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8 謝っても受け入れられるとは限らない

 明日は8月1日、2か月の夏宮滞在を終えて国王陛下がお戻りになる。

俺の誕生日7月1日はいつの間にか過ぎているので俺は4才。

なにしてたんだろうな?


 家臣の大部分はもう王宮に入り仕事を始めて忙しそうにうろうろしている。

この城壁の上から見下ろすと例年だとただ人が入り混じって右往左往しているだけだが今年は少し違う。

居残り組と夏宮組の区別がはっきりつくのだ。

居残り組は小さな花をつけている。

女性は髪に、男性は襟元に。

恋人同士や夫婦は同じ花をつける、とか。

俺が流行らせた。

俺が作った。

全くお金にはならなかった。

王子様が家臣からお金を取るわけにはいかないじゃないか。


「よぅ、マリス。明日はご両親が帰ってくるんだってな。待ち遠しくって今からここで見てるのかい?」


馬に乗ったワルターさんが下から声をかけてきた。


「ワルターさん、おはようございます。なんとなく落ち着かなくってです」

「早く甘えんぼできたらいいな。そうそう、今月の30日は絶対空けとけよマリスとサリーが居なくちゃ始まらんからな」

「わかってます」

「じゃぁよろしくっ。またな」

「いってらっしゃい」



 全部マリスが悪い、俺は嵌められた。

まったく、とワルターは馬上でため息をつく。

自分としてはまだまだ面白楽しく生きるつもりだったのだがそうもいかなくなった。

あの日またマリスは自分たちの訓練を見にきて頼まれてたものだと言って木箱を置いていった。

俺は何も頼んだ記憶がなかったのだが一緒にいたポルターが大喜びで受け取ったので俺も何気なく受け取り開けてみた。

中には花で飾り付けた上品な髪飾り、これは貴族の正装でも使えそうだ。

そして普段使い用か、ピンクの花びらで蝶を模した髪飾り、清楚な愛らしさが何とも言えない。

しかし明らかに女性が身につけるものをなんで俺に?

それと、ん?

髪飾りと同じピンクの花びらが一枚付いたこれはいったい……説明書き。

ほう、これは男物の襟飾りで二つの髪飾りはプレゼント用。

気が利くじゃないか、どの娘にあげようか。


「ワルター」


 悩んでいたらポルターに肩をたたかれた。


「私はこれをティナに贈るつもりですが、意匠と色が多少違うとはいえ似た髪飾りを怪しげな店の女なんぞに付けさせるはずがないですよね」


 おぃ、ティナさんと同格の相手、ミランダさんなら……。


「ディーンはミランダさんにもう手渡してましたよ」


 えっ、ディーンの癖に素早い。



 迷いに迷った挙句、手元に残しておくのも作ってくれたマリスに悪いってことで、レイナに渡した。

レイナはいぶかしげに箱を開けて目を見張る。

中に入ってた説明書きを読んで、なんだよその驚いた顔。

見事だろ、すげぇだろ、こんないいものもらったことないだろ。

けど、そんなびっくりすることないだろ。

てっきり、いつもみたいに かわいそうだから一応受け取ってあげるわ なんて言われるかと思って見ていたら。

おぃ!、どうした⁉ 気分でも悪くあったのってどこへ行くんだ?

わからん。

何がどうなった。


 次の日王宮へ行くと向こうからあの3人組 花の髪飾りを付けているのは2人だけ。

挨拶すると3人の視線が俺の胸に、あの襟飾りはつけているが。

レイアがいきなり俺を見て顔を両手で押さえて逃げて行った。

なぜだ。


「おはようございます」

「おはようございます」

「あ、あぁ」


 なぜ逃げる。

ミランダさんたちは意味ありげな顔


 その日は一日周りから妙な視線を感じた。

何が起きてるんだ。

夏至でもないのにおめでとうございますってなんだ?

こういう時、状況を説明できるのはポルター、くそっ、あいつは今日は夏宮街道の巡検か。


 翌朝、も周りの雰囲気がおかしい。

ダイノス将軍にまで 君は人を見る目はある とか 人生に失敗はつきものだ などと奇妙な訓示を受ける。

疑問が氷解したのはその日のお昼、いつもの食堂。


「ポルターさん、あんたダイノス将軍の姪御さんに自分の付けてる花を贈ったんだって?」

「え⁉」


 自分の付けてる花など女に贈ったことなどない、そんなプロポーズみたいなことをするわけがないじゃないか。

おばちゃんは、俺が姪御さんってのが分からないと思ったらしい。


「やだねぇ。レイナちゃんって閣下の姪御さんだよ? 知らなかったのかい? やっぱりあんたはやるねぇ、さりげなく花びらを襟飾りにしてずっと付けてるなんてねぇ」


 俺がレイナに処分したのは髪飾り、ってあれ花かぁ!

俺を罠に嵌めたのは誰だ。

マリス……まだお子様だろう。

そうだ、ポルターに違いない。

結論が出た時、後ろから肩をたたかれた。

ディーンだ。


「あの髪飾り、もう使ったのか。ポルターがびっくりしてたぞ。他にワルターさんにお礼できるものがないからってマリス君が作ったらしいけどまさかレイナさんに……おぃ、血相変えてどこ行く?」


 レイナもレイナだ、受け取った時におかしいって気づけよ。

しかしあれでも年ごろの娘だからな、変な噂でも経ったらかわいそうだ。

ここはスパッとみんなの前で俺が振られる。

これしかないだろう。


この時間レイナはこの広場を取るはずだ。

……来たっ!


「レイナ、この前の髪飾りだけど……」

「はい」


 あの大きい方の髪飾り、何か言う前にいきなり渡されてしまった。

それはそれでいい……のか?


「いろいろ考えてみました」

「あ、あぁ」

「それでですね、これはワルターさんに付けてもらった方がいいかなって」


 真っ赤に頬を染めて俯くレイナ。

おぃ、これって逃げ場ねぇだろ!

人生が走馬灯のように走る。

終わった。

手に持った髪飾りを、震えるな俺の手、何とかレイナの髪に挿す。

やっちまった。

この後は当然あれやらなくっちゃなんだろうな。

ん~~~なぜこんなに緊張してんだ。

ちょっと上を向かせて、こいつこんなにかわいかったっけ。

ここで逃げたら敵前逃亡罪で死刑だよな。


チュッ


 この時間この場所、非常に人通りが多い。

その動きがすべて止まっているのが気配でわかる。

ポルターは抱き上げて走ったんだっけ、それならここから逃げ出せる。


「行くぞっ」

「えっ?」


 マリスやポルターに貸しができたと思ったが、大きな借りだったみたいだ。

こいつこうやって近くで見ると本当にかわいい。 


 いきなり侍女を連れだした件で俺もトイレ掃除だ。

クッソコノヤロ。







この世界では一年の最初の日、1月1日は冬至の日と定められている。

春分は4月1日、秋分は10月1日、そして7月1日は夏至の日。

ひと月は30日だが1年は約365日なので、調整としてうるう日のように12、3,9,6月の末日に追加の日が入る。

だから6月32日なんて日もある。

ここは地球などではないのだ。

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