第11話 密猟者たちとの遭遇
こうして苦労して探し回っても、薬草を見つけられる可能性は高くありません。
実際に生えているかどうかも未知数でした。
無駄骨に終わる確率の方がはるかに高かったはずです。
けれど、私達は運が良かったようでした。
頂上に辿り着くと、すぐにエコー万能薬の薬草が見つかったからです。
「すごいわアリオ。……来て良かった」
足がパンパン。
明日は筋肉痛ですね。
苦労したかいがあります。
「結局一番上まで登っちゃったね」
「でも、これで竜を助けられるはずですよ」
「うん、良かったね」
何も収穫がないなんて事にならなくて良かったです。
そんなふうに、二人で喜んだのはほんのつかの間でした。
私達はそこで、運を使い果たしてしまったらしいです。
「竜狩りが失敗したから、金になる万能薬の薬草を手に入れようと思ったら。とんだ邪魔が入ったな」
密猟者らしき人達が反対方向からやってきました。
人数は3人。
武器らしきものを持っていますね。
剣と斧と包丁?でしょうか。
一応登る前に、もしかしたら、こういった荒れくれ者たちと出くわすかもと思いましたが、本当にそうなるとは……。
私、大事なとことでは運がないのかもしれません。
前世でも寿命をまっとうせず、死にましたし。
邪魔なのはそっちだと思い私は、その場に現れた男達を睨みつけます。
武器を持った彼らは、獣使いの里に墜落した竜を傷つけた人達のようでした。
「お嬢、レオが言ってるよ。竜の体についてた匂いと同じだって、犯人こいつらだって」
レオが、見た事もない顏で険しい顔をして唸ります。
彼等は竜の密漁が失敗に終わったため、万能薬に目を付けたらしいです。
だから私は毅然とした態度で、彼らに対してパートナーの獣を使って格好良くおしおき……。
したい所だったのですが、さすがにこんな事態は想定外。それにパートナーもいません。
「調子に乗ってる貴方達に負けるわけないです、アリオ、お願いします」
「えっ、俺?」
やむおえず同伴者に任せる事にしました。
その代わり、後でアリオの言う事は何でもひとつだけ聞いてあげる事にしましょう。
「あとでアリオのお願い一つ聞いてあげます。美味しい物をあげますし、欲しい物もできるだけ譲ります」
「美味しい物はまにあってるし、物は要らないけど。そっかあ……」
私の言葉が魅力的だったのか、考えるそぶりを見せたアリオは、弾む声でライオンに指示を出します。
「仕方ないなぁ、レオあいつらやっつけて」
「グルルッ」
頼もしいレオが、密猟者たちに勢いよく突進していきます。
武器を持った彼等は、百獣の王の気迫に一瞬たじろぎますが、竜と戦おうと考えただけの実力はあったようです。
足場の悪い中で戦闘という事もあって、最初こそ戸惑っていたものの、徐々にレオを押し返して行きました。
剣を持った人と、斧をもった人がレオを挟み撃ち。
そしてトビウオのように跳躍した包丁の人が空からレオを襲いました。
流れるような連携です。
それにあの身のこなし、慣れてるみたいです。
常習犯なのですね。
命のやり取りの中、密猟者たちの一人が、武器にしていた大きな斧でレオを思いっきり攻撃しました。
「グルルッ!」
横腹を切られてしまったレオは、それ以上の攻撃をやめて、やむなくこちらへと戻ってきました。
「アリオ、レオが!」
「大丈夫だよ、あれくらいかすり傷だ。でも……」
レオを退けた事で自信をつけた彼等が、ニヤニヤ笑いながらこちらへ向かって来ようとしています。
たぶん私達の事を格下と判断したのでしょう。
今のやりとりで完全になめられてしまったようです。
「調子に乗らせた悪党は面倒だってお父さんが言ってた」
「そうね。一筋縄ではいかなさそう」
この状況はかなり、困りました。