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「オペレーショントモダチ」(その2)

登場人物

海兵隊員(女性黒人・アン・フジムラ中尉)

海兵隊員(白人男性・エリック・モーザー軍曹)

高校体育教師(30代後半・東京出身・橋本公生)

奴・吉村君子(28・気仙沼出身・スポーツジムインストラクターのバイト)

高校英語科三年生担当教務主任教師(女性三十代・沖縄出身・浦添泰子)

海兵隊将校(白人・フィル・シューバッハ中佐)

JSG・Japanese security guard(仲宗根(日本人警備隊長・男性・四十代後半・沖縄出身・)

弓削田・地元テレビ局ディレクター

橘・同カメラクルー

河村校長。

岩本警部


(プロローグ)

(なれそめ)

(東北行)

(アフガニスタン2010)

(沖縄)…その2

(岩国)…その2

(岩国警察署)

(浦添泰子)

(アン・フジムラ)

(震災三日目)

(奴・吉村君子)

(ジョン・シューバッハ)

(イングリッシュ)

(岩国基地)

(県立岩国高校)

(基地内の高校)

(首相)

(岩国2)

(地元放送局の動き)

(新展開)

(霞が関・中央の思惑)

(岩国基地にて2・愛宕ヒルズ)

(政治)

(ステディー)

(なし崩し)

(政治2)

(気づき)

(霞が関2)

(気づき2・続き)

(岩国3)

(気づき3・続き)

(地元放送局3)

(思惑)

(枷)

(展開)

(親しく。「テッパンヤキ」)

(イコール)

(三沢へ)

(両親)

(プラクティス)

(プロム)

(反響)

(Differences)

(プラグマティスト達)

(エフェクト)

(良い結果)

(逡巡)

(フィクサー)

(政権)

(エピローグ)


(沖縄)

沖縄の三月は、一年で最も過ごしやすい。GH47チヌークの機長を勤めるアンには、面倒なシフトが待っていた。来年か二〇一年早々には、この神経をすり減らすココ(普天間)から岩国への転属でJMSDF(海上自衛隊)との統合室勤務、その後MVの機長訓練が彼女のキャリアアップの規定コースだった。「フジムラ中尉入ります。」「うん気楽にアン」普天間17海兵航空支援中隊長のシューバッハ中佐は彼女に手前の椅子に着席するように促した。

「済まんがアン、ショートでPMO(沖縄憲兵隊)のJSG(日本人憲兵隊)の岩国派遣隊チーフを引き受けてくれないか?」

「期間は?」

「君のシーナイトは三ヶ月、オーバーホールとバージョンアップのためにシフトから外れ本国に戻っている、その期間でかまわない。」

「了解しました」

「君の機体と共に後任が着任するから、あくまで暫定。私の家もついでに見てきてくれ」

直属の上官である、シューバッハもアンの転属とほぼ同じ時期に、部隊司令官から米軍岩国基地司令官として栄転、その後に基地付属の州立大学の本校の教授になるというハッピーリタイヤメントが待っていることは承知していた。

「しっかり日本人を鍛えてくれよ!」

私は母方がアフリカ系アメリカ人だから、見た目は日系人には見られないが、名前を言うと必ず、「日系の方ですか?」そして、日本語がある程度(本人はそう思っているが、実際は殆どネイティブレベルに)理解できる。

当たり前である、両親ともアメリカ人とは言っても父は日系2世のアメリカ人エアーフォースパイロット、母は、アフリカ系とは言っても、国語(英語)教師の資格を持ち、十歳まで日本人の母の下で日本の漫画を見て、日本人の中で教育を受け、青森で生まれ育ったハーフなのだから。

となると、とたんにJSG隊員との壁が低くなるのは、非常に得なことでもあり、こういった緊急時(この場合前任者のトラブルによる帰国)などのショートリリーフとして重宝に使われる。

オーバーホールの機会にシェイプアップもかねて、海中訓練プログラムに参加しようと考えていたが、これで、この計画もおじゃんだ!仕方が無い、(JSG中隊長の)仲宗根さんに空手でも鍛えてもらおう。私が仲宗根さんたちを鍛えることなど、とても無理な相談である。

しかし、OFFでも(酔っ払うほど)MPいやJSGの管理責任者となると、飲めないのが、この義務の最大の難点であった。

「まぁ、いつも面倒なことに重宝に使って済まない。その代わりと言ってはなんだが、君のシーナイトを岩国に運んで行くついでに、仲宗根隊長と現地のJMSDFのMPと懇談する場を設けてくれ」

「まぁ一種のパーティーだから、君のシーナイトが岩国を出るまでの二日間は、骨休め(OFF)をして構わんぞ」

「ラッキー!」思わず声に出しそうだった。三月末から四月にかけての岩国は最も岩国が美しい場所に変貌する時期。そこでのパーティーと言えば「お花見」に決まっている。

この日本の習慣は、彼女の幼少期、祖父母や両親との最も楽しい思い出であった。こう言った時の、仲宗根さんは、酒を飲んでも飲まれない酒豪である事は判っていたので、非常に心強い父親代わりのような存在だ。

「短い時間ではあるが、シッカリ、岩国の美味い所を調査してきてくれ!」

「中佐、ご配慮に感謝します」彼女は思わずスキップしそうな勢いで司令官室を後にした。



(岩国)

ここは平和だ、帰国を許され岩国から本国に戻る前に、JMSDF主催の花見の宴に呼ばれた。最初は躊躇もあったが、上官の気配りが嬉しかった。ジャニスを失った悲しみは、此の一〜二ヶ月で癒せない衝撃を彼には、まだ残していた。本国帰還までの管理指揮官は、桜が死んでいったツワモノ、侍たちの鎮魂の花でも在ることを説明してくれていた。

そして、この日本の桜と言う花は、DCでも有名らしいが、自分はまだ(DCに)行ったことが無いので知らなかった。沖縄でも似たような花は一月に咲くが、岩国の桜は、まるで故郷の雪のように美しかった。

アメリカのビールは、水のようで、余りにも、JMSDFの女性士官が用意したランチボックスの中身には合わない。周囲にはオリエンタルなフレーバーを匂わせた屋台も此の雰囲気を壊さぬ程度に散見できる。そこではビール以外のアルコールも購入できた。

生魚は、あまり得意では無いが、日本のフライドチキン、こちらでは「唐揚げ」と呼ぶチキンとビーフジャーキーをローファットにした、「つまみ」は、日本のビールや酒にはよく合い、自分はこちらの方が好みに合った。

招待してくれた日本人は、ネイティブとは言えないが、丁寧な英語で上官と話を盛りあげていたが、自分にとって、内容はレディガガとかマイケルジャクソンといった、クラッシックな物=当たり障りの無いつまらない内容であり、自らは酒と肴に耽溺していくのが、解った。周囲では、詩の内容がさっぱり解らず、のりの悪い東洋のリズムが、頭上を覆っていた。

「二等軍曹!」通訳を兼ねた上官の少尉が、日本の若い士官―とは言っても彼等は、若く見えるだけで、実年齢は自分より上の場合が多いのだがーの横から話しかけてきた、「君は、ダンスが得意か?」

「得意ではありませんが人並みに踊りに行く事はあります」

なにやら、彼は日本人に多分日本語?で説明をしている。こいつは見るからに人種差別に無頓着な南部の白人のインテリ=後から知った日本語では“オタク”野郎という印象はあった。

「ダンスが出来るのですか?」真っ赤な顔をした、その若い日本人(たぶん士官)は、たどたどしい英語で聞いてきた。

「ここで、ですか?サー」

「NO」

「私の英語は間違えました」

「まことに申し訳ありません、」こいつは日本語で連絡士官と話していたはずだ、酔っている。咄嗟の判断がエリックにはまだ効いている。

「ダンスがお上手ですか、ブレークダンスとか、ディスコダンスのような?」

「我々はみな、制服を脱いでいます」ゆっくりと、しかし妙に丁寧な英語でたたみかけてきた。確かに皆私服だ、だから奴らの階級も判らない。しかし上級士官で在ることは間違いない。こういった時は、彼らが聞き取れないくらいのスピードで、明るい表情を作り、砕けた表現を“普通”に使うに限る事は、沖縄にいたとき、現地警察ともめた時、逃げる手段として覚えた方法だ、今はその方法を使うにはちょうど良い。

自分は、彼らから見て“相当酔っている(酒の量が進んでいる)事”は理解しているだろう。それに、今は一応非番扱いだ。

「俺の肌の色がお前たちと違うからって皆ダンスが上手いと思っているのか、悪いが、こんな音楽で、どうやって踊れって言うんだ?」「判っているのか?クラッシク(80th)好きの士官殿?」

しかし、この言葉を完璧に理解できる連れ(オフィサー)がいた。彼は当然ネイティなのだから、完璧に理解できた。「二等軍曹!貴様がアフガンで受けてきた事を聞いて、皆さんは貴様を誘うように気遣って頂いているのに、その言い様は何だ!」この、大学上がり(インテリ)の、まさに少年ガキの様な通訳が専門の士官殿は、まるで旧時代のプランテーション農場主のような態度で自分を叱責してきた。

この剣幕に、ホストの日本人たちは、周囲を見渡し、いきなりお辞儀をしだした。

「なんだ?」と言うのが最初の印象、ただ、いつの間にか私の腕の中で彼=少尉どのは羽交い絞めにされて………気絶していた。

周囲の日本人が何を叫んでいるのか解らなかった、ただ、感嘆した人間が発する抑揚で「スリーパーホールド」とか「マーシャルアーツ」と言う単語が聞き取れた。

「しまった!」と思った時は、既に遅かった。JMSDFの、多分、最も年かさの将校?は、携帯電話をどこかに?かけていた、また、他の一人は気絶した“前線”を知らない将校を、多分ジュードウの技で、目覚めさせ、多分、最も若いー将校だろうーもう一人は自分と、一端事あれば「ぶっ倒してやる」と言う気迫を漲らせて対峙している。

日本人は、自分同様、全員酔っているフリをしていたのか?この場合、逃げ場が無い自分は、おとなしくするしか手は無い。MPがくれば、今までのキャリアはお釈迦になるが、現地警察なら、まだ救いがあるな、(酔いが醒めて行く)と思っていたら、目覚めた通訳官のー彼は、烈火のごとく怒りを漲らせて胸倉をつかんできた。と思えた。

「いかん、酔っている俺もこいつも」彼に殴られることを覚悟した。

しかし、周囲の日本人―花見客―は、全く此方の騒動には気付いていない、のか?無関心なのだろうか?

その時、頬に軽い衝撃と共に彼の全体重が、立膝状態でいた私に掛かってきた。

土手を転げ落ちる時間はあっという間だった、ただ、落ちたところには、日本人の花見客がいた。

立ち上がった彼は、即座に日本人花見客に、いわゆる日本語で言う「ボコボコ」にされている。私は、彼の下敷きー要は、彼のショックアブソーバーになっており、しばらく立ち上がることも出来なかったし、この場合、下手に立ち上がらない方が無難である。と言う判断が、瞬時に働いた。

しかし、彼は、このままでは、死ぬな。いや死んでしまえ!と言う気持ちも一瞬心をよぎった。JMSDFの人間が割って入ったが、彼等も、私も皆私服である。客観的に一見すると、ガイジン連れの日本人と、日本人の若者の喧嘩に見えただろう。

JMSDFは、後方しか知らない彼に比べ弱くは無い。女性士官すら、瞬く間に若い日本人を押さえ込んでいった。しかし多勢に無勢である。彼等は、若い日本人から見れば、確実に年かさ、日本語で言う「オヤジ」である。自分は多分彼らと、同じくらいの年かさか、少し年上位であろう。その上「プロ」である。

ここに来てやっと周囲の花見客も、この「喧嘩」に気付き始め、何人かが携帯で電話をし始めたり、写真を取り始めた。

「まずい、この場から逃げ出そう。」立ち上がり乱闘の場から逃げ出そうと思った瞬間、「若い日本人」が、後ろから、棒を振りかざしてきた気配を感じた。

一瞬の事だったろう、又もや、彼からの攻撃をかわし、同時に彼の体の一部の骨を確実に骨折させてしまった。―彼の動きを止めた。

胸に「鯉“Carp”」のプリントがされた赤いシャツを着た、中で最も年嵩の「日本人」が、その場で、彼の手から吹き飛んだ棒切れを持って、立ち上がった。そして、その拾った棒を正面にかざした。

「これは、剣道って奴だな」以前、格闘戦の座学で、フェンシングとは異なり、その様式美に似合わぬ攻撃性を持ったスポーツの動画を見たことがあった。これは、ニンジャのそれ(チャンバラ)とは異なりかなり実践的なスポーツである。

自分は酔っていない事が自覚できた。

「あの棒でやられても怪我はしない。」と言う判断が、咄嗟に出来た。

彼は、依然、自分を見据えていて絶対に目を切ろうとはしなかった。が、確実に周囲の音・気配も全身を触覚にして消化しているように思えた。


ボタンダウンの制服にジーンズ姿の仲宗根が息を切らせてやってきた。待ち合わせにはまだ時間があるので、着替えもしていなかった。

「アン。済まないが通報があった。済まないが通訳が出払っている、そのままの格好で、悪いが、こっちのMPと現場に急行してくれないか?」

「はぁ?」「私はここの所属ではありませんが?」

「済まない、今日は花見フェスティバルがあって、人が足りない。私も勿論行くが、通訳としてで、構わない、処理は日本の警察とこちらでする」

「多分岩国署からも、英語がわかる人間が出ていると思うが、こちらも事実関係を把握しておきたい」

仲宗根は、既に紺のJSGの制服に上下とも着替え助手席に乗り込んでいた。日本の国内道路で、ハンビーの警務車両を運転する事は、道幅から考えて利口なチョイスでは無いことを、みな十分知っている、JMSDFのエアコンが十分に効いたパジェロで、地元日本人による運転。現地に到着するのに十分と時間は要しなかった。

原則、米兵のトラブル時には、国内同様日本でもショットガンとハンドガンを携行する規則になっている。ただ銃を日本人に見せる事は、非常にリスキーだったし、地元で、慣れた沖縄ではなく、ここは岩国、配属されている兵士もパイロットなどの士官や家族同伴の年嵩の兵士が、ほとんどを占めているので、若い兵が中心の沖縄の様な騒動は、一切双方とも想定はしていない。しかも地元警察の“地位協定”に対する理解度と法に対する強度は、沖縄よりシビアで、アメリカ側の規則(理屈)を通せば国際問題になる、それ以前に土地柄、沖縄の米兵の様な態度をここで取ることはできないに…違いない。その上、この車両にはラックも無い。仲宗根さんも運転の自衛隊員も、その辺は十分心得ていて、目立つショットガンは、弾を抜き、隠すための小ぶりのブラケットを用意してアンの右足元下、即ち後部座席の足元に万が一のために隠している。所詮花見で酔っ払った米兵と日本人の喧嘩に違いない。ココはイラクでもアフガンでも勿論、本国(米国)でもないので、銃で撃たれる心配=安全は、そもそも担保されていた、我々の初動任務は、日本の警察が対応する間、米兵をこれ以上暴れさせなければ良いのだった。バトンを腰にぶら下げているだけで十分なはずだ。

しかし現場は予想以上に混乱していた、JMSDFの顔見知りの士官は、若者を動かないようにねじ伏せているが、拘束する物がないので、動きが取れない。

白人の少尉は、顔面を血だらけにして気を失っている、多分彼はマリーンではなく施設部隊付き将校だろう。

問題は、赤いTシャツを来た日本人と、彼より一回り大柄の黒人兵との睨み合いをどう収めるかだ。バトンの位置を確認し笛を口にくわえ吹こうとした瞬間、この大柄の兵の足元が少し動いた、瞬間、彼は喉元を一突きにされ、もんどりうって倒れた。

「剣精」と言う言葉が思わず口から出た、つい最近までハマっていたテレビドラマの「アレ」である。剣は、見た目より柔らかい素材なので兵が重大な損害を得る事は無かろう。しかし打ち据えられた場所は急所であろう。

彼をしばらく身動き取れなくするには十分な攻撃であった。

笛を吹いてアンは、赤シャツの彼を制止した。彼もアンに気付き、木の枝を捨てた。

「大丈夫ですか?」

「え?日本語?私は、大丈夫。それより彼の介抱をお願いします」

「怪我は無いと思いますが、多分、(気が付いた時)相当頭にくると思いますので」

地元警察の機動捜査隊が、人ごみを掻き分けて、やっと到着した。赤シャツの“鯉(carp)”は地元警察とともにその場を離れた。

「階級と所属は?」アンはまずボコボコにされていた、白人男性が身を起こしたことを確認し聞取りを始めた。

喉元を打たれたアフリカンは、意識はあっても当分話すことはできないだろう。

木の棒に見えたものは裂けた竹竿、要は壊れた箒の肢であった。仲宗根はそれを拾い上げ、地元警察官に手渡した。


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