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第10話

 翌日、いつも通り登校してきた俺は教室に入るなりクラスメイト達に囲まれていた。何があったのか分からず困惑していると、その中の一人が声をかけてきた。


「なあ、昨日お前が助けた女の子って誰なんだ?」


 いきなりそんなことを聞かれても答えることなどできなかったので黙っていると、別の奴がさらに話しかけてきた。


「もしかして彼氏とかいるの?」


 それに対しても黙ったままでいると、痺れを切らしたのか舌打ちをした後でどこかへ行ってしまった。それからしばらくすると担任がやって来て授業が始まったのだが、その間ずっと昨日のことを考えていた。


(まさか、あいつがあんな格好をするとは思わなかったな)


 そんなことを考えながらため息を吐いていると、不意に声をかけられた。顔を上げるとそこにいたのは担任の女性教師だった。彼女は心配そうな表情でこちらを見ていたのでどうしたのかと聞くと、体調が悪いのかと聞かれたので大丈夫だと答えた。すると、安心したのか微笑んだ後でこう言った。


「あまり無理をしないようにね」


 そう言って去っていく背中を見ながら、心の中で呟いた。


(あんたのせいなんだけどな……)


 その言葉は誰にも聞かれることはなかった。




 その日の放課後、俺はいつものように校舎裏に来ていた。というのも、今朝の出来事について聞きたいことがあったので呼び出したのである。程なくしてやって来た彼女に挨拶を交わしてから本題に入った。


「聞きたい事があるんですけどいいですか?」


 そう前置きしてから話し始めると、最初は戸惑っていたが徐々に落ち着きを取り戻していった。その様子を確認してから改めて質問をした。

 その内容とは、どうしてあんな格好をしていたのかという事だった。普通なら恥ずかしくてできないと思うし、ましてや相手が相手だけに尚更だと感じていた。だが、返ってきた答えは意外なものだった。


「実は、前から興味があったのよ」


 恥ずかしそうに俯きながら話す姿を見て思わずドキッとした。よく見ると顔も赤くなっており、耳まで真っ赤になっていたのを見ているうちに段々と興奮してくるのを感じた俺は我慢できなくなって抱きしめようとしたのだが、寸でのところで止められた。

 不思議に思って首を傾げると、彼女は悲しそうな表情で見つめてきた後で言った。


「ごめんなさい、私には好きな人がいるからあなたとは付き合えないわ」


 そう言われてショックを受けたが、すぐに立ち直って尋ねた。


「それってどんな人なんですか?」


 すると、彼女は一瞬だけ躊躇うような素振りを見せた後で答えた。


「その人は優しくて素敵な人で私なんかには勿体ないくらいの人だよ」


 それを聞いてますます気になってしまったが、これ以上聞いても無駄だと思い諦めることにした。

 その後、別れの挨拶をしてその場を後にしたのだが、去り際に彼女が何か言っていたような気がしたがよく聞こえなかったので聞き返すことができなかった……




 それから数日の間、何事もなく過ごしていたある日の事だった。

 学校帰りに街を歩いていると突然後ろから声をかけられた。振り返ってみるとそこにいたのは例の女性だった。

 予想外の出来事に驚いていると、彼女は微笑みながら話しかけてきた。


「こんにちは」

「あ、どうも……」


 戸惑いながらも挨拶を返すと、彼女は笑顔で頷きながら言った。


「今から時間あるかな?」

「え? まあ、特に予定はないですけど……」


 それを聞いた彼女は嬉しそうに笑うと俺の腕を掴んで歩き出した。突然の事に戸惑っていると、彼女は笑みを浮かべて言った。


「それじゃあ行きましょうか」


 こうして、俺は彼女に連れられて行くことになったのだが、一体どこへ連れて行かれるのか見当もつかなかった。

 ただ、一つだけ言えることはこれから楽しいことが起きるかもしれないということだった……

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