プロローグ
プロローグではR15、百合、残酷描写は出てきません。
???side
「月が綺麗だ」
そう言って==は月を眺めている。
私はそんな==を見て、胸が締め付けられるような思いに囚われた。
「どうした?元気が無いようだが」
顔を上げると==が心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいた。
「…私、あなたから沢山のものを貰ってきたのに……全然返せて無い…」
私は==に寄り添い月を見上げる。
「何だ、そんなことで悩んでいたのか?」
「そんなことって………私は真剣に悩んでるのにっ!!」
自分の悩みをくだらないことだとでも言われたように思い、つい声を荒げてしまう。
「あなたは、私をあの牢獄から連れ出してくれた。何も知らない私に生きてゆくための知識を与えてくれた。
他にも、この服だって、あなたと暮らすこの場所だって、全部あなたが与えてくれた……」
それだけでは無い、私が今こうして生きていられるのも==のおかげだ。
「なのに、私はあなたに何もしてあげられない」
「…お前は私の傍に居てくれるだろう?」
違う、それは自分のためだ。
「私はそれで充分だよ。私はお前の望む全てを与える、代わりにお前は私の傍に居続ける。元々そういう話だっただろう?」
「それは……そうだけど…」
未だ納得のいかない私に==はいった。
「それでも納得がいかないなら、私ではなく他の者に返せば良い。人の世とは本来、そういうモノだ」
「そうなの?」
「ああ、そうした親切は巡り巡って自分や知り合いに返って来る。
恩返しをしたいと言うのならこの先に会う者達に返してやると良い」
「…わかった。そうする」
==の言葉に頷き横になると、途端に睡魔が襲って来る。
そんな私を見て、==は微笑みを浮かべ静かに歌い出す。
「♪〜〜〜」
そうして私は==の歌を子守唄に眠りについた。
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==side
「(どうやら寝てしまったようだな)」
私に寄り掛かったまま寝てしまった少女を布団に戻してやると、横に座りその寝顔を眺めながら小声で呟く。
「あとどれくらいの時間があるかはわからないが、おそらく一年も残されていないのだろうな。願わくば一日でも長く一緒に居てやりたいのだが………。なぁ、お前はどうだ? 私と共にいたいと願ってくれるか?」
私はすがるような気持ちで彼女の髪を撫でる。
「…ふぅ、いくら考えたところで意味の無いことか。(夜も更けたことだし、私も寝るとしよう)」
ため息をつくと立ち上がり、彼女にお休みを言うと部屋を出る。
「お休み。……ルナ」
初めまして、夜刀朔夜と申します。
この度、当作品「月無き夜の幻想譚」をお読み頂きありがとうございました。
至らぬところだらけの作品だと思いますが、これからも宜しくお願いします。
なお、誤字脱字を発見された方はお手数をおかけしますが、感想またはメッセージにてお知らせ頂ければ幸いです。