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朝の5時くらいに目が覚めた。床の上で寝たのに気分は爽快だ。


まずは収納からナルゲンボトルとカップを取り出し、冷たい水を一気飲みする。


ウォルターも目を覚ましたので、盥に水を出してやる。


冷たい水を飲んでスッキリしたら、朝の日課のポーション作成だ。どんどん作って収納する。


ポーション作成が終わったら、洗面所で歯を磨いて顔を洗う。


ウォルターを風呂場に連れて行って用を足させ、処理をしてから自分も用を足す。


ウォルターと一緒に寛いでいるとベルが鳴る。朝食が届いたな。


ドアを開けるとワゴンを押しながらボーイたちが入ってくる。


昨日頼んだ洗濯物を渡されたので、受け取って収納する。


テーブルのセッティングが進められるのをのんびりと見守る。


やがて朝食の準備が終わり、ボーイたちが出て行った。さて、食べようか。


テーブルに着き、ウォルターに声をかける。


「さあ、食べようウォルター。いただきます。」


ウォルターの朝飯はイノシシの肉だった。内臓も用意されている。わざわざ猟師から買い付けてくれてるのかもしれない。ありがたい事だ。


おれの朝食はジニアルで泊まった時とあまり変わらない。


肉のリエット、酢漬けの魚に付け合わせの細かく刻んだ野菜類、何種類ものジャム、蜂蜜、バター、生野菜のサラダ、沢山のフルーツ、ヨーグルト、そして山盛りのパンだ。


生野菜のサラダにネットショップで購入したタマネギポン酢をかけてワシワシと食べていく。うん、美味い。


サラダを食べ終えたので、空いたボウルに魚の酢漬けと付け合わせの刻んだ野菜を入れて、タマネギポン酢をかけてよく混ぜ合わせ、パンに乗せて食べる。


これも美味い。サッパリとした口当たりが最高だ。タマネギポン酢は万能だなぁ。


リエットもたっぷりとパンに塗りつけて食べる。コッテリとした肉の旨みが堪らない。


いつも通りヨーグルトはハチミツを加えて食べ、ジャムとバターはタッパに入れて収納、余ったパンとフルーツも収納する。


タマネギポン酢を使ったボウルを洗面所で濯いでおく。料理人は貪欲だから、食器に残ったタマネギポン酢を味見されたらマズいからね。念には念を、だ。


食事を終えて、一緒に用意されていたティーセットでお茶を淹れて飲む。まったりとした時間が過ぎていく。


お茶を飲み終えたらある程度テーブルの上を片しておく。


充分に食休みを取って、ウォルターをモフりながらギルドからの迎えを待って待機する。


ベルが鳴ったので鍵を持って出ると、ボーイが待機していた。


ギルドからの迎えが来たと告げられたので、ボーイの後をついてフロントへ向かう。フロントに鍵を預けてロビーに向かうと、エヴリンさんが満面の笑みで待っていた。


「おはようございますタカさん!今日もよろしくお願いします!」


笑顔と一緒にツインテールが揺れる。朝から可愛いわぁ(笑)。


「おはようございますエヴリンさん。こちらこそよろしくお願いします。ではご一緒にギルドへ向かいましょう。」


そう声をかけて一緒に馬車へ向かう。昨日とは違う御者さんだ。一応挨拶しておくか。


「おはようございます。よろしくお願いします。」


そう挨拶するが会釈すらしない。あまり良い感じではない。


小僧っ子がVIP待遇なのが気に入らないのかもしれない。まあしょうがないよね。中身はアラフィフでもこっちでの年齢は14歳だもんね。こんな事を気にしてもしゃーないか。


気を取り直してエヴリンさんとウォルターを伴って馬車に乗り込む。


「冒険者ギルドへお願いします。」


エヴリンさんが声をかけても返事もしねぇ。ちょっとカチンとくるな。後で対処するか。


馬車はのんびりと走る。俺とエヴリンさんは昨日飲んだコーヒーの事で盛り上がっている。カフェオレが甚く気に入ったらしい。


この笑顔を見たら、また一緒に行きたくなっちゃうな。


料理の話もする。木の実を乾煎りしてから蜂蜜を絡めて食べる話をすると、またもやヨダレを垂らしそうな表情をしていた。


これくらいなら作って食べさせてあげようかな?と思ってしまったのは言うまでもない。


色々な話で盛り上がっていると馬車が停車した。着きました、の一言もない。完全に頭に来た。ちょっとお話ししよう。


馬車を降りてウォルターと共に御者の横に行く。御者は完全に見下した表情で御者台から見下ろしている。上等だよ。後で吠え面かくなよ。


「貴方は冒険者ギルドの職員ですか?それとも別の団体の所属員ですか?」


丁寧に尋ねる。


「は?突然なんですか?別に貴方には関係のない事でしょう?」


御者が答える。完全に舐めてるな。ふざけやがって。


「私の質問にお答えいただけませんか?お答えいただけないのなら、冒険者ギルドの副ギルドマスターあたりにお聞きしますが。出来れば貴方自身からお聞きしたいのですが?」


そう言っても馬鹿にしたように鼻で笑っている。小僧っ子がそんな大物と繋がっているはずは無いだろう、と高を括っているのだろう。


どうしようもねえな。実力行使といくか。


俺はウォルターに念話を飛ばし、馬たちの前を塞がせた。ついでに威圧も飛ばさせる。


馬はその場で固まった。御者がどう操作しても何を命じてもそこから一歩も動かないだろう。


「エヴリンさん、申し訳ありませんが、副ギルドマスターを呼んでいただけませんか?確認したい事がありますので。」


エヴリンさんにそう告げると、一つ頷いてすぐに走り出した。エヴリンさんも思う所があったのだろう。良し、追い込もう。


御者は慌てて馬を走らせて逃げようとするが、馬たちはウォルターの威圧のおかげで一歩たりとも動こうとしない。


俺も御者に向かって威圧をかけると、途端に顔色を悪くして汗をかきはじめた。


「タカさん、おはようございます。何かトラブルでしょうか?」


エヴリンさんと共にカタリナさんがやって来た。まさか本当に副ギルドマスターがやってくるとは思ってもいなかったのだろう。見る見る顔が青ざめていく。


「カタリナさん、おはようございます。この御者さんの態度があまりにも悪かったので、ギルドの職員なのか別の団体の所属員なのか確認しようと思ったのですが、答えていただけなかったんですよ。


なのでカタリナさんに教えていただこうと思いご足労いただきました。申し訳ありません。」


俺はそう言って頭を下げる。


少なくとも俺がギルドの客人だという事実は変えようが無い。それなのにこのような態度で接するのなら大きな問題だろう。


こいつがもしギルド職員なら、こいつの態度がギルドの総意だ、と受け取られて話が拗れる事だってあるだろう。こう言うのは早めに叩いておくに限る。


御者の顔は真っ青だ。ようやく自分がした事に気づいたのだろう。でも、時すでに遅し、だね。


「タカさん、不愉快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。


この者は我々冒険者ギルドの職員ではなく、馬車協会の者です。この者は個人で馬と馬車を持ち、馬車協会を通じて個人で仕事を請け負っている者です。馬車についているタグが識別番号になっています。


ギルドの御者は私用で休暇を取っていたので、馬車協会に依頼を出しました。


タカさんが不愉快な思いをしたと仰るならよほど態度が悪かったのでしょう。今後はこの者とは取引きを停止します。すぐに使いを出して通告しますので、どうかお許しください。」


カタリナさんが深々と頭を下げる。


要はこの人は地球での個人タクシーみたいなもんなのね。それなのにこの態度は無いだろうに。


いくら馬と馬車は自分持ちでも、お仕事を回して貰ってるわけでしょ?トラブルがあったら仕事を回してもらえなくなる事くらい想像できなかったのだろうか?


それとも、本当に俺が小僧っ子だったから馬鹿にしてただけなのか?何れにせよ、接客業には向いていないだろう。まあ、痛い目を見てもしゃーないよね。


御者は青い顔を通り越して真っ白な顔をしている。ようやく事の次第を把握したようだ。客を見て個人の判断で態度を変えるからそういう事になるのよ。思い知れば良いさ。


「も、申し訳、ありません。わ、私は、決して悪気があったわけでは」


「悪意なく利用者を不快にさせるような態度をとったのであれば、そちらの方が問題です。貴方は御者に向いていないのでしょう。その旨も連絡させていただきますのでご心配なく。


少なくとも当ギルドの大事なお客様を蔑ろにしたのですから、それなりの考えがあっての事と思います。その考えは協会の責任者にお話しください。我々冒険者ギルドは今後貴方との取引きを一切停止します。どうぞ協会へ戻ってください。」


カタリナさんが御者の言葉に被せるように、冷たい声でけんもほろろにそう告げた。取りつく島も無い。あーあ、話が大きくなっちゃった。


御者は真っ白な顔でブルブルと震えている。自分がやった事の重大さが分かったようだ。縋るような目で俺を見るが、助け船を出すつもりは無い。


「ウォルター、もう良いよ。行こう。」


ウォルターに声をかけ、カタリナさんと共にギルドの入口へ向けて歩き出した。御者はその場で固まったままだった。



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