第9話 こそこそ
看病をしている間に昔の夢を見ました。
「ねぇ、あいちゃん、まいちゃん、みいちゃん。この薬草便利だよ。収集した方が良いよ!」
「本当。すぐ回復するわ」
「こんな序盤で? 最終戦用のアイテムがバグってるみたいな数値」
「製作スタッフのミスかしら」
懐かしい夢です。
でも、今の状況のヒントになりそうですよね。
狙ったような内容だったので、女神様がアフターフォローでもしているんでしょうか。
起きた私は、薬草に詳しい大人に、聞きに来ました。
やはり、この世界にはどんな傷や病気にも効く、薬があるらしいです。
それは、エコー万能薬という物です。
けれど、エコー万能薬に使われる薬草は珍しくて、なかなか手に入らないようです。
この世界の人達は皆、薬を手に入れるのには、かなり苦労しているようでした。
「それなのに、この里の近くにはあるのよね」
しかし何とも珍しい事に、獣使いの里の付近では、数年に一度、たまに素材が見つかったりする事があります。
険しい崖によく生えているらしいので、行ける人は限られてくるらしいですが。
でも、もしかしたら、崖の近くでも見つけられるかもしれません。
そう思った私は、そんな珍しい薬草を探しに行く事にしました。
危ないからこっそり一人で、朝早くに出発する予定だったんですが、町の外に出た時に「お嬢、内緒でいくつもり? 仲間外れはいやだから俺も一緒につれてってよ」と、アリオに見つかってしまいました。
「嫌だっていっても、心配だからついてくよ」
「しょうがないです」
人懐こい性格のアリオだけど、頑固な所もある彼は駄目と言っても、こっそりついてくるでしょう。
危ない目にはあわせたくなかったけれど、渋々承諾しました。
見つかってしまった以上つれていくしかありません。