さがしもの
「『ミヨ』がいない?」
ばたばたとかけこんできたさくらに、ぼくはそう聞いた。
「そうなの。ぜんぜんみあたらなくって」
しんぱいそうなかおで、さくらが言う。
「どこにいっちゃったのかな」
「どこって…」
さくらのへやはかくれるところがたくさんあるから、『ミヨ』はすぐいなくなってしまう。
「かたづけないとって、言われてるんじゃないの?」
「だって……」
しょんぼりとうつむくさくら。
いつものことだけど。しかたないなぁ。
「いいよ。いっしょにさがしてあげる」
ぼくがそう言うってことは、さくらだってわかってたみたい。
「ありがとう!」
うれしそうに、さくらがわらった。
ぼくはさくらといっしょにへやに行った。
さくらのへやはいつもとおなじ。いろんなものがおいてある。
「かたづけながらさがそっか」
あかいもようのふくをたたんで。
おさらもフォークもテーブルにおいて。
「また『ミヨ』だけ出してあそんでたの?」
『ミヨ』のはこだけふたがなかった。
「だって。『ミヨ』かわいいんだもん」
「ちゃんともどしてふたしないと」
ふたのない『ミヨ』のはこを、ほかの子のはいったはこのとなりにおく。
さくらは『ミヨ』のことをとくべつ気にいってるから、『ミヨ』だけべつのはこにいれてる。
でもすぐにこうしてわすれてしまって、ぼくもさがすことになってしまう。
「ごめんね」
「いいよ」
しょんぼりするさくらといっしょに、ぼくは『ミヨ』をさがした。
『ミヨ』がかくれていそうなものかげやすきまをさがす。
『ミヨ』はくろい毛をしてるから、くらいところにいるとわかりにくい。
はいってたはこのふたはみつかったけど、『ミヨ』はいなかった。
「どこにいっちゃったのかな…」
かなしそうにさくらが言った。
「もうみつからないのかな…」
「そんなことないよ」
さくらをはげまして、ぼくはいっしょうけんめい『ミヨ』をさがす。
さくらはしばらく下をむいてたけど、そのうちじぶんもさがしはじめた。
そうしてさがしていたぼくは、ほんだなとかべのすきま、いちばんおくにくろいものをみつけた。
「さくら、あれ」
ぼくのこえにのぞきこんださくらがうれしそうにわらう。
「みぃつけた」
ほそいすきまに手をいれて、さくらが『ミヨ』をひっぱりだした。
「あんなところにいたんだね」
「みつかってよかった!」
にっこりわらったさくらが『ミヨ』をぎゅっとする。
「もうどこかにいっちゃだめだからね…」
それからだいじそうに『ミヨ』をはこにいれた。
「ありがとう」
「こんどから気をつけてよ?」
ぼくがそう言うと、さくらはこくんとうなずいて。
「うん。もうだいじょうぶ」
ぱたんとはこのふたをしめて、うれしそうにわらった。
読んでいただいてありがとうございます。
探しものは思わぬところから出てくるときがありますよね。
この作品のひらがなを漢字に変換しただけの作品、『探しもの』https://ncode.syosetu.com/n3974ia/
読後感が異なるかと思います。
よろしければ御一読ください。