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称号はもうそのまま受け入れることにしよう。伝教者様に色々見られちゃったみたいだし、もうどうにもならないでしょ。鑑定持ちがホイホイいるわけじゃないだろうし、もうケ・セラ・セラ、なるようになれ、だ。
問題は増えた異能力だよ。何かスゲえのが生えてるんだよね。確認するのが怖いけど、確認しないとどうにもならん。ではアイ、宜しくね。
「畏まりましたマスター。新しく授かった異能力を解析します。
治癒
・怪我治療 (ヒール)
・病気治療 (キュアー)
・状態異常回復 (リカバリー)
・体力回復 (エナジー)
・魔力回復 (スピリット)
の5種類の治癒魔法を使用できる。
ランクはS、A、B、Cの4ランク。
使用数はランクごとに異なり、Sは1日5回、Aは1日10回、Bは1日20回、Cは1日40回使用できる。
魔法の種類毎ではなくランク毎の使用数となるので注意が必要。
使用可能数は午前零時を持ってクリアされ、繰り越しはできない。
怪我治療 (ヒール)の効能は以下の通り
・Cはあらゆる外傷を治療できる
・Bは内蔵破裂や骨折などの体内の損傷も治療できる
・Aは外傷的な四肢欠損などの重篤な損傷を治療できる。また、失った血液と体力も回復する。但し、生まれついての欠損や欠損状態で患部の状態が固定してしまった部位については治療できない
・Sは死亡状態にないあらゆる怪我や生まれついての身体欠損、欠損状態で固定された部位を完全に治療できる。また、完全な健康状態まで体力を回復する
病気治療 (キュアー)の効能は以下の通り
・Cは致死性の低い一般的なウイルス性の病気を治療できる
・Bはインフルエンザなどの致死性の高い病気を治療できる
・Aは癌や脳腫瘍などの治療不可能な病気を治療し、体力を回復する
・Sは先天性の遺伝子異常などの病気も完全に治療し、完全な健康状態まで体力を回復する
状態異常回復 (リカバリー)の効能は以下の通り
・Cは毒や麻痺など一般的な状態異常を回復できる
・Bは魅了などの精神的状態異常を回復できる
・Aは呪術による状態異常を回復できる
・Sは石化や魔獣化などを含めたあらゆる状態異常を完全に回復できる
体力回復 (エナジー)の効能は以下の通り
・Cは失われた体力を25%回復し、疲労を回復する
・Bは失われた体力を50%回復し、疲労を回復する
・Aは失われた体力を100%回復し、疲労を回復する
・Sは失われた体力を300%回復し、一時的なドーピング効果を発揮して身体能力を3倍まで倍増させる。但し、使用限度は1日2回まで。それ以上は肉体への負担が大きく、一週間ほど動けなくなる
魔力回復 (スピリット)の効能は以下の通り
・Cは失われた魔力を25%回復し、疲労を回復する
・Bは失われた魔力を50%回復し、疲労を回復する
・Aは失われた魔力を100%回復し、疲労を回復する
・Sは失われた魔力を300%回復し、一時的なドーピング効果を発揮して思考能力と魔法効率を上げ、普段は使えないレベルの魔法も行使できるようになる。但し、使用限度は1日2回まで。それ以上は肉体への負担が大きく、一週間ほど動けなくなる
なお、現在リアースで使用されている魔法はBまでで、それ以上の魔法を使える人物はいない。
・・・・うん、もう何も言えねえ(笑)。
祈祷
女神に伺いをたて、然るべき神託を受ける異能力。
信仰の強さ及び習熟により、より曖昧な伺いに対しても正確な神託が下るようになる。
礼拝所や教会、神殿といった神聖な場所以外でも使用可
女神との直接対話となるため、本人の時間の進み方は1/100になる。周囲の人間には、光に包まれた状態に見える。
命に関わるような緊急時には女神の方からアプローチしてくる場合もある。
ああああああ、何でこんな振り切った異能力ばかり授かるかな。平凡に慎ましく生きていきたいのに・・・・。
いや、これは女神ルーテミス様からの試練なんだと思おう。人の身に余るような異能力を授かってなお、心清く正しく生きれるかどうか、という試練なんだと。そう開き直ってしまえばどうって事は無い。
だって、その時その時に正しいと思う行動を取れば良い話なんだから。もちろん間違う事もあるだろうし、ルーテミス様の意にそぐわない行動を取ることもあるだろう。
それでも俺は俺だし、俺自身の倫理観、正義感に基づいて行動する。それで良いですよね、ルーテミス様?
そうと決めたら早速行動だ。涙を流しながら一心に祈りを捧げる伝教者様の両手を取り、強引にこちらを向かせる。
驚いた顔の伝教者様に告げる。
「伝教者様のおかげで女神様の祝福を得られることが出来ました。どうか伝教者様にも、今まで以上に女神様の祝福があらんことを。」
そう告げて取った右手の甲に口付けを捧げ、頭を垂れてその手に額を付ける。
少しの間そのポーズを保持し顔を上げると、伝教者様は首まで真っ赤になっていた。ありゃ、やりすぎたか。すぐに手を離し、深く頭を垂れる。
「喜びの余り、我を忘れてしまいました。どうかお許しください。」
頭を下げた最敬礼の状態をキープする。暫しそのまま待つと、
「どうぞ頭をお上げください。女神様は喜びや慈しみ、愛といった感情を禁じてはおられません。」
伝教者様が口を開いた。頭を上げて顔を見ると、やはり首まで真っ赤なままだ。俺が口付けた右手を愛おしそうに左手で握っている。俺を見つめる瞳が潤んでいる。
ああ、今日は何でこう煩悩に直撃する女性と触れ合うのだろう。色々と限界が来てしまいそうだ。
「タカ様、と仰いましたね。女神様の祝福を受けられた貴方に、今まで以上の幸があらんことを。そして、私からも、貴方を祝福いたします。どうぞ受け取ってください。」
そう言うと伝教者様は俺に近寄り、そっと俺の上腕を掴んで身を寄せ、左の頬に口付けした。
軽く唇が触れるだけの、本当に軽い口付け。それでも2人にとっては、かけがえの無い触れ合いだった。
俺は思わず伝教者様を抱き締め、頬への口付けを返した。そのままお互いの頬の熱さを、全身の熱さを感じながら抱きしめ合った。
暫しそのまま抱きしめ合い、名残惜しさを残しながらどちらともなく離れた。
最後まで繋いでいた手を離した正にその時ににドアが開き、冒険者たちが入ってきた。心臓が飛び跳ねるように大きな音を立てているのを感じながら、深く頭を下げて出入り口へと向かう。
入ってきた冒険者たちは賽銭箱へお布施を入れ、真っ直ぐに祭壇へ向かってきた。軽く会釈しあってすれ違う。
出入り口に辿り着き、賽銭箱に棒銀貨を2本入れ、振り向いて祭壇の女神像と伝教者様にもう一度深く頭を下げて、礼拝所を後にした。




