063
王都に入り、まずは開けた場所を探す。カールズで市街地の案内板がある事を学んだからだ。表示されている現在位置と地図上の冒険者ギルド本部の位置を確認する。
アイの話も合わせると、ヴァレンティナは街の中央にお城があり、お城を中心に東西南北に十字に幅10mほどの水路が走っていて、水路に沿って大通りが通っている。
街の中には水路を渡るための橋が何箇所もかけられている。
俺が入ってきたのは南門で、南は商業区になっており、商人や貴族が主に住んでいるようだ。
王城を挟んで北側が一般市民の居住区で、冒険者ギルド本部も北側にある。
西と東の水路に沿った居住区には城勤めの役人が多く住んでいるようだ。ちょうど役人の居住区で北と南を分断するような形になっている。
それぞれの居住区に商店や宿など様々な施設が設けられている。
冒険者や市民が南側を利用する事はあまりなく、またその逆に貴族が北側を利用する事もあまりない。
ただ警備隊は別で、それぞれの居住区に警備隊の詰所が設けられており、交代制で各居住区を回っているらしい。
とりあえずは北に向かい、冒険者ギルド本部を目指す。
城に向かい街道を進むと、城の周囲にもお堀が設けられていた。なるほど、石と水の都とはよく言ったもんだ。
お城を迂回するように設けられた大通りを歩き冒険者ギルド本部へと向かう。
城から30分ほど歩いた所に冒険者ギルドがあった。石造りで三階建ての立派な建物だ。大きさはカールズ支部の2倍くらいか。入るのが楽しみだ。
冒険者ギルド本部の中に入ると、その広さには圧倒された。
カウンターの向こうまで含めると、バスケットコートを横に三面並べたほどの広さなのだ。
窓口も新規登録・相談窓口が1〜3、依頼登録窓口が1〜7、報酬支払窓口が1〜4となっている。
もうじき昼だというのに沢山の冒険者が窓口にいた。
俺はウォルターを伴って新規登録・相談窓口へ向かう。ちょうど空いた受付へ滑り込む。はい、今回も巨乳のお姉さんでした(笑)。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢さんが笑顔で訪ねてくる。茶髪のツインテールに幼い顔立ちにもかかわらず、破壊力抜群のお胸は反則です。思わず視線が行ったり来たりしてしまいます。
「はじめまして。私、ポルカ村から参りましたレギュラー級冒険者、タカと申します。こちらは私の家族で従魔のウォルターと言います。
この度は冒険者ギルドグランビア王国本部からの要請でこちらに罷り越しました。冒険者ギルドポルカ出張所のイエルク様より書状を賜っております。どうぞご確認ください。」
そう言って礼をし、受付嬢さんに冒険者タグと手紙を渡す。腕を動かすだけでたゆんたゆんとお胸が揺れます。精神的な防御力がゼロになってしまいそうです(笑)。
「少々お待ちください。」
受付嬢さんは事務室の奥へ向かって行きました。ケツも立派です。フリフリ揺れるケツは眼福です。
奥にいた責任者と思しき人に手紙を渡します。その人は直ぐにタグと手紙を持ってこちらへ向かってきました。なかなかの色男です。笑ったら歯がキラリと輝きそうです(笑)。
「はじめまして。ようこそ冒険者ギルドヴァレンティナ本部へいらっしゃいました。私は副ギルドマスターのヨセフと言います。
ただいまギルドマスターの元へご案内いたしますのでこちらへお願いします。」
そう言うとカウンターの端にあるドアを開けて手招きする。呼ばれるままに中へ入り、後に着いて廊下を歩き階段を登る。三階まで登り、ドアの前でノックして声をかける。
「ギルドマスター、ポルカ村からいらしたタカさんがご到着されました。」
途端にガタガタと慌てたような物音が響き、中から声がかかる。
「あ、ああ、すまん、入ってくれ。」
「失礼します。タカさんどうぞ。」
そう言ってヨセフさんがドアを開けてキープしてくれる。会釈して中に入り、机にかけるギルドマスターの前まで進み一礼する。
「はじめまして。私、ポルカ村から参りましたレギュラー級冒険者、タカと申します。こちらは私の家族で従魔のウォルターと言います。
この度は冒険者ギルドグランビア王国本部からの要請でこちらに罷り越しました。冒険者ギルドポルカ出張所のイエルク様より賜った書状を、副ギルドマスターヨセフ様にお渡ししてあります。どうぞご確認ください。」
ギルドマスターは驚いた顔で頷いた。
「お、おお、良く来てくれた。俺はこのヴァレンティナ本部のギルドマスターをしているローガンだ。
いやまさか本当に今日中に到着するとは思っていなくてな。思わず取り乱した。すまなかった。まずはかけてくれ。」
そう言って応接セットのソファーを手で示した。促されるまま奥へ向かってソファーに腰掛ける。ウォルターはいつもの通り俺の後ろでお座り待機だ。
「ヨセフ、カタリナはどうした?」
ギルドマスターが副ギルドマスターに声をかける。
「上がってくる前に声をかけてあります。もうすぐ来るでしょう。」
副ギルドマスターが言い終わる前にドアがノックされた。
「ギルドマスター、カタリナ参りました。」
凛としたハスキーヴォイスが聞こえた。
「おう、入れ。」
ギルドマスターが声をかける。
「失礼します。」
そう言ってドアが開かれる。そこには金髪碧眼の美女が立っていた。
ツカツカとギルドマスターの机の横まで進み、そこで足を止める。
一緒に入ってきた女性職員2名がお茶とお菓子を用意し出す。お茶とお菓子が人数分テーブルに並べられ、女性職員が退席したところで徐に3人が俺の前のソファーに移動して腰をおろした。
「カタリナだけ挨拶がまだだったな。うちには副ギルドマスターが2人いてな。1人はお前を連れてきたヨセフ、もう1人がこのカタリナだ。」
ギルドマスターがそう言うとカタリナさんが口を開く。
「ヴァレンティナ本部で副ギルドマスターを務めていますカタリナと申します。どうぞよろしくお願いします。」
そう言って礼をする。
「はじめまして。ポルカ村から参りましたレギュラー級冒険者、タカと申します。こちらは私の家族で仲間のウォルターです。私の従魔となっているそうです。
この度は私とウォルターの関係による新職業『モンスターテイマー』と、新技能『モンスターテイム』について、確認と研究のために呼ばれたとの事です。私たちに出来る限りの協力をさせて頂くつもりですので、どうぞよろしくお願いします。」
そう言って深々と頭を下げる。カタリナさんがほう、と声を上げる。
「タカさんどうぞ頭を上げてください。お願いして来ていただいたのはこちらの方です。どうぞ気を楽になさってください。
それとギルドマスター。タカさんの方が言葉遣いも立ち居振る舞いも遥かに丁寧なのはどういう事ですか。
何度も申し上げていますが、もっと威厳を持った言葉遣いと立ち居振る舞いを身に付けて下さい。先日の御前会議の時だってーーー」
な、何か話がズレてるぞ?これ、止めていいやつ?
「カタリナ、お客様の前です。その話は後で3人でゆっくりとお願いします。良いですねギルドマスター?」
ヨセフさんが止めに入ったが目が笑っていない。ギルドマスター、ご愁傷様です。
「お、おう、お手柔らかに頼む。まずはイエルクからの手紙を見せてもらおうか。」
ギルドマスターがそう言うと、ヨセフさんが手紙を渡す。読んでいる間にお茶をいただく。カモミールの香りが爽やかだ。うん、美味しい。
「美味しいカモミールティーですね。気持ちを落ち着かせるにはピッタリです。」
そう言うとカタリナさんがニッコリ笑う。
「さすがポルカの出身ね。ゾーイさん、いえ、村長夫人はお元気かしら?」
カタリナさんから尋ねられた。
「はい、とてもお元気です。私がこちらに発つ前に、山ほどハーブをお渡ししてきたので、今頃はブレンドに夢中だと思います。」
そう言うと上品にコロコロと笑う。
「それは良いわね。近々休暇を取って遊びに行こうかしら。彼女のブレンドしたお茶は本当に美味しいものね。懐かしいわ。」
カタリナさんはそう言うと遠い目をした。浅からぬ縁がありそうだ。
「ポルカ村で修行をした事があるのですか?」
そう尋ねると頷く。
「冒険者になりたての頃にね、ポルカ村で5年修行したの。フランクさんとゾーイさんはまだ結婚したばかりで、先代が村長だったわ。
2人を連れてよくハーブを採取しに森に入ったわ。その頃の仲間は皆偉くなってしまって、今ではなかなか会えなくなってしまったけれど、それでも気持ちは当時のままよ。」
そう言って髪をかき上げるとカップを口にする。尖った耳が露わになる。この人、エルフなんだ。通りで美人さんだと思ったよ。
「ぜひ仲間の方たちとポルカ村を訪ねてあげてください。きっと泣いて喜びますよ。ハンカチが何枚あっても足りないくらいに。」
俺がそう冗談を言うとクスクスと少女のように笑った。昔の事を思い出しているのだろう。
「そうね、きっとそうだわ。この件が片付いたら、皆と連絡を取って休暇の擦り合わせをしないとね。」
そう言って夢見る少女のようなウットリとした表情をする。思わず見惚れてしまった。
「盛り上がっているところに済まんな。手紙を読み終わったので、君の口から詳細を聞きたい。面倒だろうが頼む。」
ギルドマスターから声がかかった。




