第二話
主人公、まだ出ません。
5/2…改良
「倭の国」→「倭の國」
「エルフ精霊使い(ラウラ)」→「エルフ精霊使い」
ラウラの名前判明の後、戦士リーダーと覆面無口の名前を紹介。
1-2
月夜が捜索隊に加わってから30分後、一同は森に来ていた。
あの後、月夜に続き六人ほどの魔術師と一人の精霊使いが参加したため、組み分けに少し時間がかかったのだ。
月夜のいる組は体格の良い戦士風の男(戦士リーダー.仮)に黒系の服を着て覆面をつけたた斥候と思われる無口な男(覆面無口.仮)、精霊使いのエルフの女(エルフ精霊使い.仮)、陰陽師(月夜)の四人組で捜索にあたることになった。月夜以外の三人は同じパーティーの仲間らしく、戦士リーダーから戦闘は任せてくれと言われたため月夜は結界を張ることに専念していた。
暫くすると戦士リーダーが話しかけて来た。
「しかし嬢ちゃんはすげえな。陰陽魔術てのはめちゃくちゃ難しいって聞いていたんだが…」
「まあ間違ってはいませんよ。重要なのは知識と瞬時の判断力なのですが、知識は本や先達から得られるとしても判断力の方はひたすら経験を積むしかありませんからね」
「なるほど、ある程度の経験積まなくてはまともに使うことは出来ないが、まともに使えなくてはろくに経験を積むことも出来ないというわけか…。そりゃあ使う奴も減るわな」
「でも、それなら月夜さんはどうやって使えるようになったの?」
「私の家は代々陰陽師を輩出している家系なんですよ。だから小さい頃からそれはもう厳しい修行を受けさせられたんです」
そう、あれは五歳の頃だった。三歳の頃から陰陽魔術を習っていた私は五歳の誕生日の夜、『五時間以内に五匹、宮魔を狩っておけ』と言われて家の地下にあるE級迷宮に術具と共に放り込まれたのだ。
あれは今考えても酷いと思う。なんせ三歳から習っていたとはいえ、実戦経験の無い幼女を凶暴な宮魔どもの巣に一人で放置したのだ。我が親ながら、本当にあり得ない。
そんなことを考えていると魔獣が一匹、近づいて来るのがわかった。
それを他の三人に伝えると、三人は魔獣を倒すべく連携のとりやすい位置に広がる。月夜はその間、邪魔にならないように三人から離れる。
三人が戦闘体制を整えたその瞬間、木々の間の暗闇の中から人間の大人ほどの大きさの影が飛び出して来た。
精霊魔術による明かりに照らされて露わになった影の正体は、大人ほどの大きさで深い緑色と濃い茶色の迷彩色の硬い毛皮を持った、狼の魔獣だった。
狼の魔獣は今にも自身を攻撃しようとしている三人を一瞥するものの、それどころではないとばかりに走り去り、残された月夜達四人は狼の魔獣の不可解な反応に首を傾げた。
「どういうことでしょうか?」
「さあな、あんな反応は俺も初めて見るが…」
「………」
「(あの魔獣はまるで何かから逃げているように見えた。そう、まるで強大な何かから…)
でも、魔狼にとっての強大な相手って?」
「魔狼? フォレストウルフのことか?」
「はい、私の故郷では狼の姿をした魔獣や宮魔のことを総じて魔狼と呼んでいるんです」
「なるほど、しかしフォレストウルフにとっての強大な相手か」
「何か心当たりが?」
「いや、そもそもフォレストウルフはこのあたりではかなり強い方なんだ。だからもっと奥、例えば迷宮の周辺なんかならわからんが、ここら辺ではフォレストウルフが尻尾を巻いて逃げるようなヤツは居ないはずなんだがな」
戦士リーダーの説明によると、フォレストウルフは森の中やその付近では高い隠密能力を誇るCランクの魔獣で、この森の生態系の中では相当上の方にいるんだそうだ。
「まあ何にせよ、先ほどの魔狼の様子を見た限りこの先に何かあるのは間違いなさそうですね」
「そうだな、行ってみるか。何か手掛かりがあるかもしれん」
そうして月夜達四人が暫く歩いると、前方に木々の開けた広場のような場所を見つけた。
四人は広場に着くとそこにいたモノを見て咄嗟に伏せた。
「おいおい、なんであんなのがココにいんだよ」
「あれは………まさか竜種ですか!?」
林の影に伏せた四人の視線の先にいるモノ、本来ならそこにいるはずのないモノ。それは、亜種ではあるがモンスターの中でも上位の存在である竜種に属する地竜の一種だった。
「まずいな、気付かれたら死ぬぞ」
「急いでこの場を離れましょう、今ならまだ気付かれていません。ロクな準備もせずに竜種に挑むなんて狂気の沙汰ですよ」
「そんなこたぁわかってる。おい、さっさとこの場を離れるぞ。ただし、音を立てねえように気を付けろよ」
「はい!」
「………」コクリ
突然の遭遇に対する方針を決めた四人は急いで、そして静かにその場を離れたのだった…。
急いで撤退して数十分後、月夜達は地竜のいた広場から相当離れたところまで来ていた。
「ここまで来れば大丈夫だろ、ここらで一休みするぞ」
戦士リーダーの号令で他の三人が気を緩める。
「ふう、それにしてもこの森には亜種とはいえ竜種がいるのですね。それなりに大きな町の傍なのであんなモノがいるとは思いませんでした」
「それが…この森には竜種どころか亜竜種すらいないはずなんです」
ふとこぼれた呟きにエルフ精霊使いが応える。
「どういうことですか?」
「言った通りです。この森に地竜なんているはずがないんです」
「ではあれは何なのですか? あれは間違いなく地竜だと思うのですが」
「だからおかしいんです。いるはずの無いモノがいる、この森はどうなってしまったのでしょうか」
困惑するエルフ精霊使いと話していると戦士リーダーが参加して来た。
「そのことなんだがな。あの地竜、もしかしたら〔神樹の森〕の宮魔かもしれん」
「〔神樹の森〕? 何ですかそれは」
「えっ?〔神樹の森〕を知らないんですか?」
「ええ、知りません」
「さっきから思っていたんだが、もしかして嬢ちゃんはどっか遠くから来たのか?」
「遠くというか…今日、倭の國から渡ってきたばかりです」
出身地が倭の國であることを話すと何故かとても驚かれた。
「そうだったのか、でもそういうことなら納得だ。この国じゃあまり見ない陰陽魔術を使うわフォレストウルフを知らないわ、あろうことか〔神樹の森〕すら知らないっつうからどこのもんかと思ったんだが、倭の国だったのか」
随分と感心しているようだがそんなに珍しいのだろうか。
「倭の國から来た者は珍しいのですか?」
「ああ、かなり珍しい。俺が会ったことがあるのはお嬢ちゃんで二人目だ」
「わ、私は月夜さんで五人目です!」
「んなことで張り合うな」
話が随分と逸れてしまったので戻すことにする。
「それで、〔神樹の森〕とは何なのですか?」
「ああ。〔神樹の森〕ってのはな、この森の奥にある迷宮のことだ」
何でもこの森の奥には相当な規模の迷宮があり、その迷宮の名前が〔神樹の森〕というのだそうだ。
「なるほど。それで? あの地竜はその迷宮の宮魔かもしれないというのは?」
「ああ。これは以前、先輩の冒険者に聞いたこと何だがな、〔神樹の森〕には何種類かの竜種がいるとのことだったんだ」
「それであの地竜はその迷宮の宮魔かもしれないということですか」
「まあそうかもしれないってだけの話だがな。だが、もしそうなら地竜程の宮魔が迷宮から離れなければならない何かが起こっているってことだ。このことはできるだけ早く、ギルドに報告した方が良いだろうな」
「宮魔は迷宮からあまり離れたがりませんからね…。手掛かりも見つかりませんし、一度町に
———「キャーーーーー」———
今のはっ!?」
一度町に帰ろうと提案しようとしたその時、絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
「今の声は…、まさかイリーナか!?」
「イリーナって私達がいま捜している?」
「ああ、そのイリーナの声に似ていたよに思うが」
「あ、あのう…、今の声が聞こえた方って地竜がいた方じゃありませんでしたか?」
エルフ精霊使いの発言で月夜と戦士リーダーも気が付いた。
「まずいですね。もし本人だとしたら…、イリーナさんはどれくらい戦えるんですか?」
「ゴブリン相手なら余裕、フォレストウルフ相手なら余裕で逃げれるが戦うのは難しいってくらいだったはずだ。ラウラ、それくらいだったよな?」
「はい、少なくとも地竜の相手は無理、逃げるのもかなりきついと思います」
「よし。急いで救援に向かうぞ」
戦士リーダーとエルフ精霊使いのやり取りでエルフ精霊使いの名前が判明したところで、急いでもと来た道を戻って行く。
ちなみに、戦士リーダーはアインズ、覆面無口はルークというらしい。
半分程戻ったところで月夜の結界に反応があったため、月夜達四人は隠れて待ち受けることにする。
隠れて待つこと数分後、木々の間の暗闇から猫族の女の子が飛び出して来た。その女の子がイリーナ本人であることをアインズ達三人が確認し、呼び止める。
「イリーナさん! 私です、ラウラです。落ち着いて下さい、何があったんですか」
ラウラに気付いたイリーナはまだパニックから抜け切らない様子で話し始める。
「ラ、ラウラさん! 大変です! 地竜が、地竜が奥に!」
「イリーナさん、落ち着いて下さい。地竜が奥にいて、それで如何したんですか?」
「ラウラさん、イリーナさんから話しを聞く前に「月夜さん、ちょっと待っていて下さい」…いえ、しかしそういう「黙っていて下さい!」わけには行かないと思うのですが…」
気が付いたことを話そうと思ったのだが、ラウラはイリーナの相手をしていて取りあってもらえない。
「イリーナさん、それで如何したんですか?」
「地竜が、地竜が追いかけて来てるんです!」
イリーナの言葉に月夜以外の三人が凍りつく。
次の瞬間にはイリーナを含めた五人は町の方に向かって走り出していた。
「イリーナさん! そういうことはもっと早く言って下さい!」
「うう、ごめんなさい」
「ラウラさん、私は言おうとしましたよ? 全くとりあってもらえませんでしたが」
「うっ、それは…、すみません」
「お前ら、そんなこたぁどうでもいいから話す暇があったらさっさと走れ」
道中、言葉をかわしながらも急いで逃げる五人。
そのとき、月夜の結界は地下から近づいて来る何かを察知した。
「下から何か来ます! 横に避けて下さい!」
月夜の指示に従い、横っ跳びに避けたその瞬間、地下から地竜が飛び出してきた。
月夜と同じく左側に避けたのはイリーナ一人だけで、他の三人は右側に避けたため、無事に避けることが出来たものの二手に別れさせられてしまった。
「くっ、はぐれてしまいましたね」
「ど、どうしよう」
見知った仲である三人とはぐれたことで全く知らない相手と二人っきりになってしまい、戸惑っているイリーナに出来るだけ優しく話しかける。
「イリーナさん、一先ず町へ逃げましょう。あの三人なら心配は要らないでしょうし、まだ地竜が近くにいる可能性もあるのでここに長くとどまるのはまずいです」
「わかりました。ところでお名前は何というんですか?」
「そういえばまだ名のっていませんでしたね。私は黒金月夜といいます。月夜でかまいません」
「月夜さんですね! そういえば月夜さんは私の名前を知っていましたけど、何故ですか?」
「私は今、“猫の尻尾亭”に泊まっているんですよ。そこで宿の一人娘が行方不明になったとのことで捜索隊に参加していたんです」
「お客様でしたか。この度はお騒がせして申し訳ありません」
名を名乗り、今の状況を話したとたんにイリーナは恐縮してしまった。
「いえ、別にかまいませんよ。それに捜索隊に参加したのは私だけではありませんし。それより今は無事に帰ることの方が重要です」
「そうですね。お礼は後でさせて下さい」
二人は周囲を警戒しながら町の方へと歩いて行った。
月夜「読者の皆さんこんにちは、ヒロインNo.1の月夜です。今回の後書きは、私と宿屋の娘ことヒロインNo.2のイリーナさんでお送りします」
イリーナ「こ、こんにちは」
月夜「イリーナさん、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。はい、深呼吸」
イリーナ「すー、はー、すー、はー」
月夜「大丈夫ですか?」
イリーナ「はい、もう大丈夫です。ところで何故、作者さんがいないんですか?」」
月夜「それはですね、楽だからだそうです」
イリーナ「えっ?」
月夜「というわけで、ダメ作者のことは放っておいて進めましょう」
イリーナ「了解です」
月夜「今回は大陸や国について話そうと思います。大陸に関しては五つあり、作者の世界の地球のユーラシア大陸がウリシア大陸、アフリカ大陸がアフィーク大陸、北及び南アメリカ大陸が魔境、そして日本が島国となっています。オーストラリア大陸と南極大陸は未だ発見されていません。次に国に関してですが、まずここまでで出てきたのは[チャイヌ皇国]と[倭の國]ですね。チャイヌ皇国についてはイリーナさんに話してもらいましょう」
イリーナ「チャイヌ皇国は様々な種族が暮らす国で、人族の王様が治めている国です。種族に関する差別はほとんど無いですね。場所はウリシア大陸の南東部、中国のあたりになります。ちなみに私が住んでいるのはチャイヌ皇国の港町、シエンハイトです」
月夜「次に倭の國ですね。倭の國は魔族が暮らす国で統治しているのも魔族です。魔獣や宮魔が多くかなり閉鎖的だったため、一昔前までは入ったら帰れない謎に満ちた島として畏れられていたそうですが、今では皇国を始め幾つかの国と同盟を結び、私のような留学生のやり取りもしています」
イリーナ「他にはウリシア大陸にトルツェ帝国やルジア法国がありますね」
月夜「そろそろ終わりですのでそれは今度にしましょう。それでは読者の皆さん、これからも当作品をよろしくお願いします」
イリーナ「誤字脱字に関しては感想またはメッセージにてお知らせ下さい。その他の感想も歓迎です」