002
不意に闇が消え明るくなった。
目の前には白い服を着た人物が2人土下座をしており、その背後に苦虫を噛み潰したような表情をした白髪の老人が立っていた。
立派なヒゲを生やしている。身長は180くらいでほっそりとした体型だ。
「あの、これは一体どういう状況でしょうか?」
俺は思わず3人に声をかけた。
「申し訳ありません」
土下座をしているうちの向かって左側の人物が声を上げた。どうやら女のようだ。
「私達のせいで、貴方はお亡くなりになってしまいました。」
こちらも女の声だった。土下座をしているうちの向かって右側の人物のようだ。
「は?え、えーと、すいません、もう少し具体的かつ分かりやすく説明していただけませんか?てか、俺、死んだの?マジで?」
「うむ、マジじゃ。すまんのう、此奴らのせいで。儂からも詫びを致す。どうか受け入れてもらえぬか。」
突然の話に軽くパニクる。なんなのこのラノベみたいな展開。
俺はそこそこなオタクでファンタジー小説などが好きで、アラフィフになった今でもネット小説の異世界転生ものなどを好んで読んでいた。
小説を読みながらこんな風に異世界で暮らしてみたいなぁ、などと妄想したことも一度や二度ではない。
だがしかし、それはあくまで小説であり、実際にはありえない夢物語。妻と3人の息子たちと一緒に、平凡で慎ましくも幸せな人生を送るはずだったのだ。
それなのに突然告げられた俺の死。これで落ち着いていられるはずがない。
「分かりました。あらためてお願いします。この状況を、具体的に分かりやすく説明してください。」
俺は再度3人に話しかけた。
「うむ、勿論じゃ。儂から説明させてもらおう。儂は至高神デミウルゴス。全宇宙を統べる神じゃ。」
おいおいとんでもない大御所じゃん。なんでこんな大物が俺の目の前に顕現してるわけ?何が起こったんだ?
「今、お主の目の前で土下座しているのは、お主の暮らす世界を管理する神であるアマテラスと、リアースと言う世界を管理する神であるルーテミスじゃ。2人とも、面をあげよ。」
デミウルゴス様がそう言うと、2人がおずおずと顔を上げた。
長い黒髪で細面で美しい顔をした女性がアマテラス様なのだろう。今にも泣き出しそうに目を潤ませている。
長い金髪で、いかにも西洋の女神様らしいのがルーテミス様か。ギリシャ神話に出てくる神様みたいだな。
「デミウルゴス様、アマテラス様、ルーテミス様ですね。はじめまして。私は富丘貴教と申します。どうぞよろしくお願いします。」
俺がそう言うと、3人、いや、この場合は三柱と言うべきか。三柱の神様達は驚いた顔をした。
「このような状況にありながら、丁寧に挨拶をされるとは思わなんだ。お主は大物じゃのう。」
デミウルゴス様が微笑みながら言った。そりゃアラフィフだもの。それなりの振る舞い方は身につけてるさ。
「先ずはあらためて告げよう。お主は死んでしもうた。それも、此奴らのせいでのう。」
しかめっ面で、正座をする二柱の神を睨みつけながら言う。
「アマテラスとルーテミスは、ちょくちょく二柱で酒を酌み交わしておったのだ。それぞれの世界で作られた酒とツマミを持ち寄ってのう。」
「はあ。それと私が死んだのと何の関係があるのでしょう?」
俺は思わず問いかけた。だっておかしいだろう。神様同士で女子会を開いたからって、なんで俺が死ぬハメになるんだ?
「お主、ここに来る前のことは覚えておるか?」
デミウルゴス様が聞いてくる。
「はい。バイクで出かけようと準備をしていたら、突然空が割れて漆黒の闇が溢れ、その闇に飲み込まれました。」
俺は素直にその時の状況を話した。
「うむ、その通りじゃ。実はのう。空が割れ、闇が溢れ出したのは、此奴らのせいなのじゃよ。」




