30 俺が反逆者だって?
出来の悪い王子が臣下に落とされる。
他の国ではまれではあるがしばしば行われてきたことだ。
この世界では国王が絶対的な権力を持つ対価として国に対しての責任をもつ。
責任のある各国の王は王の資格がないと判断した後継者を容赦なくふるい落としてきたのだ。
ノルトでは今までになかったことだがそういうことがあっても不思議ではない。
ノルト王家の家臣たちは賢明な王判断力と慈愛あふれる王妃の包容力に絶対的な信頼を置いていた。
それは今まで自分たちが二人に仕えてきて、自分の目で見て耳で聞き、肌で感じてできた信頼であり不動のものであった。
王様が決断されるのならばよくよくの理由があるのだろう。
王妃様がそれをお認めになるならばそれが拒否できない絶対的な物なのであろうと推量した。
だからマレリウス王子の優秀さを一番よく知る冬宮の女官長でさえ思った。
そうであれば自分たちがとやかく口をはさむべきではない。
誰もがまさか国王がマレリウス王子の現況を知らず、王妃が全くの無関心で有るとは心に浮かびさえしなかった。
だから王家の、特にマレリウス王子の一大事と開かれた臣下の集まり自体が無かったものとされた。
一番お辛い王妃様が気丈にも平静を装っておられるのだ。
自分たちができることはお二人の意思に従うのみ。
ところが事態は重鎮たちが予想した以上に悪いほうへと転がり落ちていく。
やがて夏至が過ぎたある日、王宮からカーン村に出た勅使がマリス少年の出頭拒否を魔道具を使って伝えて来たのだ。
王宮の官僚機構は事務的に動き出す。
カーン村在住マリスを王命拒否で捕縛せよ。
流民マリス、王命拒否のため反逆罪を適用せよ。
全てに国王のサインがあった。
ふわぁ~と大きく伸びをする。
場所は夏宮地下牢、まっくらな小部屋には全く何もなかった。
寝床どころかトイレもない。
どこにどうやってしたらいいんだ。
飯が出ないことよりそれがつらい。
出せないのがつらい、結局我慢できなかったけど。
兎に角俺は何もしてないのにこんな所に放り込まれた。
王宮から来たという偉そうなおっさんが表彰してやるから王宮に来いっていうから、急用で国を出ますって言っただけだぞ、まったく。
そしたら勅令だから連れて行くと護衛の兵士さんたちに無理やり拘束された。
暴れたら村長さんも連れて行くって言う。
だからおっさんにかみつこうとしたポンタもおとなしくさせてルルちゃんに預け、両手を挙げた。
まったくとんでもないことになった。
くっそー。
同時刻、カーン村では子供たちが円陣を組んでいた。
「お父さんたちはどうにもならないって言った。マリス兄ちゃん死刑だって」
「大人は頼りになんない!」
「私達だけで助けに行くよ!」
「お~っ!」
十歳にならない子供たち、でもマリスに鍛えられた修羅族夜叉族の子どもたちは並ではなかった。
村を抜け出した子供たちは食料を狩りなどで調達しながら夏宮郊外までたどり着く。
そしてたまたま外出していて戻る王妃一行と出会う。