世界一の花
内戦の続くアフリカの一国でカメラマンが蘭を撮影した。ネットにアップすると、その類稀な美しさから、世界一の花とまで評された。しかし、カメラマンはこの蘭の不思議な伝説を聞く事になった。
それに因れば、小国は古代には王と称する者が割拠していた。その中に由緒正しい女王は戦いを嫌って山へ逃れた。幸いな事に山中には果物が数多であった。民は果物のみを食し、それに飽き足らず肉食を望む者は争いの巷へと戻った。戦いを好まぬ民だけが、ひっそりと生き続けた。やがて果物を食べ尽くし国は衰退していった。蘭の育つ土は、その果物の排泄の堆積であった。戦いを好まず果物のみを食した人から生じた故、花は類稀な美しさをもったのであろうと。