第10話 新たなる僕よ、いまこそグレよ!
「とりあえず、自己紹介から始めましょうか。」
俺の役目はまさにぼーっとすることにある。
だからせめてこれくらいは言え、とラズリに言われたからやっているまでのことだ。
河川敷に戻ったおれたちは、新人のフレクシス会員を寒い夜空に似合わず、暖かく迎えた。
「私は経理事務員として今まで人生を送ってきました山本です。」
一見真面目そうに見えるが、やっていけるのだろうかと俺は思わず老人に目くばせをしたのだが、彼はそんなことは簡単だとばかりに立ち上がった。
「山本よ。 いましがた主神のささやきが届いた。 これからはロフィロイと名乗るのじゃ。 そしておぬしの役目を言い渡そう。」
ロフィロイはかたずを飲んで見守った。
「経理事務員としての経験を活かすには、やはり数字を武器にし、世の敵を絶望させる宣告を数字によってしなくてはならん。」
「いったいどうやって…!」
なぜか彼の顔が真剣だった。
いや、そこはもっと別な反応でいこうよ、ふつうの人ならさ。
「手始めに、おぬしが悔しかった経験をもとに憂さ晴らしをするのじゃ!」
「私は、満員電車がいやだ。 なぜなら常に天皇陛下万歳のポーズをとっていない限り、痴漢に間違われる可能性があるし、乗り遅れる可能性があるからです!」
いつしか彼は涙ぐんでいた。
相当つらい経験をしたと思っていないのはおれだけだろうか。
「行きましょう! ロフィロイ同志よ! 今こそわれらの力を示すときが来たのです! 裏ボスに余裕で勝つ力が俺にはあると誇示したいがために、ぶよぶよになって腐っているキウイをタンクローリーの車内に持ち込み、それを握りつぶした際、いかにもラスボスのどろっとした血液に模した緑の異臭汁が窓にぶちまかれる様を歓呼によって出迎えるトラック野郎のように!」
「力の示し方が、そもそもおかしいでしょうがーーーーー!」
ゼノムスから発生している煙が引かないうちに、主神ワールドの全員が決意を新たにした瞬間だった。
ついに何の気おくれもなく、物語が十話に到達しました。 しかしながらまだ続きます。 いったいいつになったらカーレンベルクは本業?のファンタジーを再び書き始めるのか、という方がいらっしゃっても不思議ではありません。誰かが待っているような予感がしますが…。いや、いなくても私がたぶん新たなる読者を来るのを逆に身構えていると思います。(怖い内容でごめんなさい…。)