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13 疾走

 俺たち二人が入ろうとする洞窟の入り口は切り立った斜面に開いている。

入り口には一応柵と門が作られているが、これはみだりに人が入り込まないように有るだけ。

実際に中の魔物を封じているのは入り口少し奥に置かれた魔法のランプ。

王宮の通路にいるのより少し上位の聖霊がいてえらそうに誰何してくる。


「誰だ?」

「俺だ」


 バカバカしいがこれで俺が通ろうとする意志が通じる。

中の魔物が出入りしないように見張っているはずだが俺と一緒のポンタには見向きもしない。

もしかして王宮の聖霊も通してほしいなんて希望を言わずに 「通るぞ」 と押し切れば通してくれたのかもしれない。


「ここから先は一人で行くからルー君はこの聖霊のそばで待ってて。それから絶対に何があってもここの魔物を傷つけたり倒したりしないでほしいんだ」

「分かった。そのルー君っての堅苦しいからルーでいいよ。僕もマリスって呼ぶからさ」

「了解! ルーは魔力を扱えるよね、俺が向こうから白い球を投げるから受け止めて魔力を通してほしいんだ。それでルーの雷獣が生まれるから」

「えっ⁉ 雷獣って卵で生まれるの⁉」

「ま、すぐにわかるって。そんじゃ行ってくる」


 疑問符を浮かべたままのルーを置いて俺は駆けだした。

精霊から遠ざかるとあたりは急に暗くなるが、なぜかわからないけど兎に角見える。

足元はごろごろとした岩場、俺の足は動かない大きな岩を正確にとらえジャンプ。

ちょうど俺の腹のあった位置をドッジボールぐらいの何かが貫く。

俺は空中で半回転し、3メートル上の天井に着地、そのまま岩の天井をけって壁へ。

背後から襲う紫電は無視、背中に当たるが雷獣の皮の服をなめして作った服は焦げもしない。

前方からの紫電、まともに顔にぶち当たるがこれも無視。

俺は金属性の雷には耐性がある。

そのまま毛を逆立てる雷獣を更に魔力で強化した足で飛び越える。

雷獣は攻撃特化、うっかり踏んでもダメージを与える。


 10匹以上の雷獣を従えて俺は3次元的に洞窟を疾走する。

飛び交う稲妻で洞窟は明るく照らされ、雷鳴は壁に反射して轟音となる。


 洞窟はいきなり小さな体育館ほどのホールになり中央の台座、普段はボス的な大きな雷獣が待ち受ける場所にテニスボールぐらいの白い球。

頭からダイブして一切魔力を纏わせない右腕でつかみ、魔力で強化した左腕でジャンプ。

追いかけてきた雷獣たちが全てこのホールに入るまで躱し続ける。

こうしないと復路に雷獣がたまった場所を突っ切らねばならないから。

タイミングを見計らって来たコースを逆戻り、飛び跳ね続けてルーの場所に戻り球をパス。


「早く!」


 そのままUターンして追いかけてきた雷獣たちを引きつける。


ミュ~。


「そのまま外へ!」


 ルーが駆け出した気配を感じてすぐ反転、聖霊の横を駆け抜ける。

ふ~っ。

バシュ、バシュッと何かがはじける音。

ここまでは追いかけて来れない。

おっと、足がもつれてルーの足元にヘッドスライディング。

最後が締まらんところが俺らしい。

仰向けに見上げるとルーの手からポンタより一回り小さい雷獣が飛び降りた。


ミュ~。

ミュー。


 2匹仲良く呼び交わして俺の腹の上でお互いの毛づくろいを始めだした。


「ありがとうマリス。ミューズフラウ、ミューって名前にするよ」

「ミューズフラウって黄色い筋のある白い花だっけ? かわいいと思うよ。良かったなポンタ、かわいい友達ができて」


 ポンタとミューの違い、ポンタは鼻筋の白い部分に赤と黒の縞があり、ミューには白い部分に黄色い縞がある。

つかまえてじっくり見たことは無いけど、普通雷獣は白だけだった気がする。


 今までサリーにもなつかなかったポンタがミュールと一緒に俺とルーの間を行ったり来たり。

そんな2匹を見ているうちに、もう隣の洞窟から兵士さんたちが出てきた。


「今日はここまで、解散っ!」


「マリス君今雷獣が2匹居るように見えたが?」

「いつからポンタが他人になつくようになったのかな?」


 最初のがゾイルダーさんで、後のが付き添いで洞窟に入っていたワルターさん。

ポンタはすぐにポケットに飛び込んだがミューはどうすればいいのかわからずルーの襟元に頭だけ隠している。


「さっきルーと捕まえてきました。それポンタじゃなくてミューズフラウっていいます」


 タイミング良くミューと啼きながら顔を出すポンタ。

それをじっと見つめてゾイルダーさんは一言。


「捕まえてきます」



「昔は雷獣が試練の洞窟の新兵殺しって言われてたんだけどな」


 ぼそっとつぶやくワルターさん。

実際のところ、雷獣の電撃は人の命を取るところまではいかない。

もちろんショック死した人はいる。

爪も牙もそんなに鋭くはないが、やたら痛い。

ただその鋭くない爪は金属だけを真っ二つにする。

その結果……。


 1時間後、鎧を引き裂かれボロボロになったゾイルダーさんは柄だけになった剣を握りしめてゾンビの様な足取りで洞窟から出てきた。


「1時間か、よくもったな」

「隊長、あれはまだ無理です」

「ほぅ、まだ と付けるんだな」

「いずれは」

「俺も嫁に一匹ほしいとねだられてんだが、すばしっこくてなかなか難しくてな。雷獣は火属性の範囲魔法なら簡単に倒せるんだが魔核も残らねぇ。なんか秘訣があるらしいが教えてくれないんだ」

「そのマリス君は?」

「風呂入るってさ。お前も行って来い。捕まえ方の秘訣、聞き出せたら俺にも教えてくれ」






 





次回 明日 休息 お風呂場シーン もち混浴

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