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話し合いが終わったのは夜の8時過ぎだった。結構疲れたし腹もペコペコだ。


ギルドで用意してくれた馬車にエレナとリリーと一緒に乗り込む。案内役はエヴリンさんだ。


エヴリンさんはすぐにエレナと仲良くなり、美味しいお菓子を売っているお店やオシャレな服を売っているお店などを教えている。エレナも嬉しそうに聞いている。めんこいねぇ。


宿に着いて宿泊の手続きをする。彼女の部屋は俺が使っている部屋の隣だそうだ。食事ができるまで少し時間がかかるというので2人分のティーセットをすぐに用意してもらえるように頼む。


エヴリンさんが手続きを終え帰った後に、エレナの大きなリュックをボーイに預け、2人で階段を登る。


エレナが自分にあてがわれた部屋に入るのを見届けて自分の部屋に入る。


少しするとベルが鳴る。ドアを開けるとティーセットを乗せたボーイと一緒にエレナが立っていた。この大きな部屋で1人で食事をするのは寂しいだろうと思って、荷物を解いたら一緒に食事をしようと誘ったのだ。


「どうぞ、入ってください。」


リリーを抱いてニコニコしているエレナを招き入れる。


「とりあえず椅子にかけてください。お茶をいただきましょう。」


そう声をかけると素直に椅子に座る。リリーはエレナの膝の上にチョコンと座っている。小動物はめんこいねぇ。


ボーイがお菓子を並べ、お茶を淹れて渡してくれる。お代わり用のお茶をティーポットに入れて、一礼して出て行った。


「今日はお疲れ様でした。いただきましょう。」


そう声をかけてカップを持ち上げる。うん、良い香りだ。味も申し分ない。


お菓子を食べながら先ほどギルドで話した事を互いにもう一度話し合う。エレナが小さい頃から動物と話ができた事、それを活かして犬か狼をテイムしてテイマーになろうと思っていた事、すでに冒険者として活動しているお兄さんに手伝ってもらい、狩りをしながらテイムに挑戦していたがなかなか狼と出会えなかった事、そして狩りの最中にリリーと出会った事。


「リリーはなんで怪我をしたの?」


リリーに聞いてみた。


「あのね、あのね、リリーはかぞくでおでかけちゅうに、おっきなとりさんにつかまったの。そしておそらをとんでいるときに、きゅうにとりさんがリリーをはなしておっこちちゃったの。それでからだぢゅうがいたくて、うごけなくてないていたらエレナがたすけてくれたんだよ。」


どうやらリリーは猛禽類か何かに捕まり、巣へと運ばれる最中に落とされたようだ。


「近くで鷹を狩っていた冒険者がいました。おそらく飛んでいる鷹を弓で射ったんだと思います。リリーはそのおかげで助かったんだと思います。」


リリーの話を一緒に聞いていたエレナが優しくリリーを撫でる。運が良かったねリリー。


エレナの兄と姉の話を聞かせてもらう。2人の兄のうち上の兄は父親の畑仕事を手伝っていて、下の兄が冒険者をしているそうだ。姉はジニアルに嫁に行っているらしい。


話をしているとベルが鳴る。夕食が届いたようだ。


ドアを開けボーイを通し、食事を並べてもらう。お茶とお菓子はそのまま置いておいてもらった。明日の朝食を6時に頼む。エレナも6時に頼んだ。お、朝強いのね。


今日のメインはイノシシのステーキとヤマメの塩焼きだった。


「こんなご馳走食べた事ないです。」


エレナはそう言って感動していた。特にフルーツのサラダが気に入ったようだ。リリーはニンジンとキュウリの野菜スティックをもらってご満悦だ。


女の子にはさすがに量が多いようで、オカズだけでお腹がいっぱいになったようだ。エレナに収納持ちである事を明かし、残ったパンとフルーツを収納する。


「タカさんが手ぶらなのは収納持ちだったからなんですね。」


エレナが感心したように言う。


「そうなんです。おかげで色々と助かってます。」


そう言うと羨ましそうに俺を見つめる。


「良いなぁ。収納持ちはどんなに小さくてもリュック4つ分くらいは収納できるそうじゃないですか。重い水筒とか嵩張る着替えとか持たなくて良いなんて羨ましいなぁ。」


うん、容量制限無しだからどんな物でも収納できるんだけどね(笑)。


「収納は後から身につける事は出来ないんですかね?」


エレナに聞いてみる。


「収納は生まれついての技能なので、後から身につける事は出来ないですね。なので、収納持ちはとても重宝されます。人によっては馬車10台分くらい収納できる人もいるそうで、そう言う人は商人が高給で雇ってくれるそうですよ。タカさんはどれくらい収納できるんですか?」


エレナが小首を傾げて聞いてくる。くう、可愛い。


「そうですね、意識して測った事はないのですが、クマを3頭収納してもまだ余裕はありそうでした。」


そう言うとエレナが驚いた。


「クマを3頭って、馬車1台分どころじゃないですよ。それにクマを倒したって事ですよね。タカさんはその若さでマスター級以上って事ですか?」


エレナに尋ねられたので正直に答える。


「私は14歳なのでマスターにはなれませんよ。今はレギュラーです。」


そう言うとさらに驚いた。


「ええっ⁉︎同い年なんですか⁉︎落ち着いてるし言葉遣いも丁寧だし、年上だと思ってました!」


老け顔って言われなくて良かった(笑)。


「私は母を早く亡くし、父とウォルターの3人で暮らしていました。言葉遣いは父の影響です。ずっと森の中で他人と関わる事なく暮らしていたので、私にとってはこれが普通の喋り方なんですよ。その父も亡くなり、今はウォルターと2人きりです。」


そう言うと悲しそうな顔をする。


「ごめんなさい。ご両親を亡くされてたなんて知らなかったです。寂しいですよね。」


今にも泣き出しそうだ。


「人の生き死には私たちにはどうする事もできませんから、受け入れるしかありません。どうぞ気にしないでください。私ももうウォルターと2人の生活にすっかり慣れましたから。」


そう言うとようやく笑顔に戻る。


食べ終えた食器類を片付けてワゴンに乗せ、冷めたお茶を飲みながらデザート代わりにお菓子を食べる。森での狩りや採取の話をすると目を輝かせて聞いていた。


夜も更けてきたのでお開きにする。遅くなったのでシャワーを浴びる。ウォルターもシャワーで我慢してもらう。


サッパリしたところで酒を飲む。食事の時はエレナが一緒だったので飲んでいなかったのだ。火酒をグラスに注ぎ、じっくりと味わう。あ、いい機会だ、ネットショッピングで少し酒を買おう。


俺はネットショッピングを立ち上げ、お気に入りの酒を次々とカートに入れていく。ツマミになる缶詰やハム、ソーセージ、チャーシューなども買う。トニックウォーターと氷もカートに入れる。やっぱ冷えた酒を飲みたいじゃん。ステンレスの真空保温タンブラーもカートに入れる。いつかパーティーを組む事があれば、仲間と一緒に美味い酒を楽しみたいので6つ購入した。


早速タンブラーと氷を出し、火酒をロックで飲んでみる。味がキリッと引き締まって美味い。良いねぇ。試しにトニックウォーターで割ってみたらこれも美味い。あっという間に1本空けてしまった。


良い気分に酔った所で片付けてワゴンを廊下に出して寝室へ移動し、毛布をかぶってウォルターと床で横になった。




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