第5話 陽気な住人アリオ
獣使いの里では、ほぼすべての住民が、獣と共生しています。
里に住む者には守らなければならないルールがあって、必ずパートナーとなる獣を一匹は選ばなければならないらしいです。
立派な獣使いになるためには、成人の儀までに特別なパートナーを選ぶ必要がありました。
里の住人である、三人娘。
あいちゃん、まいちゃん、みいちゃんの同年代の女の子も、パートナーを決めています。
「おはよーアリシャしゃん、元気してるー?」
「アリシャちゃん、朝早いねー」
「後継者ちゃんは大変だねー」
三人とも私にとても親切にしてくれますし、仲良く話しかけてくれます。
前世の友達を思い返してちょっとしんみりしてしまいますね。
その三人にはそれぞれのパートナーがいて、皆タンポポ鳥をお世話しています。
同じ種類の生き物ですが、個体差があって、色が違ったり、ふわふわ度が違ったり、鳴き声も異なるので、見分けは簡単です。
けれど、まだ私には、これといった獣が決められないままです。
だって、どれも皆可愛すぎるから。
つぶらな瞳の鳥や、もふもふな毛並みの犬、愛らしい鳴き声の猫。
どれか一つを選ぶなんて無理ですよ。
だから私は。
「お嬢、まだパートナーを決めてないの? 早く決めちゃえばいいじゃん」
というように、周りの人からそう言われ続けています。
里の人は、色々とすすめてくれるんですけど、やっぱりどうしても一番が決められません。
もふもふは皆違って、皆良い……ですからね。
それはともかく日課です。
子供の獣達のお世話をしている里の子供達を見守り中。
「こらこらーまてー」
「さっそうしたらだめだぞー」
「からだあらってよー」
「子供達もみんな元気みたいですね。里は今日も平和っと」
ここのところは、将来の獣使いである彼等がさぼらずにちゃんとお仕事しているかどうかを見ているのも大事な日課なのです。
「私も少し手伝いますよ」
とはいえ、見ているだけでは退屈なので、たまにお手伝いもします。
「ありがとーおねーちゃん。わんこおねがいしていーい?」
「構いません。任せてください」
「ぬるまゆであらって」
そんな風に、子供達を手伝いながら、真っ白な子犬のもふもふを味わい……ではなく世話をしていると、悩む私に近づいてくる男性がいました。
彼は、よく知っている幼なじみです。自警団に入ってますが、夜目が効く彼のお仕事は暗くなってからが多いので、お昼は里の中をぶらぶらしてます。
「お嬢って、皆に平等に優しいけど、そのぶん優柔不断だよね」
彼は先程の回想の、「まだパートナー決めてないの?」のセリフの人です。名前はアリオ。
彼だけは他の住人と違って私に気さくに話しかけてくれます。
でもだからといって、礼儀を気にしないわけじゃなく、場面によってはちゃんと切り替えてくれます。
最初は里の住人達は彼の言葉遣いを注意してたんですが、明るくて前向きであまりにもあっけらかんとしている態度だったので、次第にあきらめてしまったようです。
私が彼の態度を咎めていないのも大きいかもしれませんが
「そんな事はないです。皆が大切で愛おしいだけ」
私はそう言いながら、子犬を愛でながらその獣を思いっきり堪能します。
柔軟剤を使ったかのように、ふわっふわのこの手触りがすばらしい。それでいて、櫛をいれてもどこにもひっかからさそうな毛並みと、目に入れてもいたくなさそうな艶が(略)。
「お嬢って、今が幸せならそれで満足そうだよね」
そんなことは、ないとはいいきれませんね。




