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「オペレーショントモダチ」(その20)

海兵隊員(女性黒人・アン・フジムラ中尉)

海兵隊員(白人男性・エリック・モーザー軍曹)

高校体育教師(30代後半・東京出身・橋本公生)

奴・吉村君子(28・気仙沼出身・スポーツジムインストラクターのバイト)

高校英語科三年生担当教務主任教師(女性三十代・沖縄出身・浦添泰子)

海兵隊将校(白人・フィル・シューバッハ中佐)

JSG・Japanese security guard(仲宗根(日本人警備隊長・男性・四十代後半・沖縄出身・)

弓削田・地元テレビ局ディレクター

橘・同カメラクルー

河村校長。

岩本警部



(プロローグ)

(なれそめ)

(東北行)

(アフガニスタン2010)

(沖縄)

(岩国)

(岩国警察署)

(浦添泰子)

(アン・フジムラ)

(震災三日目)

(奴・吉村君子)

(ジョン・シューバッハ)

(イングリッシュ)

(岩国基地)

(県立岩国高校)

(基地内の高校)

(首相)

(岩国2)

(地元放送局の動き)

(新展開)

(霞が関・中央の思惑)

(岩国基地にて2・愛宕ヒルズ)

(政治)

(ステディー)

(なし崩し)

(政治2)

(気づき)

(霞が関2)

(気づき2・続き)

(岩国3)

(気づき3・続き)

(地元放送局3)

(思惑)

(枷)

(展開)

(親しく。「テッパンヤキ」)

(イコール)

(三沢へ)

(両親)

(プラクティス)

(プロム)

(反響)

(Differences)…その20

(プラグマティスト達)…その20


(エフェクト)

(良い結果)

(逡巡)

(フィクサー)

(政権)

(エピローグ)

(ディフォレンス)

梅雨も峠を越しつつあり、ダンスの従業が最終晩を迎え、社会科とダンスの授業は、混在し始めていた。

特番でダンス授業に至るまでのドキュメンタリーが終わった頃から、アンもエリックも、世間が一端、少し落ち着きを取り戻しつつある、と感じていた。

流石に、此処の処は、アンのレジデンスばかりで、色々、時間も無駄になる。

し、エリックは、いつものPXで買える瓶では無く、キンキンに冷えた生ビールが飲みたかったので、久々、彼等のベースで有る、市内のお好み焼き屋に行く事にした。

この様な事が無ければ、何時もはローカルの野球中継が流れている店内、しかし、此処でも、いや此処だからこそ、丁度、この時間帯の何時もの夕方のニュース番組に、チャンネルは、変えられていた。

アンは、浦添(先生)そしてこの店の従業員とも真の意味で“友達”になれている。と確信していた。Kimioとは、ステディーな関係を保っていた。周囲もそう感じていた。しかし、この番組を見ながら或る年配の客が、こちらをちらっと見ながら、呟く言葉が聞こえてしまった。その言葉は、橋本にも、丁度店に着き、入って来た浦添にも聞こえていた。

「アメリカさんとは上手くやるんだよなぁ、日本は」

彼の身なりも、背格好も、周囲のお客と全く変わらず、言葉も全くの日本人であった。彼からは何の悪気も、他意も、感じなかった。しかし、アンには、引っ掛かる言葉であった。

岩国は、圧倒的に広島市内の方が、山口の県庁所在地や下関よりも近い。その事は、店員も含め無意識のうちに有った。だからかも?しれない。

そして韓国の釜山は、フェリーなら5千円も掛からず、下関から船で行ける外国なのである。エリックもここに居る日本人の誰もが、その様な『環境』は、気にした事は無かった。

しかしアンは、敏感に感じてしまった。

先週迄の事もあったから。この“蟠り(わだかまり)”を抱きつつ、いつもの様に先生やKimioと、たわいも無い、しかし次回の社会科についての方向性を語らい始めた。

「アメリカ側の先生も、こちらの先生も、ディベートと言う方向で答えは用意せず、生徒たち同士の話し合いで、この基地問題とアメリカ軍の有り様を話させる事はいい方向に進んでいると思うんですが、先生は、通訳としてhelpに入っていてどう、お感じですか?」

この頃になると、エリックも或る程度、日本語が理解できるようになって来ているが、アンは、ポイントポイントを彼の耳元で約していた。

そうエリックのポジションは、いつの間にかアンと浦添と言う両手に花の状態が、常態化していた。それは彼にとって、まんざらでもないポジショニングだった。

「そうね。基地の重要性と言うより、こうやって違う環境や文化的背景(background)を持つ同世代が、フランクに話せる環境が有ると言う事に、うちの生徒は感謝しているように思えるわ」

「アンはどう感じている?」

浦添は、同様に、通訳補助で時々授業に参加している、アンの感想を求めた。

「そうですね、自分の意見が言えない。と言うのが、時々苦痛になる時もあるのですが、概ね、こちらの生徒は、やはり、少しセルフィッシュな感じがします。日本の生徒さんより視野が狭いと言うか」

「あら意外ね。そうだったの?」

浦添の反応だったが、橋本もそう感じた。そして浦添は続けた

「どんな点で?どの様な処が?」

「ハイ先生や日本側の教師の授業、ディベートでは、教師側の導きもあると思うのですが、多分、同じ事が、アメリカ側の教師の時にも合って、アメリカ側の教師は、やはりアメリカ側の論理に立って、話を導こうとするので、そう感じるのかもしれません」

「日本の生徒さんや先生は、基地が、基本やはり“迷惑な存在”と言う前提に立っているのからかもしれません」

「でもダンスの従業じゃあその様な事は、全く感じなかったよなぁ」

エリックが橋本に同意を求めるようにまくし立てた。

「うん、只、アメリカの子と、ウチの生徒は、未だ、組み合わさったダンスは、出来ていないけどね。男女ペアーは、アメリカさんの、態度を見習って、蟠り(わだかまり)が、無くなったみたいだけど・・・」

橋本は、自分の努力や指導。そしてアメリカ側教師とのコミュニケーションが(アンやエリックとの関係性と比較して)未だ足りないと、少し感じていた。

「そうなん?ダンスじゃ?近頃じゃ警察の道場に(護身術を学びに)来る、アメリカ兵と日本の子供達は“普通に”じゃれ合っているけどなぁ」

岩本と機動隊の非番署員が、脇から口を挟んできた。

彼らにも、今日のミーティング(晩飯)の事は、エリックがメールを入れて有ったので参加していた。

この非番の機動隊員は、橋本が忙しい時、エリックの良い練習パートナーになっていた。

「じゃれ合っている?ってエリックだけだろ」

橋本が笑いながら片言の英語で彼に言った。

「No、No, そんなこと無いよ!」

エリックも覚えたての日本語で笑って答えた。

非番の隊員は、横で含み笑いをしながら『本当に、こいつ等、気が有っているんだなぁ。』と感じていた。

「お前ら達は、そうやっていて良いかも知れないが、うちらの子供は、そうやってチヤホヤされた事は無いぞ」

いきなり先ほど~カウンタで飲んでいた赤ら顔の中年いや初老の男が、喚きたてた。

「すみません、オヤジ、他のお客さんの迷惑だろう!」

カウンタ越しの、若い従業員が、その男性をなだめようとしている。

橋本は、この従業員が近所の国立大学に通う学生だと言う事は知っていた。

しかも留学生だと思っていた。何故なら名前のプレートが、韓国系の苗字だったからだ。場所柄、山口から広島に掛けて韓国からの留学生は珍しい存在ではなかった。

「Kimio、なに?」

アンは、橋本が、この男性と従業員のやり取りを凝視しているのを見て尋ねた。

「うん、多分あの方は、韓国の方じゃないかと思うんだ?彼は、その御子息」

浦添は、エリックに意味を伝えていた。

岩本と隊員は、仕方が無いなぁと言う体で見つめていた。

「うちのオヤジ酒癖悪くて済みません。今日、東京からキャンパスや自分のバイト先を見に来て、つい喜んじゃって、飲み過ぎたみたいで…」

「え?君、韓国からじゃないの?」

つい若い隊員が聞いてしまった。そう彼は、在日だった。

彼は、毎度の事と云う風に、含み笑いを返した。

この間のやり取りが、アンには、理解が出来なかった。

「どういう事?」

アンは橋本を向いて質問した。橋本は、先週までのアンの行動を知っていたせいも有って、直ぐに、安易な、答えを出す事を躊躇った。しかし、すかさず、岩本はアンに話した。

「日本にも、アメリカさん程、露骨ではないけれど、人種差別は、有るんだよ。アンちゃん。彼等は“在日”って言って、北朝鮮籍とか北のパスポートが有るか、無いか?は、解らないけれど、少なくとも日本国内に永住資格が有って、登録証無しでも、普通の日本人と同じ様に暮らせる外国人達なんだ。勿論、住民としての納税義務も同じでね。だけど、例えば、彼らが作った民族学校は、普通の公立や私立の中学高校とは、補助金とかで区別(差別)されているし、国政だけじゃなく自治体レベルでも選挙権が無いとか、職業でも区別、いや差別かな?されているんだ。それ以外にも、日本にも、同じ人種民族なのに、階級みたいなのが残っていて、結婚とか就職の時に“部落”っていうんだけど、色々、区別、まぁ差別される事が有る。特に、ここ(山口)は韓国に近いし、部落ってのも残っているから、時々頭をもたげるんじゃ」

岩本は、さも嫌だと言う感じで説明した。

「ナニ?分からない?」

アンの率直な反応だった。

「忖度とか、同調圧力とか言うんだけれど、日本には、少しでも回りと異なったアイデンティティーとか、発言、行動、宗教的な習慣を示す。って言うか、個性を維持しようとすると、そう言った人達を排斥する。っていう文化が厳然としてあるの」

浦添が、岩本に続いて説明した。

「因みに野球の選手や、プロスポーツ選手、芸能人なんかには結構そう言う人が多い。因みに警察官もね!身上調査って言うんだけど、そういった習慣が残っている」

岩本の横にいた機動隊員が続いた。

「でもね、そう言った差別を反骨心にして成りあがって行く!って云う文化も、あるんだ。そう言った一部の成功者は、成功者として認められるけど。根っこの差別感情は有るな。」

彼は続けた。

「そう、何か映画のロッキーみたいね」

アンは食い付いた。

「ふふふ、例えば新興宗教、って解る?とか、共産主義政党とかは、テロって観点から、政府の監視対象になっている。それをわざと、周囲に漏らして差別させる。なんて事も有った」

機動隊員の彼は、笑いながら続けた。

警察っぽいな。と、とい面に座っている浦添は感じた。

「え?それは、警察では無くて、インテリジェンスの問題でしょ?」

アンは執拗だった。

「はい、ですけど、そこの処をはっきりさせず、うやむやに“なぁなぁ”で済まして、友達ってのが、日本の文化だと思いますよ。そう。やはり同じ種族だからかもね?民族とかで無くてね!」

お好み焼屋のバイト君が横から口をはさみながら、みんなのビールを配膳し始めた。彼は、個人的に差別を感じた事は『無い』。とも言い切って、五人分の大ジョッキと浦添のウーロン茶にプラスして、全員分の『付きだし』をテーブルに揃えた。

少し赤ら顔の彼の父は、その手際の良さを満足そうに遠くから眺めていたが、トドメを-俯きながら-皆に刺した。

「じゃが、日本では、アメリカさんと違って一度失敗すると、二度目が無いんじゃ。そこがロッキーとは違う。特にワシらの様な立場では、失敗は徹底的に、日本社会から排除される。だから、助けあう為に、“固まる”。そうすると、それが軋轢の基になる。心配なんじゃよ、浩文」

それは多分バイトの彼に向けた言葉だったのだろう。

「ぎこち無さが未だ取れないんだよなぁ」

会話を遮るようにして、テレビ画面に映し出された両校の高校生の踊りを注視し続けていた橋本が呟いた。そして付け加えた

「未だ」

「AWKWARD?NOT COMFORT?(ぎこちない?快適でない?)」

アンが続いた。

「そうだよねぇ、そこは私も感じている。自然には、まだ遠いって」

横目でチラチラ画面を除いていたエリックが続いた。

横で、浦添が、岩本達に訳していた。

「Kimioは、そう感じているの?私は上手じゃない?って見てたけれど」

アンは橋本の手を机の下で握りながら、耳元で囁いた。それは、周囲は気が付かなかったが。橋本は嬉しかった。

「有難うアン」

「おいおい、そこの二人まだ時間は、早いぞ!」

しかし、岩本は、見逃さなかった。

そして突っ込みは、早かった。

が、この言葉が重苦しくなりかけていた場の空気を和やかな物に、一変させた。

「言葉の壁も有ると思うんですけど、アメリカ系の子が、日本の子にアプローチしても、日本側が乗らない」

「勿論、日本の生徒達が、アメリカの生徒さんへ、アプローチを自発的に仕掛ける事は、無い…ダンスの授業では、お互いが、互いを観察し合っているって、感じなんです」

「今日の特集のビデオで、弓削田さんは、そこを強調されていたなぁって感じました。」

橋本はボツボツと己を責めるように話した。

「何か良い切っ掛けが無いかなぁ…」

其の後に付け加えた。

浦添が、その言葉を聞いて鞄から二冊の冊子を取りだした。

同じものだが、片や英語で、方や日本語で書かれている年表の様なモノであった。

「これ使えないかしら?」

「何ですかこれは?」

英語と日本語で同時にアンとエリックが尋ねた。

「これは沖縄で発行されている米軍による暴行事件の全ての記録なの」

浦添は、きっぱりと、英語で答えた。

「しかも一九四五年から現在に至るまで、新聞にも報道されていない全ての記録よ。岩本さんなら、沖縄県警に聞いて“裏”が取れると思うわ」

畳みかけるように語りかけた。

「そう沖縄人の、怒りのエビデンスと言ってもいいわね」

ここも英語で浦添は話した。

エリックとアンは、ドキッとした顔をしつつ、黙るしかなかった。

「違うのよ。二人を責めている訳ではないの」

浦添は優しく英語で話した。

「知るべき事、若い頭の内に知っておいて欲しい事なのよ、日米の高校生が、これをきっかけに何かできないかな?って、何時も持ち歩いていたの」

ここは日本語で話した。

エリックは、手に取ってマジマジとその冊子を読んでいた。

そこには、暴行の手口や、その暴行の結果、日本の行政側や警察が、その後取った対応、それに対する米軍側の対応までもが克明に、しかし淡々と記されていた。

最終頁には“第二十六版”と記されていた、と言う事は、事件が有る都度、記録は付加、更新されていた事になる。

「私が護身術を、そもそも沖縄で、何故?空手が発生したか?って云う理由は、昔は、薩摩、今は、海兵隊の暴力から徒手空拳で身を守る(すべ)が、空手や拳法だったからなの。それを何か、この体育や社会科で使えないかな?って、思っていたの」

ここは英語。この程度の英語は、ニュアンスで、岩本やエリックの武術のパートナーを時々務める警官、そして橋本にも理解が出来た。

「ダンスが悪い訳ではないのよ、ただ橋本先生と軍曹が仲良くなるきっかけをアンのお宅で見ていて、軍曹が、私や、橋本先生に個人的興味を持ったきっかけが、拳法や剣道だったから、何か使えないかな?って、思っていたのよ」

浦添は、訥々と日本語で話した。

岩本は嬉しかった、河村校長と浦添の頑な(かたくな)な気持ちを解すにはどうすれば善いか?と言うのが、彼女をそもそも岩本の家に下宿させる事の下地であっただけに、自身の娘の成長を愛でる父親の様な境地に、なっていた。

アンは一語一句聞き洩らさぬように、エリックに浦添の真意を伝えていた。この二人の眼差しは以前にも増して浦添に敬意を表していた。

「Yes」

エリックは、唐突に話し始めた、

「授業の中で護身術をやろう!しかも、アメリカの女子を襲うのは日本の男子、日本の女子は、逆でね!勿論、私と先生、警部と巡査部長にも参加してもらうよ!」

「これは社会科ね!体育では無いよ!だからその前に、この表は皆に読んで貰わないとね!」

突拍子も無い提案だったが、岩本と彼は満更でもない様子だった。

ただ橋本と浦添は、顔を見合わせ、それは、大事だ、自分たちだけの判断ではできない事が解っていた。橋本が携帯電話を取り出した。

「先生どちらに?」

浦添は尋ねた、

「弓削田さんに相談してみようかと」

「違うでしょう!その場合はまず校長先生!」

浦添は、たしなめる様に諭した。しかしアンも携帯で大佐に電話をしていた。

一杯目のビールは、まだ誰も口を付けておらず、すっかり泡は消えて、ジョッキには、大粒の汗が滴り落ちていて机は濡れていた。



(プラグマティスト達)

彼の年下の上司と異なり、彼は、叩き上げの非世襲議員で有った。

悪く言えばビジョンは無く。良く言えば現状を肯定し、民意をすくい上げる事を身上としていた。

ただその“民意”に“偏り”は、有った。喫緊の課題は、経済で有り、『好調な経済』と言われる一部の支持者を潤す為だけの政策の維持が、彼のテーマで有った。

彼の上司は、御友達の顔を立てつつ、“ペーパータイガー”でしかない自国軍を友人が頼れる程度にする事が理想で有った。

しかし彼は、それは壮大な無駄遣いで有り、強大な隣国が二~三個のボタンを躊躇なく押せば、張り子の虎は消し飛ぶ現実を知っていた。

沖縄に基地を置く事は、彼の友人の軍隊(若者)をその最前線に立たせている事と同じ意味である。と言う事を彼の友人達に解らせば、懸案は、存外簡単に解決できると考えていた。

河村は、そんなプラグマティックな、彼の心根を熟知していた。

ここのチョイスは、彼では無く、彼であった。


橋本から今晩の顛末を聞いた弓削田は、早速、最終で岩国へ向かった。

思ってもみない展開だが、それこそ美味しい展開で有った。

彼も、こう言った時に、役に立つ『上司』の“株”を上げる為の“お上の御覚えの良い”情報を上司にリークした。


シューバッハも、アンからの上申を聞き、一肌脱ぐ気持ちを固めていた。ペリー校の校長へ携帯を繋いでいた。環境は、当事者の知らぬ領域で整い始めていた。


浦添達からの指示で、日本側の高校生には、各自普段着の着替え、しかも破けても構わないものを用意させていた。場所は警察署が、提供されていた。

これは、二校の生徒が同時に行く為の適当な2台のバスが停められるスペースが有り、且つ、その生徒達が同時に講義を受けられるスペースと言う説明で、すんなりと異論なく両校の合意が得られた。

教室には、エリックと浦添が“対峙”した、あの講義室があてがわれた。

関係する両高校の関係者が見学しに来易い様な系統のバス停も、署の玄関前にはあった。

見学し易いスペースも、そこには有った。しかも、実技=護身術の授業をする道場は、父母以外に剣道や柔道教室に通う小中高生のギャラリーが、見学できるスペースまでもが十分にあった。

日本側の女子は、喪服と馬鹿にさてれる制服のスカートの下に体操着を、アメリカ側はジーンズ姿が多かった。

生徒たちが、萎縮や意識をしない為に、前日、弓削田率いる放送局の技術スタッフは、講義室と道場に、各々八台の、リモートカメラを設置し、中継車も地下の駐車場に止めて生徒や見学の父母たちの目の前からは完全に隠れた“黒子”に徹していた。

又、弓削田と共にモニター越しで取材をする米軍側の報道部門員には、米軍と日本側が差し回しの通訳官が付いた。

講義室で最初の二コマ(90分間)は、浦添の資料を基に、日米の社会科教師が事実を淡々と説明して行き、生徒達と既に顔見知りに成っているアンは、その際、両校生徒から出る、質問に対する通訳を担当し、主にその回答は浦添と日米の社会科教師が事前にすり合わせた模範解答に沿って答えた。

二コマ目で各生徒たちに、基本は弱者(被害者)の側に立場に立ってディベートをさせる形がとられた。この提案がアメリカ側の教師からすんなり受け入れられ、且つ、教材作成が為された事に、意外な感じを浦添は持ったが、それが“共に”この授業の時間を過ごした結果だ。と言う河村校長の説明が、すんなりと浦添を含む日本側の教師達の腑に落ちていった。

警察署の食堂は、既に気心が知れている両行の高校生で、大賑わいで有った。

食堂のおばちゃん達は、今日は、普段以上に気合を入れて昼食を用意していた。

結果、ランチは大好評で有った。

昼食を挿んで後、通しで六十分は横の道場に移動して、浦添とエリック、そして再びアンが通訳として入り、試技としては、岩国署の婦人警官と男性警官によって、昼前の講義で、習った、シチュエーション毎に、対応方法が披露された。

各生徒には、エリックや浦添と共に道場で練習をする警官が生徒二組(四人に一人の割合)で付き、エリックとアンのペアーに浦添と橋本が生徒の間を回る形で、護身術の授業は、滞り無く進んで行った。

この際、日米で、例外無く女子が技を掛ける側、その痛みを知る側に男子生徒が担った。

勿論、岩本そして各教科担当のアメリカ側の教諭も、それを道場の隅で、しっかり見(指導補助をし)ていた。

星条旗新聞の記者は、この道場の授業に関し、写真撮影が、できず不満を訴えたが、弓削田が隠しカメラの映像の何枚かを提供する事で了解を得た。

面白い対比では有ったが、星条旗新聞の記者と同じ様に、指定された見学場所で、日米の父母達は、熱心に子供達の姿を手持ちのビデオカメラ、小型デジカメや携帯電話で撮影していたが、見学場所が限定されていたので、どの様な絵が取れているのかは解らなかった。

段取りが終了し、残り三十分は、生徒や指導員たちが汗を流す為のシャワータイムを取っておいた。

同じ場所で、同じ様に汗を共に流していた、浦添、アン、エリック、橋本や岩本を始めとする警察の男性女性署員の観察によれば、両校の生徒は、その頃には、すっかり打ち解けていて、今まで有った、頑なさが消えていた。

そこで、浦添の提案も有り、アメリカ側の、引率教員と岩本(警察)の了解を得て、帰りはバスではなく、現地解散とした。

両校の生徒は、両校の生徒が混じった形で、岩国の街に繰り出して行った事は、想像に難くは無かった。

弓削田達の想定を超えた浦添の提案は、彼等(報道)をあたふたさせたが、岩本と、アメリカの教師は、初めからその事を浦添とアンからレクされており、署員や基地のJSGやMPの隊員、海自の警務隊員達にも、完璧に周知徹底されていて、非番の両軍関係者や、制服の交番警官が、自由に放たれた生徒達を、目立たぬ様にそっとフォローしていた。

残念なことだが、弓削田の放送が引き金となって、一部の市内他校の生徒と父母や、右翼団体を刺激している事実を関係者は皆、把握していた。

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