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031


食堂の裏から通りに戻り、隣の宿屋に向かって歩く。乗り降りが面倒なのでウォルターを隣に引き連れて歩く。入り口の扉を開け、ウォルターと一緒に中に入る。


「いらっしゃい、ませ・・・。」


カウンターの女性が驚いた顔で固まっている。立ち上がった状態のウォルターを見たら無理もないよね。


「はじめまして。驚かせてすみません。私は猟師のタカ、こっちは私の使役する狼で相棒のウォルター。冒険者ギルドから紹介されてお邪魔しました。


部屋をお願いしたいのですが、ウォルターと一緒に泊まれる部屋はありますか?」


そう言いながらイエルクさんからもらった手紙を渡す。一通り目を通した女性は


「少しお待ちください。」


と言って呼び鈴を鳴らした。少しして掃除道具を持った男性がこちらに来ると、手紙を見せて何やら囁いている。頷いた男性は掃除道具を足元に置き、手紙を手に奥の部屋に向かうと、ノックをして中に入っていった。


少しして先ほどの男性を伴った年配の男性が部屋から出てきた。オーナーかな?


「はじめましてタカ様。私はこの宿屋を管理しているブルックスと言います。どうぞよろしくお願いします。」


右手を差し出してきたので握手を交わし挨拶する。


「わざわざご挨拶いただきありがとうございます。タカと申します。こちらは相棒のウォルターです。よろしくお願いします。


早速ですが、ウォルターと一緒に泊まれる部屋はありますか?無ければ厩舎をお借りしたいのですが。」


そう言うとブルックスさんはちょっと難しい顔をした。


「パーティー用の部屋は何部屋かあるのですが、二段ベッドが設えてあって広さがありません

ウォルターさんが体を伸ばして寝られる場所というと、申し訳ありませんがやはり厩舎くらいしかご用意できません。


それぞれ別々にお泊まりでも構いませんか?」


ブルックスさんに尋ねられたので答える。


「いえ、私もウォルターと一緒に厩舎に泊まります。野宿には慣れていますので。敷き藁だけはお願いします。」


そう言うとブルックスさんは驚いた顔をして言う。


「冒険者ギルドからの紹介でお越しいただいたお客様を、厩舎にお泊めするなど出来ません。


うーん、少しお待ち下さい。使っていない空き部屋を掃除させます。


何もない部屋なのでベッドもありませんが、毛布は何枚かご用意しますので、それでご容赦願えますか?」


良い人だ。もちろん異論はない。


「ありがとうございます。お手間をかけさせて申し訳ありません。少し店などを見て回って、後程また伺います。


手紙に書いてあったと思いますが、二週間ほどお世話になりますのでよろしくお願いします。」


そう言って頭を下げ、一旦宿屋から出る。裏手に回ると井戸と立派な厩舎がある。開拓団の名残なのだろう。船でしか行き来できない辺境に、わざわざ馬を連れてくる人はいないだろうからな。


今は物置も兼ねているのだろう。敷き藁は片付けられ、部屋から撤去されたと思しき二段ベッドが奥に何台も並べられている。


ん?したら、ここのベッドを使えば、何もない部屋で床に毛布を敷いて寝るよりマシじゃねえか?


急いでカウンターに戻りブルックスさんを呼んでもらう。


慌てて来てくれたブルックスさんに、厩舎にある二段ベッドを使わせてもらって厩舎に泊まりたいと言うと、確かにそれは、いやでもあそこはあくまで厩舎なので、と中々うんと言ってくれなかったが、最終的に床に寝るよりベッドで寝たいという俺の要望に折れる形で承諾してくれた。


改めて礼を言い、ウォルターに留守番してもらって礼拝所へ向かう。


礼拝所のドアを開けると、賽銭箱のようなものが置いてある。棒銅貨を1枚収納から取り出して入れる。


女神像を祀った祭壇へ向かうと、扉を開け閉めする音を聞きつけたのか、1人の女性が奥から出てきた。


今年赴任された伝教者様か。


いかにも聖職者、という感じの清楚な女性だ。ヴェールを被り、スレンダーな身体を法衣で包んでいる。


「ようこそ礼拝所へ。神の御子の訪問を心から歓迎します。本日はどの様なご用件でしょうか?」


伝教者様は綺麗に澄んだ声で話しかけてきた。鈴を鳴らす様な綺麗な声だ。


「はじめまして。私は猟師をしているタカと申します。長らく人里ならぬ森の中で暮らしておりましたが、一緒に暮らしていた父を亡くし、森を下ってくるうちに縁あってこの村に辿り着きました。


これも女神様の思し召しと思い、お礼を申し上げたくて伺いました。ですが、初めての礼拝ですので作法が分かりません。教えていただけますでしょうか?」


そう言うと胸の前で手を組み、感動した面持ちをしている。


「まあ、何と素晴らしいことでしょう。貴方の清い心を女神様がお認めくださり、この村へ御導きくださったのですね。

さあ、どうぞこちらへお越しください。共に女神様へ祈りを捧げましょう。」


伝教者様が祭壇の前の一段高くなった所の前へ移動し、手招きをする。招かれるまま隣に向かい、伝教者様と並んで立つ。


「まずはこの段に両膝をついてください。」


伝教者様自ら膝をついて見せてくれたので、隣で同じように膝を下ろす。


「次に、両手を胸の前で組んでください。」


いわゆる乙女ポーズってヤツを見せてくれる。真似をして両手を組む。


「それでは頭を垂れて、心の中で女神様に祈りを捧げてください。」


俺は言われた通りに頭を垂れて、ルーテミス様に祈りを捧げる。


「ルーテミス様、おかげ様で無事に人里に辿り着きました。出会った人たちも良い人ばかりです。ウォルターも問題なく受け入れていただけました。全てルーテミス様のお導きのおかげです。心より感謝申し上げます。」


そう祈りを捧げていると、ふわりと温かいものに包まれたような気がした。まるで幼い頃に母に抱きしめられた時のような温もりだ。


あまりの心地良さにうっとりしているとルーテミス様の声で名を呼ばれた。我に返り顔を上げると、白い部屋にルーテミス様が居た。


「タカさん、道中ご苦労様でした。何か困ったことはありませんか?」


ルーテミス様に笑顔で尋ねられた。


「ルーテミス様の御加護のおかげで、何不自由なく過ごさせていただいております。心より感謝申し上げます。これからもどうぞ私達を御導きください。よろしくお願いいたします。」


深く頭を下げる。


「もちろんですよ。貴方にはこの世界で幸せに過ごす権利があります。どうか貴方の優しさで、貴方と出会った人たちにもその幸せを分けてあげてください。


時には辛い現実と出会う事もあるでしょうが、貴方ならきっと乗り越えられると信じています。」


ルーテミス様に笑顔で告げられる。この先何があるか分からないけど、この眼に映る範囲の人たちは笑顔で居られるように頑張ろう。


「ルーテミス様の仰せのままに。これからも幸せになれるよう努力し続けていきます。」


そう言うとふわりと身体が浮くような感覚が訪れ、光に包まれた。


「タカさん、心優しき転生者よ。貴方の優しさが、多くの人を幸せに導くことを、心より願っています。」


頭の中にルーテミス様の声が響き、包まれていた温もりから解放された。現世に戻ってきたようだ。


下げていた頭を上げ、ふと隣の伝教者様を見ると、両手で口元を押さえ、感極まった表情でポロポロと涙を零している。

えーえーえーえー、俺、何もしてないよ?なんで泣いてるの?


「ああ、女神様の愛し子よ。貴方は今、女神様から祝福を賜ったのです。


女神様、尊い祝福の場に私めを立ち会わせていただき、心より感謝いたします。どうぞこれからも我ら敬虔なる使徒を、その慈愛の光でお導きください。


女神様の祝福を賜った愛し子に大いなる幸があらん事を。」


伝教者様は涙を流しながら熱心に祈りを捧げ始めた。


もしかして、ルーテミス様に導かれた時に身体が光に包まれるってのは、他の人にも見えてるんだろうか?そうじゃなきゃこんな反応しないよね。


これ、もしかして教会関係者にも絡まれるフラグ?などと考えていたら、ピロン、という音とともにステータスボードが浮かび上がる。


「ステータスが変化しました。至急ステータスを確認してください。」


アイの声が聞こえた。ステータスを確認しろって?何が起きたんだ?とりあえず見てみるか。




ステータス


氏名:タカ(本名:富丘貴教・本名は神の加護にて隠蔽中)


種族:人間


性別:男


年齢:14(ただし肉体は23歳当時の状態を再現)


職業

・山屋 (アルパインマスター)

・採取者 (ハーベスター)

・猟師 (ハンター)

・川漁師 (フィッシャーマン)

・ブッシュクラフター

・魔獣使役者 (モンスターテイマー)

※従魔:ウォルター(三ツ角狼)

《・薬師 (ポーションメイカー)》(隠蔽中)

《・治癒師 (ヒーラー)》(隠蔽中)←New!


称号

・転移者(神の加護にて隠蔽中)

・神の愛し子(神の加護にて隠蔽中)

・女神の愛し子←New!

・幸せの伝道者←New!

・森に愛されし者

・川に愛されし者

・魔獣を愛す者


異能力(チート・神の加護にて隠蔽中)

・自動翻訳

・神眼

・収納

・転移

・異世界ショッピング

・ポーション作成

・全状態異常完全無効

・身体強化

・魔獣使役

・治癒←New!

・祈祷←New!


技能 (スキル)

・魔獣使役

・気配察知

・索敵

・隠形

・治療

・徒手格闘

・ナイフ格闘

・射撃

・狙撃

・狩猟

・釣漁

・解体

・料理

・採取



ああああ、また何か生えてる。ルーテミス様、サービス過剰です。


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