを欠かさず毎夜繰り返せば、例え敵に何処かにワープさせられても、現在地を測定する事が出来ますっ!」
太「そんでもって、太陽が東から昇って西へ沈むのも、地球が東回りの自転をしているからですね。西から昇っていた場合は、西回りです」
(ようやく、現在地の緯度を測りましょう)
伝「色々と前置きが長かったけど、ようやく此処まで来たわ……。
現在、我々は方位磁石によって此処が北半球で、太陽を観測する事によって、真南を知ったので、天体の回転軸である真北がどの方向か判明してます。問題はその回転軸の角度です」
太「軸の角度ですか? 此処から見える天体では45度ぐらいですかね? 観測地点によって変わるんですか?」
伝「あっさりと目測で看破するな。……どう変わるか具体的に述べると、緯度が低い赤道付近では地平線ギリギリにあって、北極点付近だと、ほぼ真上にあるの。
どうしてそんな現象が起こるのか、面倒臭いからこのVが終わったら先生役の人に解説して貰いましょう」
太「あっ、面倒事を人に押しつけた。それよりも、緯度にって回転軸の角度が変わると云う事は、それを正確に測れば答えが出ると」
伝「そういう事ね。せめて分度器がなければ測れないけど。『六分儀』ぐらいだったら原理は簡単だから異世界でも作れると思うから、気になる人は調べてみて」
太「ちなみに、分度器はどうやって使うんですか?」
伝「分度器を下向きに棒に付け、分度器の中心に重りを付けた紐を付ける。そして、棒の先を北極星(回転軸)に向ける。すると観測地点によって棒の角度が変わり、分度器に付いてる紐で計測できるわ。
このシステムを発展させた道具で、三脚と望遠鏡を接続する部分に分度器をつけて、望遠鏡(簡易版にとっての棒)の傾きをすぐに測れるようになった道具が発明されたわ。重さ的に携帯できるので大変便利」
太「――最後はキャッチコピーのようだ………」
――――次回は、総まとめをやります。