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Humming Heaven  作者: しき
3/6

Humming Heaven~来飛と斎志~

「来飛くん」


「あ!こんにちわ、斎志さん」



ふんわり、と笑うのはこの会社の跡取りの来飛くん(12)。着ているのは女物。(しかもにあう。)

ちなみに、女装趣味を確立させたのは汐弥しおみだったりする。


「お帰りなさい」

「ただ今、斎志さん。父は?」


父親は、俺の上司のあんの馬鹿雪祢。


「社長なら社長室に」



「そっかぁ・・・・。あ、はい斎志さん。」


渡されたのはクッキー10枚入り。


「作ったの!よかったらどうぞ」


「・・・・・ありがとう」

「どういたしましてっ感想宜しくね♪」


パタパタと走ってエレベーター室へ行く12歳。


「こんにちわ、ご苦労様です」


「あ、お疲れ様ですぼっちゃん。」


「ぼっちゃん、なんてもう。僕は来飛、ですよ?」


なんて可愛らしく会話してる。誰だこの乙メンは。

「あれ、斎志さん来ないんですか?」


そして小悪魔だ。ついでに男かこいつは。


「はいはい、今行くから」


俺はこいつの保護者か。



社長室。

コンコン・・・・ガツッ


「入んぞ~」

「だから蹴破らないでってば!!」



悲鳴が聞こえたが知らん。


「もう、葛、鍵変えといて」

「いい加減オートロックに変えたらいかがですか。ついでに、俺は人事ですから。」

「パパ!」


「・・・・来飛?」



来飛くんがきたことに気づいていなかったらしい


「葛、この子が息子の来飛。かわ「桜庭来飛です!」



元気よく挨拶して作ったクッキーを差し出す。


斑屋葛まだらやかずら・・・ありがと。」


その場で封を開けパクリ。


「・・・旨い。」


「やったぁ!ありがとうございます」


嬉しそうに笑う来飛くん。うん、女の子(笑)


「かわいいなぁ~来飛」


「うっさい親バカ。さて、この後の予定ですが」


「葛は一緒だよね?」

「人事担当に何をさせる気ですか」



むぅ、と口を尖らす雪祢。・・・・一応、社長(4代目)



「だっていっちゃん、飛行機と海外嫌いじゃん。出張だよ?僕」



・・・・そう、この俺、潮瑞斎志は、海外と飛行機が何よりも嫌いなのだ。空を飛ぶのが人類の夢だと?気球やバラグライダーがあるじゃないか。鉄が空を飛ぶなんぞ、有り得ん理論主義だ。


「いっちゃん??」


「ん?あぁ、失礼しました。」


いかん、飛んでた。


「今回はモデルとの打ち合わせも入ってるし、撮影も見学してくから。いっちゃん行く?」


「・・・・行かせて頂きます。今回はどちらで」


斑屋はすっかり来飛くんに気に入られてる。

・・・来飛くん秘書に、決まるかもな。


「斑屋は連れていきます。あとはいつも通り、汐弥と東、由高ですね?」


「うんそう。頼んだよ。」


「畏まりました。」


「それから、来飛送っていって。碧子あおこさんが不思議がるといけないし、来那らいなが泣くとこまる」


碧子さんは雪祢の奥様で、大学の同級生だ。来那ちゃんは、来飛くんの妹さん。まだ5歳とかそこらだった気がする。


「畏まりました。」


「パパ、今日もお残り?」


「そうだよ、ごめんね。必ず埋め合わせはするから。」


「うん、わかった。明日のお弁当は?」


「いっちゃんが取りに行くから。」


「俺?!」



またかよ・・・・


「わかりました。では来飛くん、行きましょうか。あ、斑屋はのこって。まだ話中だったろ?」


「えぇ、まぁ。」


「じゃ後宜しく。」


来飛くんを連れて社長室を出る。


「ねぇ斎志さん?」


「ん?どうした?」



背が伸びたとはいえ、俺よりは小さい彼が俺を見上げる。


「今日はパパのお車?」

「今日は俺のお車」


「左ハンドルの?」

「そう。だから右側に座ってね。」

「うん!!」


地下駐車場まできた俺達。


「どうだ?普通の中学生やってっか?」


「うん!でも、学ランきついし、授業は簡単だし、つまんない。」


流石は次期社長・・・


「詰め襟だったな。」

「学ランきつい~」


タバコタバコ・・・あ、雪祢に没収されたまんまだ。

・・・・あ、クッキーあった。


「お煙草辞めたの?」


「あ?・・・・・あぁ、没収された。」


「パパに?」

「おう。」


それは大変だね、と苦笑い。


「お煙草買いに行く?」


「あぁ、悪いな。」


車に乗るとすぐさまエンジン掛けて発進させる。


「ご飯食べてく?ママが作ってると思うよ?」


「いや、遠慮しとく。今日は俺も残業だから。」

「なんだぁ、つまんない。じゃぁ、デートしようよ♪」


全くこのこは・・・・


「コンビニにつまみ買いに行くだけだぞ」


「わぁいありがとう!」


こうして俺は、コンビニでつまみと飲み物を買って来飛くんを送り届けた。


「斎志さんまたね」


「またな。」



車を運転しながら、いろいろ考えつつ、会社に戻る。


「社長、仕事しましょうか。」









「社長」


前を歩く人に声を掛ける。


「斎志さん!!」



24歳になった来飛くん。いつの間にやらこんなに大きくなって。


「社長って呼ばないでってば!!斎志さんの前では可愛くいたいのに!!」


・・・今では立派なオネェだ。


「やっぱりかわいいなぁ、来飛」


「煩いですよ会長。44にもなって。それより、斑屋は?」


雪祢は会長になり、俺は相変わらず秘書だ。

斑屋はなんと来飛くんの秘書になった。


「斑屋さんはお買い物です♪」


「そうか。」


「あ、はい斎志さん!クッキーです」



手渡されたのは、あの日渡されたクッキーと同じ形をしたもの。


「・・・・ん、旨い。」


くしゃ、と来飛くんの髪を撫でる。


「やったぁ♪あ、会議だ。デートしようね斎志さん!!」


今日ぐらいなら、いっか。


「いいよ。今日でいいだろ?」


「いいの?!じゃぁ、いつもの居酒屋ね!」


お前もか。



「いいよ、行こうか。」



たまには、悪くない。



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