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さざ波立つ湖の波打ち際まで歩く。砂地なのでまるで海のようだ。
手を水に浸し、冷たい感触を楽しむ。
神眼で鑑定すると飲用可、煮沸の必要無しと表示されたので、リュックを下ろしてカップと一緒に干し肉とパンの食料袋を取り出す。
リベットで取手が付けられている金属製の大小のカップだ。大きい方はビッグタイプのカップヌードルの容器くらい、小さい方はマグカップ程の大きさだ。重ねられており、布で巻いたカトラリーが重ねた隙間に入っていた。
大きい方のカップで水を汲み、軽く濯いでからもう一度汲み直す。
収納の異世界EDCギアフォルダーに保管されている道具の中から、エスビットポケットストーブとハイマウントファイヤースタッシュと言う小型のオイルライター、カップスープ(オニオンコンソメ)を取り出す。
エスビットは本来固形燃料の事で、その固形燃料を収納する金属製の収納ケース兼簡易五徳がポケットストーブなのだが、一般的にはエスビットイコールポケットストーブと認識されている。
このポケットストーブに百円ショップの固形燃料を入れ、メスティンと言う飯盒(そもそも製作元のスイスでは米を炊く事はしないが、野外で煮炊きする道具のため便宜的に飯盒と呼ぶ)を使っての炊飯がアウトドアズマンの中で流行っていたりする。
五徳状に展開したポケットストーブにパッケージから出したエスビットを入れ、ライターで火を点けるとカップを乗せる。
揺らめく火を眺めながら食料袋を開け、中から干し肉の塊を取り出して鬼神-Daemone (Large)-で削り、カップの中に入れていく。
十欠けほどカップに入れて残りの干し肉を食料袋に戻してリュックにしまい、オニオンコンソメのカップスープを一袋カップに入れる。
徐々に湯気が立ち始め、ポコポコと湯が沸く音が鳴り始める。
スプーンでかき混ぜながら干し肉の様子を見て、充分に柔らかく戻ったところで革手袋をはめ火から下ろす。
パンの食料袋からパンを一つ取り出し、食料袋をリュックにしまう。
スープをスプーンで掬い味を見る。コンソメスープと干し肉の塩味が合わさってちょうど良い塩加減になっているし、干し肉のダシも出てなかなかに美味しい。
取り出したパンはみっちりと詰まった固い黒パンで、ドイツの黒パンのような感じか。
食べやすいように適当にカットし、軽くスープに浸して口の中へ放り込む。
スープに浸してもなおしっかりとした歯ごたえ。顎が疲れそうだ(笑)。
パンを切ってはスープに浸し、時にはスープで煮込んだ干し肉を一緒に口にする。
温かい食べ物はそれだけで力を与えてくれる感じがする。
みっちりと詰まった生地のパンは見た目を大きく上回るボリュームだったので、パンを食べ終え、スープを飲み干す頃には腹がキツくなってしまった。
空になったカップを濯ぎ、洗ったスプーンと共にリュックにしまうと、♫ピロリン♫と言う電子音が頭の中で鳴った。
収納の異世界EDCグッズのフォルダーが光りながら点滅を繰り返している。フォルダーを開くように意識すると、
・M45(サプレッサー付き)
・M45スペアマガジン(10)
・.45ACP FMJ(500)
・レッグホルスターセット
・M870ブリーチャー(SWATスリング付き)
・3インチマグナムスラッグ(200)
・バックショットOOOバック(200)
・バードショットF(200)
と言う表示があった。すぐに「HG」「SMG」「SG」「AR」と新しいフォルダーを作成し、一旦振り分ける。
M870ブリーチャーは本体にショットシェルを詰めるだけなので、まずはこいつからだな。
収納から銃本体とバードショットFを一箱取り出す。
銃の下部にあるローディングポートにシャキ、シャキ、シャキ、シャキ、と4発込めるとスリングを襷にかけて胸の前に吊る。あ、ダメだ、銃口が首の横に来て怖いわ。とりあえずリュックに乗せる。
余った弾を箱ごと収納し、M45とスペアマガジン、.45ACPの弾の箱を取り出す。
M45に装填されているマガジンを抜くと空っぽだったので、パチパチと弾を込めていく。
フルロードされたマガジンをM45に装填し、ブリーチャーの隣に乗せる。残りのマガジンにどんどん弾を込め並べていく。
全てのマガジンに弾を込め終えたので、レッグホルスターセットを取り出す。
ピストルベルトにレッグホルスター、マガジンポーチ、ダンプポーチがセットされている。
マガジンポーチは大型の物で中にゴムバンドが縫い付けられていて、拳銃のマガジンなら6本、ライフル用なら2本入るようだ。
抜いた後スムーズにマガジンチェンジ出来るように、向きを揃えてマガジンを収め、残りのマガジンと弾を収納へ戻す。
ガンベルトを腰に巻き、ホルスターとポーチの位置を調整する。
昔、ジャパンビアンキカップと言うトイガンのシューティングマッチに出場した経験が活きてくる。
位置を決め終えたら銃を収める。両手を自然に下げた状態からグリップを握り銃を抜く動作を何度か繰り返す。何度か繰り返して位置を微調整する。久しぶりの感覚に気分が上がる。銃は良いねぇ。
ふと気づくと少し離れた所に大きな兎が水を飲みに来ていた。神眼で鑑定すると野兎で害はないようだ。今は食料に困ってないし、見逃してやることにする。
レッグホルスターのせいでブラックククリを右腿に着けれないので、ガンベルトの左腰に火涼天翠を装着し、スリングを襷にかけてブリーチャーを右脇に吊るすと、収納に新たに「日用品」のフォルダーを作ってリュックを収納し、川に向かって歩き出した。