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美味そうに内臓に食らいつくウォルターと一緒に、俺も食事をする。


タップリの根菜と肉の切れ端が入った麦粥はよく煮込まれていて、ダシがしっかり出ているので塩だけのシンプルな味付けだが美味しかった。


もともとお茶漬けやおじやが好きなので、大きなスプーンでハフハフと口に運ぶ。うん、美味い。数日ぶりの穀物の美味さに感動する。


汗をかいてきたので金属カップとナルゲンボトルを取り出して、カップを水で満たす。時折り冷たい水を飲みながら熱々の麦粥をどんどん掻き込んでいく。ウォルターはすでに内臓を食べ終えていた。


「ウォルター、脚はどうする?」


「思ったより内臓の量が多かったのでこれで充分です。脚は何かの時のために取っておいてください。」


「ん、分かったよ。水を飲むついでに口の周りを綺麗にするの忘れないでね。」


「はい主。」


そんな会話をしながら食事を進めていると、先ほどの女性が様子を見に来た。


「吠え声一つしないなんてよく躾けて・・・・ちょ、ちょっと、それ、おおかみって」


「あ、はい、狼のウォルターと言います。角が生えた狼なんて珍しいでしょ。僕が生まれた頃から一緒に育てられて来たので、今や大切な家族なんです。」


そう言うと恐る恐る近づいてくる。ウォルターは水を飲んで口を綺麗にし、大人しく伏せている。


「いや、珍しいでしょ、って、それ、魔獣・・・・。で、でも、これだけ懐いてるんなら・・・・。あ、あのさ、触っても大丈夫かな?噛みついたりしない?」


ウォルターのモフモフが気になるようだ。うん、モフモフと可愛いは正義だね(笑)。


「もちろん大丈夫ですよ。良かったら撫でてやってください。

ウォルター、お嬢さんがウォルターに触ってみたいんだって。良いよね?」


と声をかけて目配せすると、ウォルターも心得たように


「ウォン」


と声を出して返事をして、女性の方に向き直るとコロンと横になって腹を見せた。サービス良いなおい(笑)。そろそろと近づいてきた女性は恐る恐る手を伸ばし、ウォルターのお腹に触れる。


「・・・・ふわああぁぁぁぁ。」


恍惚の表情で吸い込まれるようにウォルターに抱きついていく。全身でモフモフを堪能している。人をダメにする魔獣ウォルター、なんて恐ろしい子(笑)。


ウォルターのモフモフに埋もれて存分に楽しんだ女性は、頬を染めながら身体を起こした。


「はああぁぁぁぁぁ、幸せ・・・・。」


女の子座りでウットリとした表情で両手を頬に当て、目を潤ませている。そんな表情を見せられたら、思わず変な気を起こしてしまいそうだ。


「ん、んんっ!」


ワザとらしく咳払いすると女性は我に返ったようで、恥ずかしそうにさらに頬を赤らめ立ち上がる。いや色っぺーなおい!くそ、青年の主張が来てしまいそうだ。


「ご、ごめんね。こんな綺麗でフワフワな毛並みの狼に触れたの初めてで、しかも全身で抱きつけるなんて思ってもいなくて、思わず夢中になっちゃった。」


恥ずかしそうに身をくねらせる。食堂の元気なお姉さんが、むやみに色っぽいお姉さんに早変わり。待って、それ以上は本当にヤヴァいから。


「存分に楽しんでいただけたようでなによりです。ウォルターもありがとうね。」


「ウォン」


座り直したウォルターは一吠えして大きく尻尾を振る。


「ありがとうウォルター。また撫で撫でさせてね。」


女性はそう言うとウォルターの頭を抱きしめて頬擦りする。ウォルターもサービスで女性の頬を一舐めする。美少女と大きな狼、絵になるなぁ。


女性はウォルターの頭をもう一撫でしてようやく離れた。


「ありがとう。すっごく気持ち良かった。ねえ、毎日ご飯食べに来るでしょ?他にお客さんがいなかったら、またウォルターに触らせてもらってもいいかな?」


モジモジと身体の前で組んだ指を弄りながら上目遣いで尋ねられる。自然にやっているのだろうけど、これはズルいだろう。そんな表情で見つめられたら、ダメと言える男はいないって。


「うーん、俺じゃなくてウォルター次第だね。ウォルター、こちらのお嬢さんがまた触らせて欲しいって。どうする?」


ウォルターに声をかけると立ち上がり、女性に近づいて頬を一舐めする。


「良いってさ。良かったね。」


そう声をかけるとまたウォルターに抱きつく。


「嬉しい!ありがとうウォルター!」


ウォルターも女性にスリスリしている。案外人好きなんだなこの子。


「私、そろそろ仕事に戻るね。食べ終わったら食器はカウンターに戻してね。裏に井戸があるから盥はそこで洗って。洗い水は排水口に流してね。それじゃ!」


女性はスキップをするように弾みながら、ルンルンと鼻歌を口ずさみつつ戻っていった。ポニーテールが大きく揺れている。相当ご機嫌のようだ。


「ウォルター、随分サービス良かったね。嫌じゃなかった?」


「はい、主。たまには主以外の人間と触れ合うのも悪くないです。」


こちらもご機嫌に尻尾を振っている。ウォルターモフり3分10銅貨なんて商売をやったらぼろ儲け出来そうな気がする(笑)。


少し冷めて食べやすい温度になった麦粥を食べ尽くし、水を飲み干して出した物を収納にしまって、食べ終えた食器をカウンターに下げに行く。


「ごちそうさまでした。美味しかったです。二週間ほど滞在の予定ですのでよろしくお願いします。」


そう言って皆さんに頭を下げる。口々によろしくね、またおいで、と返事をしてくれる。俺は手を振ってカウンターから離れる。


盥を収納し、トイレを借りてから食堂を出て裏へ回る。大きな井戸と木製のスノコが掛かった排水口がある。盥を洗う前にちょっと試してみたいことがあるので実行してみる。排水口の上で


「盥の汚れだけを取り出し」


と頭で念じてみると、僅かな液体がシュン、と現れて排水口に落ちた。思った通りだ。これで楽ができるな。


これ、うまく応用すれば、獲った獲物の血抜きとか解体とかも出来るだろう。とは言え、血抜きはともかく解体は内臓を抜くのと皮を剥ぐしか出来ないか。そこはちゃんとギルドを利用したほうが良いな。


あ、銃の中に溜まった火薬のススなどの汚れ落としもこれで出来るな。他にも何かできないか、考えてみよう。さて、次は宿屋だ。


ポイント評価、感想お待ちしております。どうぞよろしくお願いします。

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