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「ではタカさん、ウォルターさん、私とご一緒にお願いします。」


カタリナさんが先に立ち歩き出したので、後をついていく。途中で歩いていた職員に声をかけ、魔法訓練場の片付けを支持していた。そのまま事務室へ向けて歩き続ける。


事務室に入るとテキパキと動き出す。


「フレディー、馬車を用意して。8人乗りの大きいやつね。ハリソン、宿に提出する依頼書は出来てるわね?エヴリンに渡して。エヴリン、こちらのタカさんとウォルターさんを宿までご案内して。タカさん、ご希望があればこの北居住区をエヴリンにご案内させますよ。」


カタリナさんからありがたい申し出をいただいた。願っても無いチャンスだ。


「お仕事に支障がないのであれば、ぜひお願いします。」


俺がそう言うとカタリナさんが笑みを浮かべた。


「エヴリン、急ぎの仕事はあるかしら?」


カタリナさんが問いかけた女性職員が立ち上がって答える。おお、黒髪のツインテールが良く似合う妹系の可愛らしい女性だ。


「急ぎの書類は全て終わっています。残っているのは訓練用武器と防具の更改の書類ですね。」


ちょっと舌ったらずな感じの話し方が可愛らしい。イタズラしたくなるぞ(笑)。


「先ほど板金鎧2体が廃棄処分になったわ。その関係もあるから、書類は明日やってちょうだい。今日はタカさんの案内を終えたら上がっていいから着替えていらっしゃい。

タカさん、馬車の準備もありますので少しお待ちください。」


カタリナさんにそう言われたので、俺は頷く。


「では食堂の方で待ってますね。ウォルター、おいで。」


そう言って事務室から出て、フードコートのような食堂へ向かう。


食堂では幾つかのパーティーが食事を楽しんでいた。到着報告をしてまずは腹拵えといった感じなのか、それとも依頼を早く終わらせて軽い打ち上げなのか。酒を手にしているところを見ると仕事前の打ち合わせでは無いのは確かだ。


うーん、俺もちょっとだけ飲みたい気分だな。ウォルターを待たせてバーカウンターへ向かう。


「すいません、エールを1杯お願いします。」


カウンターの中にいる若いバーテンに声をかける。


「はい、3銅貨です。少々お待ちください。」


バーテンはそう言うとカップを片手に樽へ向かう。俺は収納から銅貨を3枚取り出してカウンターに並べておく。


「お待たせしました。どうぞ。」


バーテンはカウンターにカップを置き、手早く銅貨を回収すると別の客に向かっていった。


カップを手に持つと麦の良い香りが漂う。まずは一口。


炭酸は弱めだがとにかく香りが良い。サラリとした喉越しも相まってとても飲みやすい。


一口飲んだ後はもう止まらない。ゴッゴッゴッと喉を鳴らして一息に飲み干していく。


空になったカップをカウンターに打ちつけ、プハァッと息を吐く。この1杯のために生きてるなぁ(笑)。


不意に口笛の音が聞こえたので振り向くと、テーブルで食事をしていた若い冒険者が俺に向けて親指を立てた拳を見せてウインクした。


良い飲みっぷりだ、と言いたいのだろう。俺も笑顔で会釈を返す。


「ごちそうさま。」


バーテンに声をかけて再び若い冒険者に会釈してウォルターの元に戻り、席に座ってエヴリンさんが来るのを待つ。


エヴリンさんが現れるまでは飲み終えてから10分ほどかかった。余裕でもう1杯飲めたね(笑)。


エヴリンさんは明るいグレーのジャンパースカートに、フリルの飾り襟のついた白のブラウスを着ている。


黒髪を高い位置で縛ったツインテールと相まって、なんだか日本の女子中学生の様に見える。むう、イケない関係(笑)。


ってか俺、中身はアラフィフでもこちらではまだ14歳なのよね(笑)。多分エヴリンさんの方が歳上だよ。(笑)。


「すいませんお待たせしてしまいました。」


エヴリンさんが頭を下げる。ツインテールが揺れる。うん、イイね!(笑)。


「こちらが仕事中にも関わらず案内を頼んだのですから、どうぞお気になさらないでください。書類の忘れ物などは無いですか?」


エヴリンさんに優しく(やらしく?)声をかける。悪いオヂサンになった気分だ(笑)。


「はい!書類はシッカリと持ってます!」


エヴリンさんはそう言うと、襷にかけた肩掛け鞄をポンポンと叩いて見せた。ロリパイスラ、なかなかの眺めです(笑)。


「では改めてご案内よろしくお願いします。見たいのは武器・防具を扱う店、雑貨店、肉屋、魚屋、八百屋ですね。時間があれば服屋もお願いします。回る順番はエヴリンさんにお任せしますので、宿まで効率よく回れるようにお願いします。」


エヴリンさんにお願いする。


「お任せください。私が責任を持ってご案内します。」


フンスと胸を張って宣言するエヴリンさん。ああ、悪いオヂサンになりたい(笑)。


ウォルターを伴って外に出ると、2頭立ての大きな馬車が俺たちを待っていた。8人乗りって言ってたもんな。そりゃデカイわ。


御者さんがドアを開けてくれたので、会釈して乗り込み、後ろ側の席に座る。ウォルターは足元で横になる。エヴリンさんは御者のすぐ後ろの席に座る。


「まずは武器屋さんへ向かってください。戻ったら次の行き先を伝えます。」


エヴリンさんが窓から御者に指示を出す。馬車はユックリと動き始めた。


他愛の無い会話をしているうちに、エヴリンさんが18歳だと分かった。俺が14歳だというととても驚いていた。


10分ほどで武器屋に着く。馬車はそのまま待ってもらって、店の中へ入らせてもらう。買い物中はウォルターは馬車の中でお留守番だ。


この店は三階建てで、一階は鎧や兜、籠手や脛当てなどの防具、二階は盾と剣や槍などの武器、三階は弓やボウガンなどの射出武器が揃えられていた。


一階から順に見ていると、中年の冒険者に声をかけられた。


「若いの、お前が身に着けてるのはもしかしてカールズの武器屋で買った物か?」


お、目が効くね。知ってる人は知ってるんだな。


「はい、仰る通りです。良く分かりましたね。何か特徴でもあるんでしょうか?」


その冒険者に尋ねる。


「ああ、その肩や肘に縫い込まれた金属パッドが特徴的だからな。


俺も魔獣専門に切り替えるまでは、お前と同じチェーンメイル入りの革ジャケットを愛用してたんだ。何度も命を助けられたよ。オヤジは元気にやってるか?」


気さくな冒険者にこちらもつい話し込む。


「ええ、とても元気でしたよ。ただ、『最近は猟師までブレストプレートやハーフプレートを欲しがる。見た目ばかり気にしやがって』とお冠でしたが。」


そう言うと声を上げて笑い出す。


「あのオヤジらしいぜ。金属鎧の金気臭さはすぐに獲物にバレるから、狩りがしたいなら金属鎧なんて以ての外だ、って良く怒られたもんだよ。


久しぶりに顔でも見に行くかな。邪魔して悪かったな。」


そう言って俺の肩を軽く叩くと、カウンターへ向かって行った。


俺も一通り見て回るが、この仕込みジャケットの出来が良すぎて欲しいと思う物が見当たらない。エヴリンさんに断りを入れて二階へ上がる。


二階で見たかったのは盾だ。地球の警察や特殊部隊のように、大型の盾を使って身を守りながら射撃できないかと考えたのだが、どうにも大きさが中途半端な上に、全身を隠せるサイズの盾は重すぎた。


いくら身体強化が100倍まで出来ても、重量で地面にめり込んでしまうようでは話にならない。やはり固定砲台になるよりも移動を重視した方が良いな。


武器も一通り見たが、火涼天翠とブラックククリがあれば充分な感じだな。うん、スルーだ。


三階に上がり弓とボウガン、投槍機、投石機などを見る。投石用のスリングやボーラもあった。


ボーラの重りの代わりに手榴弾を付けて、などととある漫画の武器を思い浮かべて笑ってしまう。実際にやるなら信管の時間調整は不可欠だし、調整通りの時間で爆発してくれるとは限らないからね。


店内をすべて見終わったので、エヴリンさんに言って店を出る。


「雑貨屋さんは二軒隣りですので歩いていきましょう。」


エヴリンさんが歩き出す。思わず手を繋ぎたくなるよね(笑)。


雑貨屋も二階建てで、テントや寝袋まで売っていた。大型のアウトドアショップみたいな感じだ。


一通り見て回り、50mの太いロープと細いロープを二巻ずつ、4m四方の大きさの蝋引きの防水布を3枚購入した。銀貨7枚と棒銅貨6枚だった。防水布はタープの代わりに使うつもりだ。


他には特に目を引く物はない。ポルカ村である程度買い込んだし、EDCギアもあるからな。


雑貨屋を出て馬車に戻る。エヴリンさんはずっと笑顔だ。さあ、次へ案内してもらおう。


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