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第2話 転生先はもふもふの世界で



 不意の人生終了の感覚がやってきて、意識が断絶した後。ふんわりとした場所をただよっていた心地が終わった後の事です。

 気が付いたら私は、真っ白な部屋に立っていました。

 

 死因は思い出せません。

 病死、ではないような気はします。

 事故死、にしては心あたりがありません。


 最後の記憶は友達とサーカスを楽しんでいた時のもの。


 さて、なぜ私は死んでしまったのでしょう。


 首を傾げていると声が掛けられました。


「貴方は、死にました」


 いつの間にやら。私の目の前には、美人な女の人がいました。

 神々しそうな衣装に身を包んだ大層バリボーな女性です。


 彼女は、転生を司る女神様らしいです。

 そんな神様に唐突な死亡宣告をされた私は、「はぁ」としか言えません。


「これから貴方を転生させるので、どこか希望がある世界に心当たりがあるなら、申告お願いしますね」

「はぁ」


 と、言われましてもね。

 あるとかないとか考えるよりも前に、頭が働かない。

 いきなりの事態に頭がついてこないので、困ります。


 とりあえず、私は先程からずっと気になっていた事を尋ねてみます。


「あの~、なぜ私は死んでしまったのですか?」


 意外に冷静な自分の声を聞いて、ちょっとびっくり。

 取り乱したり悲しんだりする事ができないのは、事態が急転すぎて想像がつかないからではないでしょうか。


「死因については、こちらからは回答しかねます」

「はぁ」


 事情はよく分かりませんが、女神様が若干困ったような表情になったので、仕方ありません。

 死因については不明という事にしておきました。

 一体どんなひどい最期だったのでしょう。それか間抜けな最期だったのか。

 友達からよく「のんびりしてるねー」「危機感がないよねー」と言われるので、何かあった時に下手な対応をしたのかもしれません。


 何だかあまり褒められた死に方をしていないような気がします。

 褒められる死に方なんて、あるのか分かりませんが。


 私は、記憶の蓋をこじあけないようにしながら女神さまに向けて尋ねます。


「では、ここはどういった場所でしょう。転生希望先を聞かれましたが、希望先が無かったらどうなるんですか?」

「ここは魂が次の生に送られるまえの待機場所のようなものです。転生希望先について希望がない場合は……、前世の記憶の引継ぎはなしで転生を行わせてもらいます。転生先の世界はランダムで決定されるでしょう」

「なるほど」


 しかし、相槌を打ちましたが台詞ほど意味を把握してません。

 これで即「よし全て分かった」と言える人がいたら、とても頭の良い天才か、二次元にかなりやば具合にはまっているか、奇人狂人の類でしょう。


 ですがとりあえず、要望は言っておいた方がお得、という感想は抱きました。


 なら、どこの世界が良いでしょうかね?


 日頃、あいちゃん、まいちゃん、みいちゃんと話していたゲームのタイトルが、頭の中をかけめぐります。


 バイオレンスラブリー。

 却下。


 ポイズンレッド。

 無理。


 ダーク未来カタストロフィ。

 嫌。


 拷問キャラと毒舌キャラと、闇落ちキャラのゲームの世界は無しにしよう。


 数秒悩んだのち、私の頭にはあの世界の存在が浮かびました。

 可能かどうかは分かりませんが、神様ならそれぐらいできそうなので、一応口に出してみます。


 もふもふは正義。


「アニマル・ラッキーの世界でお願いします」


 私の言葉を聞いた女神様っぽい人は、少し意外そうな表情をした後に、頷きます。


「分かりました。では、転生作業に移ります。そのままの状態でお待ちください」


 できるみたいですね。

 ほっとした私は、若干力を抜いてその場でぼうっとします。


 ケモナー好きのゲーマーに有名だった「アニマル・ラッキー」。

 そこは、もふもふの動物がたくさんいるところ。


 ケモ耳ケモしっぽの生えた獣人が住んでいる場所が舞台でした。


 私はけっこうもふもふが好きなので、第二の人生を送れる場所が選べるのなら、その世界がちょうど良いかもと思ったのです。


 目の前の誰だか分からない女神っぽい人が、宙に書類とペンを出して、何かを記入。


 すると、数分後くらいに、目の前の神様っぽい女性が、「手続きが完了しました。転生者後一名、ご案内します」と行って、こちらを見送るように手を振ってくれます。


 つい席を譲られたり、落とし物を拾ってもらった時の感覚で「どうも」と頭を下げた私は、一瞬後に目の前が真っ白になっていく感覚に襲われます。

 

 だんだんと、意識がぼんやりしてきました。


 人生初の転生。


 よく分からない感覚です。


 布団にくるまれている子犬とか子猫とか赤ちゃんにでもなったかような気分。


 すやぁってしたくなりますね。


 なんて思っている間に睡魔がやってきます。


 私はなんだか眠くなりましたので、意識を手放す事にしました。


 すゃあ。




 次に目を覚ました時、私は望んでいたアニマル・ラッキーの世界にいる事に気が付きました。

 私の耳にはケモ耳、お尻にはケモ尻尾。

 姿見が近くにないので、分かりませんがたぶん獣人……でしょう。


 そして、身長を確かめて気が付きます。

 ちいさい。

 みにまむ。

 おこちゃま。

 つまり私は、お子様サイズでした。


 こうして私は第二の人生を好きな世界でおくる事になりました。



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