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シナリオ2-海と大地を貫いたとき

【NO WHERE】


 九つの秘文字が刻まれた古き魔方陣が輝き、光の柱が天と地を繋ぐ。


「せっかく直した塔がまた踏み壊されましたよ姫さま。姫さま?」


 護衛のイチノが呆然と呟く。

 塔が崩れ、光の柱の中から姫の言う英雄巨人が表れた。爆風でイチノの髪が靡いた。


 髪の毛の手入れに時間を掛けていられない戦闘職である為、イチノとニーノは髪の毛を短くしているが、小さく髪を括っている。

 物心つく前からの付き合いだというのに、ラシェル姫はイチノとニーノの見分けをつけられないので、右の括っているのがイチノで左に括っているのがニーノだ。たまに入れ替えても姫は気が付かない。

 その小さな髪の房が真横になるほどの暴風。城の城壁にひびが入り、窓ガラスは割れ、秘蔵のワインは粉々になった。


「姫? ねぇニーノ。解説のラシェル姫はどこへいったの?」

「おそらくあそこ」


 左括りのニーノがガラスの破片まみれのベランダから指さすのは、城のほど近い森。


「姫は勇者様にお会いしたいと言っていた。あの巨体が消えた場所にはきっと何かがあると」

「何考えてるの、今戦争中なのよ? 危ないって何度言ったらわかるの!」

「何度言ってもわからない。姫は昔からそう」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、早く連れ戻さなきゃ!」

「たぶん、不要」


 ニーノが指さす先には英雄巨人が姫を追うように走り出す姿があった。


「まさか、本当に姫を」


 守るために現れたのかと、そうつぶやきかけたイチノだったが、その言葉は飲み込むことになった。

 なんと、英雄巨人は姫を飛び越えて追い抜き、森の中に着地すると爆炎を上げて森を吹き飛ばしたのだ。


「貴重な木材の採取地が灰になっていきますよ」

「あの巨人が地団駄踏む度に地震が……あ、南の崖が崩れ落ちてます」

「なんなの!なんなのよ!」


 森の中で踊り狂った巨人は、必死に走る姫を待つでもなく小高い丘に駆け上ると再び炎を吐き出した。そのまま恐るべき速さで地響きを立てて駆け出しては彼方此方に火を放つ。


「英雄とかじゃなくて破壊神なんじゃないのかな。姫があんまりアレだから神様が怒って」

「姫がアレなのは同意するけど、あの巨人は私たちを助けてくれている」

「どういう事?」

「あの森も、あの丘も、この城から視界が通らない場所。兵を潜ませるのに向いた場所」

「え、じゃあ」

「騎士団がちゃんと機能していれば巡回していたはずの場所。姫は本当に危なかった」


 どたばたと走り回った英雄巨人は、続いて崩れた崖や丘の土石を抱えると、東の海に放り込み始めた。


「あれはいったい何をしているのかしら」

「わからない。でも今のうちに姫を回収しに行こう」


 イチノとニーノが頭を抱えてうずくまるラシェル姫を救出し、城に連れ戻した後も、巨人は大きな岩を抱えては遠浅の海に放り込み続けた。すると巨人の放り込んだ岩の周囲に六角形の光の陣が現れ陸地に代わっていく。

 巨人はこの作業を何度か行うと、瞬く間に東にあった島は陸続きになっていた。


 島には妖魔が潜んでいるといわれており、度々引き潮の夜に現れては人や家畜を攫っていた。

 その、島に巣くっていた妖魔もいまや炎に追われてその姿を消していた。長年、この城の騎士団を悩ませていた妖魔はたったの一晩で完全に駆除されていた。


「あの島の岬に、砦を作れば監視拠点にもなるし、いざという時に避難場所にも使えるわ」


 朝日の中に溶けるように消えていく英雄巨人を見上げながら感謝の祈りをささげるイチノ。

 しかし、生真面目なイチノと違い、直観派のニーノは全く別の意図を感じていた。


「もしかして、長い道を作りたかっただけなんじゃないかなぁ」

次はジョー先輩、武藤の自宅に来襲。繰り出されるのは掟破りの……二台同時出撃!

ソロシナリオとはいったい何なのか!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「もしかして、長い道を作りたかっただけなんじゃないかなぁ」 ↑ あぁ、江戸の仇を長崎で討つ感じですね♪(^_^)v
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