シナリオ1-はやての様に
圧倒的な軍事力で侵略戦争を開始したマクガハン帝国。
その魔の手が、アーグルフェルト王国に伸びていた。
「皇子、準備が整いました」
「ご苦労」
アーグルフェルト王国の街を破壊し、村を焼き、もはや城都といくつかの村を残すだけ。ここまで追い詰めた以上、もはや勝利は揺るがない。
この戦争の責任者である第二皇子は豪華な天幕の中で優雅に酒を飲んでいた。油断するのも仕方がないと言える。まさかここからひっくり返されるとはだれも思うまい。
「しかし、良いのでしょうか」
「何が問題だ。言ってみろ」
「もはや降伏勧告を行った方が良いのではないでしょうか。ラシェル姫の身柄を手に入れるには」
「不要だ。血筋の事なら生きてさえいれば良い。それよりもこの後の戦争の為に、降魔鎧の試験を行う必要がある。その為に降伏されては困るのだ」
武力を貴ぶマクガハン帝国の中でも、継承権第二位を持つ第二皇子は手柄を立てるためにアーグルフェルト王国攻略に積極的だった。そしてその計画は順調だったのだ。偵察の兵士が飛び込んでくるまでは。
「大変です! 城に巨大な光の柱が!」
【NOW HERE】
さて。まずは広げたマップの『城』に自ユニットを置く。ここがアーグルフェルト城で、防衛するべき拠点。
敵のユニットとして、マップ端の野営地に攻城兵器1台と、黒騎士4体、歩兵4体を配置する。
「んーと、敗北条件は敵の騎士・歩兵が城にたどり着く事。攻城兵器が毎ターン1マス移動し、城を攻撃できる位置に近づいても敗北。自ユニットが死亡した場合も敗北」
ルールを確認しながらマップの上に敵軍ユニットを置いていく。
「敵の攻城兵器と騎士と歩兵はそれぞれ移動力が違うだけでなく、移動の優先度が違うと。歩兵は戦わずに最短距離で城を目指します、と」
攻城兵器と歩兵ユニットを1マスずつ城に近づけた。
「そして騎士は森に侵入できない代わりに2マス移動する。自ユニットを攻撃する。え、4対1なの?」
騎士を城に近づけながら腕を組む。
「これ、無理じゃね? ダイスの出目が良ければ一撃で倒せるみたいだけど。無駄なターン無しで倒していかないと詰むよね?」
マップ上のマス目を数えてため息をつく。4ターン後には騎士が城に到着してしまう。
「敵の歩兵と攻城兵器は城を目指す。騎士はこっち側のユニットを目指す。これは、1マスに1体しかユニットが入れないのが鍵だな。森の手前で騎士を団子にして、歩兵への壁にしよう」
攻撃の際に振るサイコロが運よく高い目が出続ければ、普通に戦っても勝てる。しかし、武藤は信じていなかった。自分の運を。
「あとはこれか。『自分の掌握している魔力の源泉の数だけ、特殊行動をとれます』」
・二回行動
・侵入不能マスへの強制侵入
・任意のマスへの移動
「城が源泉だから一回だけ使える。二回行動したい所だけど、まぁコレだよな」
【NO WHERE】
「皇子、光の柱の中から、巨大な人影が!」
「古王国の姫君が幻獣でも呼び出したか。それとも霧の森の妖精お得意の幻惑魔法だろう。降魔の黒騎士を4体出せ! 魔法の効かない鎧の力を見せてやるとしよう」
皇子は帝国の秘密兵器である黒騎士の投入を指示。一騎当千の戦力を持つ上に、魔法が一切通用しない特性を持つ黒騎士は、今までいくつもの戦場を蹂躙してきた。相手がたとえ獰猛な幻獣であろうと、負けるはずはない。皇子はそう信じていた。
皇子が天幕を出ると、アーグルフェルト城に現れた深紅に輝く鋼の巨人は、右手に槍を持ち、低い等身と大きな足を持つ奇妙な鎧武者に見えた。
巨体がゆっくりと戦場を見回すと、突如その姿を消した。
「巨大な人影が消えました!」
「やはり幻惑魔法だったのだろう。その程度がやつらの精一杯という事だ。お前たち、カタパルトを城を攻撃できる範囲まで運べ」
「は!」
皇子の攻撃指示に従い、4人の兵士が巨大な岩を投げ飛ばす攻城兵器に馬をつなぎ、移動を開始した。
その瞬間だった。
攻城兵器の正面に消えたはずの巨体が現れ、この世界には存在しないインパクトドライバーの回転音を響かせて、攻城兵器を粉砕した。
巨大な足には、先ほどまで皇子のいた天幕を踏みつぶし、振動と爆風で皇子をも吹き飛ばしていた。
【NOW HERE】
武藤は『アーグルフェルトの救世主』のマップ上に置いた『九龍攻具DIY』の主人公機・インパクトドラゴンをいきなり敵陣のど真ん中に移動させた。
「特殊行動で、移動してまず攻城兵器を潰す。すると黒騎士がこっちに向かうから、歩兵は黒騎士に邪魔されて動けない。あとは森を使って囲まれないように、歩兵から潰していこう」
付属のフィギュアの代わりに使ったロボットは大きすぎて、周囲3マスほどの地形を踏みつぶしていたが、特に気にしてはいない。場所が分かればいいのだ。
アーグルフェルトの救世主は架空のゲームです。