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012


ふわり、と緑の薫る優しい風に包まれて目が覚めた。


グッスリと寝たおかげで気分は爽快だ。


周りを見ると朝靄に包まれている。まだ陽は昇ってはいないが、徐々に明るくなりつつあるところだった。


収納から大きいカップとカトラリー、パンの食料袋、スティックコーヒーを取り出す。


焚き火の残り火をかき混ぜてから薪を足して火を熾す。


大きいカップに水を注ぎ、火にかける。


靴下と靴を履き、小さいカップにも水を注ぎ、口を濯ぎながら便所に向かう。


2度口を濯ぎ、便所に吐き出す。


残った水を一息に飲み干し、大小の用を足す。


土をかけ、洞穴に戻ると湯が沸いていたので、小さいカップにスティックコーヒーを二本入れお湯を注ぐ。


スプーンでよくかき混ぜながら香りを楽しむ。


パンをカットし、コーヒーを啜りながら空が明るくなっていくのを眺める。


俺はこの時間が好きだ。


キャンプの時も、まだ薄暗い朝靄の中でガソリンストーブの燃焼音を聞きながらパーコレーターでコーヒーを淹れ、空の色が変わっていくのを眺めながらコーヒーを啜ったもんだ。


カットしたパンを齧りながら空が明るくなっていく様を眺める。


パンを半分食べたところで満足し、残ったパンを食料袋にしまいコーヒーを飲み干す。


大きいカップに残ったお湯でコーヒーを飲んだスプーンとカップを濯ぎ、トイレットペーパーで拭き取る。


ペーパーを焚き火に放り込んで燃やし、出してある荷物を一旦全て収納にしまう。


新たに収納からスコップを取り出し、焚き火の燃え残りを細かく砕いて土をかけ埋める。


外に出て便所で小用を足し、綺麗に埋める。


スコップを収納に戻し、レッグホルスターセットを取り出してガンベルトを腰に巻く。


レッグホルスターを太腿に固定して位置を微調整して、何度か銃を抜き差しして確認する。


レミントンM870MCSブリーチャーを取り出してスリングを襷にかけ、右脇に提げる。


薪はこのまま置いておく事にする。もし可能ならまたここに来たい、と思ったからだ。


大木に手を当てて見上げながら


「世話になった。ありがとう。」


と言葉に出して例を言うと、ザワザワと梢が揺れた。まるで返事をしてくれたようだ。


温かい気持ちになりながら、川下の方角へ歩き出した。


昨日と同じく、稜線を下りながら一時間ほど歩いては二十分ほどの休憩を取る。


休憩の度に食べやすい大きさに干し肉を削り、歩きながら削った干し肉を齧る。


森の恵みは今日も豊作だ。無理しないで手の届く範囲で採取する。


昼飯は省略して歩き続け、9回目の休憩で野営にする。


今日は大木の根が絡み合って出来た窪みの様な場所だ。あまり広くはないが、よしかかって足を延ばすスペースくらいはある。


木の根を傷めそうな気がするので、焚き火はせずにエスビットポケットストーブを使って大きいカップで湯を沸かし、多めに削った干し肉とカップスープ(オニオンコンソメ)を入れる。


グツグツという音を聞きながら、朝飯で食い残したパンを切り、スープに浸して口に放り込む。


フォークで干し肉をつつくと食べ頃の柔らかさに戻っていたので、肉を口に入れ、パンを齧る。


多めに削った干し肉のおかげで、半分のパンで満足した。


収納からスコップを取り出し、ちょっと離れた所に穴を掘って便所にし、トイレットペーパーを取り出して大小の用を足す。


使用済みペーパーを燃やして土をかけ、トイレットペーパーとスコップを収納に戻す。


戻りながら落ちている小枝を拾う。


寝床に戻って拾った小枝を細かく折り、ポケットストーブに入れてファイヤースタッシュで火を点ける。固形燃料の節約のためだ。


スープを作ったカップに水とスプーン、フォークを入れ、よくかき混ぜて火にかける。


沸騰したらさらによくかき混ぜて汚れを落とし、お湯を便所に捨てに行く。


トイレットペーパーで拭き取り、収納にしまう。


まだ火が残っているポケットストーブに使用済みペーパーを入れて燃やす。


今日は潜り込める様なスペースがないので、靴を履いたまま毛布にくるまって寝ることにする。木の根によしかかるので、装備も外さずそのままだ。


収納から小さいカップとワインの水筒を取り出し一杯だけ飲む。


火が燃え尽きたのでポケットストーブとカップ、水筒を収納する。毛布に包まり目を瞑ると、何処からか声が聞こえた。


「安心してお休み。心優しき旅人よ。」


昨日とは違う、だが昨日と同じようにとても優しい声だった。


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