赤い糸
どこから話せばいいだろう・・・?私は今諦めの中キーボードを叩いている。
私には、他の人には見えないモノが見える。と言っても幽霊だとかオーラだとか言ったものではない。
私に見えるのは、その人から伸びる赤い糸だ。
物心ついたころには既に見えていた。子供のころは糸が見えるなんて言ってよく周りの大人たちを困らせていた。私も何で周りの人達は見えないのだろう?と不思議がっていた。
よく『運命の赤い糸』なんて呼ばれるものがある。男女の小指と小指に赤い糸が・・・なんて物もある。私から見えるのもそんな物なのだろうかと子供のころはよく考えもしないでときめいていた。
でもどんどん大きくなるにつれ、物事が理解できるようになってくるとこの『赤い糸』はそんなときめくようなものではないことが分かってきた。その『赤い糸』が出ている人を観察し続けた結果。それが見えた人には近いうちに怪我や病気をするということだ。
私はその『赤い糸』を観察し続けた。その糸の太さによって怪我の状態も大きく変わることが分かった。見えるか見えないか位に細い糸なら大した怪我にはならない。しかしそれが太く赤く見えるほど重症に、骨折やはたまた切断されるなんて重症もあった。またその糸が、体のどの部分から伸びているのかも観察してみた。腕や足なら擦過傷や骨折、胴から伸びていれば内臓系の疾患、頭から真っ赤な太い糸が伸びている人を見つけたときはその人は脳梗塞で倒れたりなんてこともあった。
糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、糸、太く血が固まったかのようなどす黒い色をした糸が全身に伸びている人を見かけたときは、一気に全身に鳥肌が立った。その人は結局交通事故で亡くなってしまった。
私は、こんな恐ろしいものが見えてしまう事に心底嫌気がさした。なぜ自分だけそんなモノが見えてしまうのか、こんな目を潰してしまおうかとも思ったことがあった。幾ら人に伝えたかと言って大体に人は気味悪がられてしまうだけだからだ。
しかしそんな『赤い糸』だが、対処法を見つけることが出来た。自分にだけ見えるその何気ない糸を手刀のように振るだけで切ることが出来たのだ。そしてその切った相手は怪我や病気になることはなかった。これを見つけた時私は、これで皆を救うことが出来る!と舞い上がっていた。だけどよく考えてほしい。自分の周りに手刀で手を振り回す人間いたらどうだろうか?気味が悪いだけでしかない。私の周りには更に孤独が広がっていった。
そしてそんな『赤い糸』も太さによっては手で切ることが出来ないものもあった。そんな時にはこっそりハサミやナイフで切るようにしていた。勿論私には、刃物を振り回す危ない人間と言うレッテルが張られ、仕舞いには警察を呼ばれるくらいになってしまった。そんな事態に両親からは見放され、私の味方は子供のころからの友人ただ1人になってしまった。
そんな中1人でそんな『赤い糸』を切るべく霊媒師の真似事をするようになった。そんな『赤い糸』が伸びている人を見かけては、話をしその糸を切り相談料と言う形で報酬を得るのだ。そんな胡散臭い仕事もそこそこ人が相談に来るようになってきた矢先のことである。そのたった1人の友人が訪ねてきたのだ。それも固まった血のような太い糸を体に巻き付けて。
私はそんな友人を助けるべく、その糸をなんとか切ろうとした。自分の持っていたハサミやナイフでは歯が立たず、鉈を持ってきて何度も何度も叩き付けるようしてようやく切断することが出来た。友人にはかなり怖がられてしまったが、助けるためには何としても切らなければならなかったのだ。
そんな事を続けていたせいだろうか。それとも友人のその糸を切ってしまったからだろうか。みえてしまったのだ。自分にも今まで見たこともないどす黒くそして糸と言うか縄のようなモノが体に巻き付いているということを。
まるで何かに引っ張られているような感覚すらあるこの『赤い糸』をどうにかしなければと思いまず一人暮らしをしている自分の家に戻った。こんなこともあるかもしれないと自分でも準備していたのだ。部屋の彼方此方にお札を張り、玄関には鍵とチェーンそしてガムテープでガチガチにして開かないようにした。そうしている間にその友人の糸を切った鉈を持ってきていた。
切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切る、切るっ!
・・・手がしびれてきた。切れるどころか傷一つ入らない。思いついた、糸なのだ燃やしてしまえばいい。玄関前のキッチンのガスコンロにその糸を乗せて燃やしてみた。その火を見つめ続ける。
燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろっ!
・・・燃えるどころか焦げ付いた様子すらない。どうしようと途方に暮れていた時に事である。いきなり自分が引っ張られる感覚があった。もう何かが近くまで来ているのだ。
急ぎ玄関から離れるといきなり玄関の扉にドンどいう叩く音が聞こえてきた。何度も何度も叩いている。ドアノブもガチャガチャと回っている。お札のおかげだろうか?どうやら入れないようだ。等とこのまま居られれば諦めるのでは?と思っていた時である。突如大きな地震のような揺れが起こったのだ。立っていられないほどの揺れ。それでも信じられないのが、家具やカーテンは一切揺れていないということだ。そして段々あちこちに張っていたお札が変色し始めてきた。この時点で私は何かを悟ってしまい何かを残しておきたくてPCを立ち上げているのだった。
あぁどんどん揺れが酷くなっていく。お札も最早何が書かれていたのかわからない位に変色してしまっている。何時までこの揺れは続くのだろう。この揺れが収まった時どうなってしまうのだろう。未だに諦めきれずに鉈を振っている。切れる様子はない。
あ、揺れが収まった。今ガチャリと鍵が回った。チェーンもついているはずなのにバリバリとガムテープが剥がれながら玄関の扉が開く音がする。一気に部屋の中の温度が下がった。全身に鳥肌が立つ。キーボードから後ろを振り向けない。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
視界の隅に色々な太さの『赤い糸』が見える。こいつだ。今までのこと全てこいつの仕業だったのだ。ということはそれを切って邪魔してきた自分は・・・?
こいつはどうやっても自分を見逃すつもりはないらしい。新たに『赤い糸』が巻き付いてきた。もう何かがすぐ後ろまで来ている。
助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ、助けてくれ、助けてください、お願いします。助けてください。お願いします。助けてください。助けてください。
体に巻き付いている糸がどんどん締め上げてきているのが分かる。もうキーボードも打てなくなる。誰かこの糸をk
『ごちそうさま』