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006


「さて、そろそろ頃合いじゃな。ルーテミス、彼をリアースへと送ってやりなさい。」


デミウルゴス様にそう告げられ、ルーテミス様が大きく頷いた。


「畏まりました。それでは富丘さん、私の管理するリアースへとお送りいたします。それにあたって、身につけている物はリアースの物と変えさせていただきます。


また、付喪神となった道具たちは、それぞれにリアースで使えるよう特殊な力を持っています。それらは全て収納の中にあります。使うのを楽しみにしていてくださいね。


それでは、素敵な人生をおくれますように。」


ルーテミス様の声に送られるように、眩い光に包まれた。



気がつくと美しい湖のほとりに立っていた。向こう岸に生える木々が豆粒ほどにしか見えないほど巨大な湖だ。


周囲は木々で囲まれ、家のような物は一つもなく、人の気配は無い。遠くに大きな山が見える。


日本一水質の良い湖、支笏湖によく似ているな。しばし見惚れた。


水の香り、森の香り、風の香りを心行くまで堪能し、我にかえる。ふむ?一体ここはどこなんだ?そう思うと同時に目の前に半透明のプレートが浮かび上がり、文字が表示される。


「ここはジニアル領の北にある森。ジニアル領の人々からは北の森と呼ばれている。現在地から一番近いのはジニアル領の領地であるポルカ村で、直線距離で60キロ離れている。」


あら、人が住む町や村に送ってもらえれば良かったのに。だがそうすると今まで存在しなかった人間がいきなり現れることになるから、マズいことになるか。


まあしょうがない。急ぐ必要も無いし、のんびり行くか。60キロなら荷物を異空間収納に入れてしまえば、日の出とともに出発すれば日が暮れるまでには辿り着けるだろう。


いや、それはきちんと整備された道路がある場合か。あくまで直線距離だし、何より道無き道を薮を漕ぎながらだと4〜5日、いや、もっとかかるかもしれんな。覚悟しておかないと。


さて、ポルカ村に向かうにはどうしたら良い?


「湖に沿って左の方へ2キロ歩くと川があるので、川に沿って下っていけば村まで行くことは可能。


ただし、20キロ下ると落差50mの滝があるので、滝を避けて大きく迂回する必要がある。そのため、この湖はポルカ村の住人には知られていない。」


マジか。さすがに50mの落差の滝をラフティングする勇気はないわ。頑張って歩くしかないな。


まずは現在の服装と装備を確認するか。見慣れない服装に変わっているからな。


そう考えると同時にプレートの表示が変わる。


「現在の装備及び持ち物


旅人装備一式(変更可能)

現在の服装は袖なしのTシャツ状の肌着、トランクスタイプのパンツ、靴下、厚手で長袖のプルオーバータイプのシャツ、チノパン状のズボン、革製のベスト、革製のチャップスと呼ばれるオーバーパンツ、革製ブーツ、革手袋、革製フード付きポンチョ。


背負っている革製の大型リュックサックの中には、2リットル入る革製の水筒が8個、4個にはワインが、4個には水が入っている。


30センチ四方の大きさの巾着状の革製食料袋が6個、2個には干し肉が10塊ずつ、2個には堅パンが10個ずつ、2個には岩塩の塊が2つずつ入っている。


その他には金属製カップ大小各1個、金属製のスプーンとフォーク、火熾しセット、毛布2枚、下着類3セット、服上下一揃いが入っている。


通常はこの他に護身用の短剣と採取や獲物の解体、日常の細々した作業に使う小型のナイフが加わる。


なお、現在着用している物、所有している物は全てリアースの物で、この世界に無い物は全て収納に保管されている。」


あ、じゃあ、異世界転生テンプレの「異世界の服を売ってこの世界の服装を整え、当座の金を得る」をやる必要は無いわけね。なるほど。


あ、でも、魂だけ抜け出てこの世界に送られたのだから、そもそも衣服は身につけてなかったか(笑)。まあとりあえず、見た目で怪しまれる事はないわけだ。人相はともかく(笑)。


水筒が全部で8つもあるのは、旅の途中で安全な水を入手できる箇所が少ないからだろうか?まあ、水場には獣たちも来るだろうし、安全対策としては間違いないが、かなり重量がある。さっさと収納行きだな。


食料袋はセッティングされた状態の販売なのかな?メイン+予備で2つずつか。岩塩の塊は、野草などを積んで簡単なスープを作ったり、狩りで獲った獲物を食す時に使うのだろう。胡椒がないのはやはり高級品だからか。


金属製カップは鍋も兼ねるのだろう。一人分しか作らないなら鍋は不要だもんな。


フォークとスプーンがあるのにナイフが無いのは、旅人装備の小型のナイフで賄うからか。まあ俺もステーキハウスなどで外食する時には、備え付けのカトラリーのナイフではなく、EDC(Every Day Carry:常時携帯)している自分のナイフを使うもんな(笑)。


ここまで確認して思った事。うん、本当にただの旅人だ。いや、護身用の武器はもちろん、身分を証明する物すら持っていないから、旅人よりも悪いかもしれん。このままだと開拓村にも領都にも入れないんじゃないか?これは、収納の中を確認する必要があるな。

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