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2 チートはずるいだけで役に立たない

チートしたわけではありません。

世間一般にチート人間すげーなんて思われていますが現実はこれです。

 魔法、これぞファンタジーの神髄。

見たい、学びたい、身に着けたい。

そんな訳でさっそく王宮にいるはずの魔術士に教えてくれという 王子様のお願い をサリーに持ってやらした。

ふぇふぇふぇ。

せっかく生まれなおしたからには目指せヒーロー。

ってなわけでもないが食欲が満たされた次は知識欲が湧き出してきたんだ。

だって3才だぜ、俺。


 俺のお願いが通って指導してもらえることになったのはユリシア・デ・フランシスカ王宮筆頭魔法師。

算数を見てって家庭教師を頼んだら、文科大臣が来たみたいな?

失礼……って誰にやねん。

東大の学長が来たみたいなものだった。

なんでわざわざ学長に替えるねん。


 ウキウキそわそわドキドキわくわく。

サリーも顔にも、ウキウキそわそわドキドキわくわくが顔に出ている。

たぶんサリーは俺のマネをしているだけだと思う。

二人で指定されたとおりに武術用の練習着を着て他には誰もいない兵士の訓練場で待っていた。

ウキウキそわそわドキドキわくわく。


 予定時間ぴったりに入って来たのは夜叉族の女性。

クールに決めた知的美人。

夜叉というのはファンタジー好きにはちょっと八重歯のかわいいダークエルフと言いかえればイメージしやすいかも。

人族が紋章の力を借りて1属性鹿魔法を使えないのに対し、夜叉族やエルフっぽい精霊族は全ての属性が使えるらしい。

サリーに取ってこさせた魔法入門書の受け売り。

事前学習は大切なのだ。


「魔法を学びたいということですが、体験していただけたら一番早いと思いますので、そうさせていただきます」


 ドキドキわくわく。

でもなぜか無表情に見下ろす先生の視線に悪意を感じる。

俺と先生、初対面だよね?


「殿下は火と水の最高位の加護をお持ちでそれは常に御身を守っています。ですから五行相剋に従って火」


 冷気を感じさせる先生の声が終わるや否や俺の体が業火に包まれる。


「火の属性魔法は最も攻撃に特化し、すべてを焼き尽くすだけでなく魂の浄化なども行えます」


何が起きているのか理解ができないが先生の言葉だけは頭に残る。


「金」


 続いてバリバリドッカンっと無慈悲な稲妻のシャワー。


「金の属性魔法は単に金属を変形させるだけでなく、稲妻や風も扱えます」


 なぜか怪我はしてない。

漠然とそう考える余裕があることも確かだ。


「以上の二つ属性魔法で殿下は傷つくことはありません。次に水」


 頭上から滝のような水が流れ落ちてもはや張り付いているだけの練習着の焦げ残りが流される。


「水の属性魔法はこのような物理的な力だけではなく、治癒や浄化も扱えます。それだけ強い水の加護があれば大抵の水魔法も無効にできるでしょう」


 素っ裸にされたんだけどな!


「そして木の属性ですが、植物を支配し動かしたり毒や薬の作用をさせることができます。殿下は普通程度に影響を受けます」


 なんか俺の周りをホコリのようなものが漂い気分が悪くなる。

これが毒、苦しいぃ。


「最後に土の術ですがこれは、物理的に土を扱い……」


 悪い予感、体験しなくていい、しなくていい。


「……あなたには術の強度以上に増幅されて効きます」


 うげっ。

土をつかんで投げつけられただけのように見える魔法。

それがまともに腹にクリーンヒット。


「以上が属性魔法を受けた時です。次に術の発動ですが、紋章に魔力を流し込んでイメージするだけで良いのです。殿下の場合火と水が隣り合っていますのでお互いに相殺し合って発動しないと思われますが」


 つまり俺に属性魔法は使えないって事か。

倒れている俺がそれでも先生を見上げているのを認めると、何もない地面から陶器のマグカップを取り出した。

それを真剣ににらみつける。

先生の額に汗。

10分ほどしてやっと一塊の水の玉が宙に現れカップに落ちる。


「水は火より強いのでこのように非効率的ですがぬるいお湯なら何とか出せるでしょう。これだけのことに、先ほどの火と水の10倍以上の魔力を使います。ですのでふつうお湯を沸かすには、水を出して温めます。後ご不明な点がありましたら王宮に魔法に関する書がありますのでご参考に」


 手招きして見学室にいたサリーを呼び寄せてそのカップと懐から出した小瓶を渡す。


「土魔法の毒消しです。飲ませて差し上げてください。今無理やりお湯を出したのでもう魔力がありません。治療が必要なら王宮でしてもらってください」


 では失礼とばかりに軽く頭を下げて帰ろうとする先生を呼び止めた。


「先生、ありがとうございました」

「外に出す属性魔法はできないと思いますが、身体強化魔法なら使えるかもしれません、私よりその侍女に教わってください」


 先生はそれだけ言い残してそのままスタスタ訓練場を出て行ってしまった。

確かに3才にも分かりやすかったが、う~んそんなに忙しいところを呼びつけたのかな?

ん?

サリーが俺の下のほうを見ながら真剣に考え込んでいる。


「身体強化魔法だけしか使えないんですか。マリス様って精霊族の混じった修羅族だったんですね。だからこんなカワイイのに口うるさくって……」

「おいっ! どこ見て言ってるんだ。早く着替えを取ってこいっ!」


 まったくもう。


 気になって他種族について調べてみた。

寿命は人を1とすると修羅族や夜叉族は3と少し。

外見以外はその辺が一番大きな違いらしく、交雑できるほど近縁ということらしい。

サリーの言う精霊族なんかは大人になるまでの期間が長く伸びるらしい。

サリーは勘違いしたみたいだが俺は生粋の人族だ。

たぶん。

紋章があるから血統だけははっきりしているらしいけど……。

 

 しかし突然先祖返りとかで角が生えてきたりしないだろうな。

心配になって来た。

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