一章・第壱話~門前の少年~
第一魔法学校アルカナ学園。この国、『オルタス』には魔法学校が8つあり、それぞれ第一、第二、と学園の名前がある。その中でも一番成績の高く、有名魔法師を多数排出する学園を、第一魔法学校アルカナ学園と言う。この学園のエンブレムは六枚花弁の花で、しかし、そのエンブレムを制服に刺繍されるのは、特等生だけだ。此処の生徒のほぼ全員が、無刺繍である。
そして、サキカ・アレジメントは、特等生の1人であるので、両肩にはエンブレムがついている。それはそれは目立つもので、だが目立っているのはエンブレムがあるからだけではないことを、彼は知る由もない。
第一アルカナ学園は、8つの学園の中でも最も大きな学校で、それは国王の城に匹敵するくらいの大きさである。背は平均より少々下回る程度のサキカは、学園の門前で首を痛めていた。
「さ、流石に大きすぎませんか……?」
痛い首を左手でさすりながら、一言、この大きすぎる学園を作った人物に向かって、愚痴を零す。尤も、これからその人物───理事長の理事長室に呼び出されている彼なので、その愚痴を言いつけるつもりでいるが。
彼の周りを通り過ぎていく他の生徒達は、道中に立ち止まるサキカを見、その誰もが感嘆の溜め息を付いた。
それに彼が気付くことはあるかないかで言えばあるのだが、
(皆さん、何故僕を見て溜め息を付くのでしょうか?あぁ、僕の顔が余りにも不細工なのですね)
と、全く正反対だった。彼の容姿は、綺麗すぎるのだ。男女問わず、百人中九十九人は振り返るであろう。モノで表すとすれば、ガラス細工のようなモノである。
少年と青年の狭間、少し幼さを残した、けれど大人びすぎたオーラを身に纏うサキカは、いつの間にか誰も居ない道中に気付き、慌てて走り出したのだった。