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さてさて、神様にオネダリする時間だぜ。
「それでは異能力について、よろしくお願いします。
先ずは肉体からなんですが、私が気力体力ともに最高潮だった20代の頃の身体を再現していただけますか?
膝や肩の古傷は全て無い健康な状態で、かつ、視力聴力などは人間の身体でできる最高の状態をお与えください。」
俺は小学生の頃からど近眼で、メガネやコンタクトレンズがなければ日常生活が成り立たない状態だった。なので、新しい人生ではメガネいらずで過ごしたかったのだ。
さらに、高校時代にやっていた柔道で肩の肩鎖関節と膝の十字靭帯と膝蓋骨を傷めていて、長距離を歩いたり冷えたりすると痛むのだ。
「承りました。私の世界で何不自由なく過ごせるように、頑強で健康な肉体をお作りします。怪我や病などの様々な状態異常に耐えられ、どんな過酷な環境もものともしない肉体をご用意します。」
「ありがとうございます。では引き続いて幾つかお願いしたい能力があります。
まず一つ目は『神眼』です。私の望む情報を読み取る力、と言いましょうか。
例えば光の無い闇の中でも昼間と同じように周囲を見透かしたり、手に取らずに見ながら意識を向けるだけで食べられる動植物を見分けたり、売買の際に品物の品質を見分けたり、私に害なす獣の弱点を見分けたり、と言う感じです。」
一般的なファンタジー小説では『鑑定』がデフォルトだが、そこからさらに一歩進んだ能力をお願いする。
「良いでしょう。魔法の使えない貴方にとって、掛け替えのない能力だと思います。」
よっしゃ!まずは一つ目の能力ゲット!
「二つ目に欲しい能力は『収納』です。
狩りや採集で得た物を持ち運べるよう、異空間を操ってそこに物品を収納できるようにしていただけませんか?
私が収納したいと思った物は手を触れずとも見ながら念じるだけで収納でき、念じるだけで取り出せるようにして欲しいです。
できれば異空間内は時間を止めていただけるとありがたいです。容量制限、収納物のサイズ制限も無しだと助かります。
もちろん、この大地を収納しろとか、この海の水を全て収納しろ、みたいな無茶はしませんので。
あと、収納した物を一覧で把握できるようにしていただきたいのと、その際に分かりやすいようにフォルダー分けできるようにしていただきたいです。」
これもお約束の能力。ただし、使いやすいようにフォルダー分けできるようにしてもらおう。
「フォルダー分け、ですか?具体的にはどのように?」
ルーテミス様から尋ねられる。
「例えば、武器、防具、野営道具、生鮮食料、加工食料、調理済み食品、宝物、と言ったように、私の任意のフォルダーを作り、該当する物を自動でそのフォルダーに納めるようにしていただきたいのです。
さらに、フォルダー内でも同一の物は同一グループになるように。具体的には、例えば牛肉のブロックが100個あるとしたら、牛肉ブロック、牛肉ブロック、牛肉ブロック・・・と100個並ぶのではなく、牛肉ブロック(100)と言う形で収納され、その中から私が望むだけ取り出せるように、といった感じです。できますよね?」
ルーテミス様にお伺いをたてる。
「そうですね。収納魔法はリアースにも存在する魔法ですので、構わないでしょう。
ただ、収納できるサイズや容量は魔力量に比例するので、貴方の能力のように収納サイズ、容量ともに制限無しと言う力を持った方はいません。
魔道具として存在するマジックバッグも同様に、幾つかのランクがありますが、無制限で収納できるものは存在しません。
また、普通の収納魔法は時間停止はできないのでくれぐれもご注意ください。
マジックバッグも、時間の流れを遅らせる魔法を付与されたものはあっても、停める事が出来る物は存在しませんので。」
よっしゃ!二つ目の能力もゲットだ!良い感じだぞ。
「三つ目は『自動相互翻訳』ですね。リアースで使われているあらゆる言語での会話と読み書きができる能力です。これがなければ生活が成り立ちません。」
これもお約束の能力だ。忘れる所だったわ(笑)。ただし、共通言語だけでなく、会話を行う生物全ての言葉を理解できるようにお願いする。
「はい、それについては問題ありません。貴方がどのような相手でも意思疎通ができるようにいたしますね。」
うし!これで日常生活も万全だ!
「四つ目は転移です。私が目で見て認識できる範囲で構いませんので、自由に瞬間移動できる能力をいただけませんか?
もちろん目で見て認識できる範囲ですので、地球の裏側とか、迷宮の最奥、なんて言う転移はできなくて結構です。」
これは結構厳しいかな?
「うーん、転移魔法は存在しますが、かなり膨大な魔力を使用するため使えるのは一国に数名しかいないんですよね。
それも一度行ったことのある場所で明確にイメージできる所のみ、もしくは魔法陣を用いて予め転移ポイントを設定して、と言う感じなんですが・・・。
でも貴方が目で見渡せてしっかり認識できる範囲、という事なら、よろしいでしょう。」
おし!通った!これで身の安全を確保できるぞ!
「では最後に、これはルーテミス様とアマテラス様の二柱にお願いしなければならないのですが、異世界ショッピング、つまりこの地球にある物を代価を払って入手できるようにしていただきたいのです。
もちろん世界をひっくり返すような、例えば核兵器のような物はいりません。
新しい世界の水や食べ物などに慣れずにお腹を壊したりするかもしれませんので、飲食物や薬品類、日常道具、あとは個人で使用できる範囲の現代武器類などをリアースで使われている通貨や貴金属、宝石などで購入できるようにお願いしたいのですが。」
「それは・・・デミウルゴス様、いかがでしょう?」
ルーテミス様がお伺いを立てる。
「ふむ・・・あくまで個人で使用できる物に限る、という事であれば良いのではないか?本人も核兵器のような法外な物は必要ない、とはっきりと言っておるしの。」
「分かりました。デミウルゴス様のお許しをいただいたので、望みの通り取り計いましょう。
購入方法は貴方の任意のタイミングで異世界ショッピングを起動すればバーチャルコンソールパネルが現れ、そこで購入を希望する物品名や数量を申し込めば購入ができるようにしましょう。
代金と商品の受け渡しは貴方の収納を介する形で良いでしょう。」
やったー!これで快適異世界生活が送れる!さすが神様!
「そうそう、お主に伝えねばならぬ事がある。お主、付喪神を知っておるか?」
突然デミウルゴス様に尋ねられた。
「私が知っているのは、長年大事に使われてきた物品に魂が宿り自我を持つ、と言う物ですが。」
自分の知り得る情報を素直に話す。
「お主の言う通りじゃ。それでのう、お主が死んだ時に身につけていた様々な道具たちが実は付喪神となっておっての。お主の魂と一緒にこちらに来てしまったのじゃ。」
言われて気がついた。首に下げたネックレス類も、腰につけた大型ポーチも、ポッケに入れたナイフも、背中に背負ったバックパックも、みんな身に付けたままだ。
「ああ、それと、自宅にあって身につけていなかった道具の中でも付喪神と化しておった物たちがおっての。そ奴らも収納を利用してこちらに呼び寄せられるようにしておいた。
お主はよほど物持ちが良かったのであろうの。道具を愛し、そして道具に愛される。お主の日頃の行いが起こした奇跡じゃ。異世界でもきっとお主の役に立つであろう。これからも大事にしてやるが良いぞ。」
デミウルゴス様の言葉に涙が出そうになった。