第13話 手当て
これは後に、竜の手当をしていた人達から聞いた話ですが。
私達がいなくなった事で騒いでいた町の人達の様子をみていた竜が、心配するように鳴き声をあげたあと、絶対安静にもかかわらず、事情を察して飛び立ってしまったという話です。
竜は人間と同じかそれ以上の、知恵があります。
だから、私達を助けるために、無理をしてかけつけてきてくれたのでしょ。
良い人ならぬ良い竜です。
でも、その代償は安くはありませんでした。
崖の上にゆっくりと降り立った後、竜はその場にばったりと倒れてしまいました。
獣使いの里に帰って欲しかったけれど、飛ぶ気力も体力もないようなので、かなり大変な状況でした。
私達の中には、竜に関する知識を持った人がいなかったため、碌な処置ができません。
空から降りてきたトールと、レオの様子を気遣うアリオに私は何か良い方法がないか尋ねてみますが……。
「アリオ、トール、何か良い方法はないかしら」
「ごめんねお嬢。医療の知識なんて、あんまり知らないんだ」
「獣の体調に関しての知識はありますが、竜には詳しくありません」
良い言葉は聞けませんでした。
唯一望みがあるとすれば、エコー万能薬の存在でしょう。
本当は専用の道具で煎じて、他の薬草とあわせて調合してからでなければいけないらしいけれど、仕方がありません。
いちかばちかですが、小さくちぎって薬草のまま与えてみる事にしました。
私達は見つけた薬草を食べやすいように細かくちぎりながら竜にあたえて、一晩近くでつきっきりで様子を見ることにしました。
生き物の力は、時に思いがけない結果を生み出します。
時には簡単に死んでしまう事もあるけれど、誰かの想いや努力で、弱っていた命の火を引き返す事があるのです。
それを人は奇跡と呼んだり、必然と呼んだりしますが、どちらでも良いです。
ただ目の前の命を助けたい。
私が思っていたのはただそれだけでした。