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37 私の王子

カンカンカン!

カンカンカン!

打ち鳴らされる半鐘。

あわただしくなる宮殿。

冬宮のほうから順に立ち上る狼煙が今夏宮に届いた。


 町を守る城壁の門、それらが閉め終わる前に彼方から砂ぼこり。

騎馬の一団が緊急の旗、黄色と黒のチェックの旗を掲げて疾走してくる。

疾いっ!

魔法で加速しているらしいその一団は人影が消える門前の大通りをかけぬけ下馬せずそのまま宮殿の大広間へ突っ込む。

倒れこむ馬と騎士たち。

それらに治療兵が駆け寄るのを見もせずディーンとユリシアは王がいると案内された部屋へ駆け込んだ。

この警報が出ている時のみはたとえ王が王妃と同衾してようと急使はそのそばまで入ることができるのだ。


「マレリウス殿下の左腕が発見されました!」


 静まり返る室内。

いや最初から物音ひとつなかったその場所。

国王がうずくまる老婆を抱きしめて泣いていた。


 その異様さに急使として来たものの思考が止まり声の出ないディーン。

しかしユリシアはこのような場面とまだ消えていない魔法の残渣に記憶があった。

天罰だ。

神に誓った契約を破った時の天罰だ。

マーリン様と……同じだ。

また自分には何もできない。


「マレリウス、マレリウス……」


華やかかつ上品だがブカブカになったドレスを着た老婆の小さなつぶやきだけが大きく聞こえている。



「それがマレリウスの左腕か」


王に真っ赤に充血した目で見つめられ、ディーンはかすかに頭を下げることしかできない。

そして別の声が響く。

ディーンたちが開け放ったままのドア、その外側から大声で報告した兵士。


「陛下、マレリウス殿下の処刑は定刻に執行され、死体はもう処分されておりました」


ずっと顔を伏せているその兵士にとって何も見ていないというのはたいそう幸運なことだった。


「左腕だけになってしまったのか」


 王はディーンから箱を取りあげ凍った左腕を王妃に抱かせた。

王妃を横抱きにして家臣たちが頭を下げる廊下を歩む。


 王妃の寝台。

大きさはあるが意外と質素な寝台に王妃を横たえると国王は崩れ落ちた。


 ザワザワ。


 何が起きたのか、何が起こっているのかさっぱりわからない王宮のざわめきは王妃の父ユスラエル公爵の到着によってようやく落ち着きを取り戻した。


 夜、王は腕の中の王妃かすかに声を出したのを聞いたと思った。

マレリウス。

私のマレリウス。

私の命をあなたに。






 翌朝、王妃の喪が発せられた。

他国からも沢山の弔問者を招いた荘厳な葬儀。

初めて王子マレリウスが公式に人々の目に触れた場にもなった。

お読みいただきありがとうございました。

頭でビジュアルのストーリーができているのですがそれを著す文章力が最悪です。

読みづらいと思いますが、お付き合いくださいますようお願いいたします。


ここで第一章 一人の王子 が終わります。

ひとつ間を挟んで第二章 二人の王子 が始まります。

それと同時に表題を改題、「初午の狸・二人の王子」となります。


やっと本編、場所をフェアネス皇国に移し気のきついヒロイン、冷徹ライバルの登場です。


流され主人公のマレリウス、まさにゴキブリ並みの生命力ですからそれなりのゴキブリ生活でも楽しく……。

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