出会い
ボクたちは一緒に彼女、リルのお家まで来ている。なんとアトリエからそんなに距離がなく、意外と近かったのに驚きを隠せない。
あの工房は格安で買い取った趣のある良い家だったので即決だった。
何処にそんなお金があったかって?。ふっふっふ、数ヶ月で貯めましたよ!効果が良いのかリピーターが凄かった。特に傷薬系が!。
そんな事を考えているとふと呼び止められる。
「ここ、です。」
デカ!!メッチャクチャ大きいんですけど!?。これが格差かっ!!
そう思わせるくらい大きいんですよね〜。いやいや、いずれはボクたちもこんなお屋敷にって思いはありますよ?。維持が大変なんで考えたくないですけど…。
「おっきい、ね?」
ようやく出た言葉がコレですよ。
それはさて置き、コクンと首を縦にふるリルちゃん。あ、やっぱり住んでる人も思うんですね!。
良かった、ボクの反応は正常ですね。
「こっち、です」
リルちゃんの案内で屋内へと入ると大きなエントランスが姿を現わす。
ででんとある階段を登り二階へと行き、スタスタと先を歩き時折こちらがちゃんと付いて来ているか確認する。その度に軽く手を振ると、顔を赤くして進んでいく。何故だろう、ちょっと悲しい…。
暫くするとリルちゃんが、ある一部屋の前で足を止めてこちらを見た。
「ここ、です。姉様、が、います。」
ギィィィィと木製扉と金属の留め金特有の音を響かせながら、ゆっくりと開いていった。中はすごく可愛らしい感じの部屋でした。中央にはかなり大きいベッドが鎮座していて、そこにはボクと同じくらいの少女が横になっていました。
『あれは…。』
(どうしたの?)
何かを感じ取ったのかな?。ちょっと気になりますが、今は我慢です。
「リル?」
「はい、姉様。」
「お客様かしら?」
「はい、錬金術師のリーンさんをお連れ、しました。」
「まぁ!?最近巷で持ちきりの??」
「はい、その方、です。」
キラキラと輝いた瞳で見つめられると、恥ずかしいね。っとと、自己紹介しないとね!。
「初めまして、ボクはリーンです。錬金術師をしています。この度は妹さんに連れて来られたんだけど…」
「まぁ!?それはごめんなさい!。私は
サイネリア・フォン・アシュタリオンです。この子はリルカルネ・フォン・アシュタリオン、私の妹ですわ」
仕草とかがすごく綺麗な方で、参考にしたいくらい。
「姉様、今日は診察に、来てもらった、の」
「それは凄く有り難いのだけれど、畑違いではないかしら?。どうせならお話を聞きたいわ!」
なにかな、このこそばゆい感じ…。悪い気はしないけれど、落ち着かないね。
『慣れるしかないわね。それよりも、少し変わってくれる?』
(うん、いいよ。何か気になることがあったんでしょう?)
『流石ね、あの馬鹿とは違うわね』
その反応には流石に苦笑いしか出来ないね。あの人は鈍いところとかあるから…。
「お話は後ででいい?。ちょっと診てみるから、少しだけ待って?」
「ぶー、お預けですかぁ?」
ぷくっと頬を膨らませて、ぶーたれるけれどその顔も可愛らしかった。羨ましいなぁ〜ってぶっちゃけ思ったけれど。
「ホントにすぐ終わるかから」
「はぁい」
そう言うと大人しくなる。うん、素直な子は好きよ?。
(じゃあ、タッチ!)
『任せておきなさい!!』
慣れたもので、ここ半年の特訓で交代は難なく出来る様になった。うん、努力は報われるって事ね!。
そうこうしているうちに、髪は紅くなり瞳はアクアマリンの様な淡い色へと変化した。
うん、普通はびっくりするよね。お客さんの一部ではイヴに踏まれたい人たちがいて、その人たちは通称イヴ様に踏まれ隊と名乗っているらしい。
お願いだからそんな恐ろしい隊を作らないで!。
「ふぅ…。」
「えぇと、リーン様?」
「私はイヴ。あの子じゃないわ。」
目つきが鋭いせいか、サイネリアさんはびくりとした。はい、これはイヴに怯えていますね。
ごめんなさいね、うちの子が。
「すぐに済むわ」
そう言うとツカツカと、サイネリアさんの所へ歩いていく。
サイネリアさんの顎をクイっと少しだけ上げるとイヴは自分の額とサイネリアさんの額を付けてぼそりと口にする。
「なるほど。これは普通の医者には無理ね…。」
「えっ!?」
サイネリアさんは驚き瞳を大きく開いた。だがイヴはそんなことは御構い無し!。
『さて、もういいかしら?』
(あ、はいはい、聞いてらしたのね。)
『聞いていたのではなく、貴女が勝手に漏らしていたのでしょう?』
(漏らしてたって、なんかやだ…。)
『まぁ、そんな事はどうでもいいわ。本人にも直接言うから、貴女も聞いていなさいな。』
(えぇ、分かったわ。)
イヴが片目を瞑り腕を組んで何か思案していると思ったんだろう。恐る恐るといった感じでサイネリアは尋ねる。
「あのぉ、どうなんでしょう?」
「…、あぁ、悪いわね。結論から言うと、貴女の病気は治せるわ」
「本当ですか!?」
まさか!?といった感じの驚き顔です。可愛らしいです!。それよりも今はイヴの話を聞かねば。
「えぇ、原因は貴女の魔力の高さに原因があるのよ」
「私の、魔力の高さ?」
この人は何言ってんの?って顔してる。気持ち分からないでもないです。ボクの専門外なんで、その辺はお任せですね。
「えっと、私の両親は魔力など殆どありませんよ?」
「それでも、貴女にはかなり高い魔力があるわ。その魔力が貴女の身体を蝕んでいる。それを解消させてやれば治るわ。」
『さて、ここからが本題よ』
(体内魔力を霧散させる事、だね。)
『その為の物を錬金術で作らなければいけないわ。』
(なるほど、永続的に排出させ続けなければいけない訳だからアクセサリ系が妥当かなぁ。)
『そうね、常に身に付けておけるものが望ましいわ』
(指輪、かな)
『まぁ、それが妥当かしらね』
それじゃあ、という感じでバトンタッチ。あ、はい説明はボクなんだね。
髪の色が黒へと戻っていく。それと同時にイヴが奥に引っ込んでいく。
「ふぅ。」
「今度こそ、リーン様?」
「正解。それと、様付けは慣れないから止めてほしいかなぁ」
「では、リーンさんで」
「うん、ありがと。それと診断結果を言うね。サイネリアさんの病気の原因は魔力の高さ、この場合に限っては量の問題、かな。今現在の量から一般の人位までに下げれば解決だって。」
「はぁ、私はどのくらい人より多い魔力を保有しているのですか?」
だってさ?。一体どれ位なの?。
『およそ人の4倍程ね。魔術師ならば、狂喜乱舞するところよ。まぁ、この娘の場合は邪魔な要素って所ね。』
「常人のおよそ4倍だって。」
「4倍、ですか…。」
あー、うん。そんな反応になるよねー。常人がどのくらいか分からないし。
というか、説明するのはやっぱりイヴの方がいい気がするからタッチ!!。
またしても髪が紅く変化する。ビクッとサイネリアさんが反応した気がするけどおかまいなしです!。
「はぁー、全くあの子は…。」
「今から説明してあげるから喜びなさい」
(はぁい、先生!)
サイネリアさんは緊張した顔だが、確りと聞く体制に入っている。うん、素直な子はボクも好きです。
「こほん、その事後で詳しく聞かせなさい。」
イヴは片目を瞑って視線を明後日の方向に向けながらボクに言ってきた。
「まぁいいわ。説明するわね、一般人の通常魔力保有量はおよそ70〜80と言われているわ。魔術師がその1.5倍の105〜120が基本数値。錬金術師はおよそ1.8倍。けれどもサイネリア、貴女は一般人のおよそ4倍、280〜320程あるわ。この数値は異常と言って差支えない程だわ。」
その説明に彼女の顔は青ざめる。無理もないですね、これは。
「でも、解決策がないわけではないわ。」
その瞬間、彼女は顔を上げ藁をもすがる思いでイヴを見つめていた。
「どうすれば…?」
「リーンの錬金術でアクセサリを作る。そのアクセサリは魔力を常に外部へ排出する効果の付いたものよ。ただ、これにはそれなりの素材がいるわ。金属はもちろん、その他がとても重要ね。」
「それを集めれば?」
「素材集めは私がやるわ。」
「では、何を?」
「あの子の、友達になってあげてくれないかしら?」
「あの子って、リーンさん?」
「えぇ、そうよ」
紅い髪をふわりと揺らしながら頷く。
ああ、もう!何かな!何かな!?この人は!?。どうして自分は省いちゃうかな!?全く!!。
「ふふ、リーンさん、大丈夫ですよ。ちゃんとイヴさんもお友達ですから。」
ん?あれ、ボク、今表に出てないよ、ね?。
『そうね、変わらず私が出ているわ。』
な ぜ き こ え て る!!
ちょ、ちょっと待って!サイネリアさん、今の声も、聞こえてる?。
「…はい。聞こえています、ね」
「ね、姉様?」
「これは、素質、かしら?」
(いやいや、それですますの?)
「でも、そうとしか言いようがないでしょう?」
(まぁ、確かに。)
「ひとまず、目の前の課題を片付けましょう。」
(素材集め、だね)
「必要なものは何?」
(金属は少量のミスリルと白銀がいるかな。その他にスライムの核、土竜の爪、一角うさぎの角の粉末、雷天龍の黄玉がいる。)
「ふむ、他は良いとして問題は雷天龍の黄玉、か」
雷天龍とは清き渓流に生息すると言われる五天龍の一角で、ぶっちゃけ人で勝てるの?ってくらいの化け物です。その雷天龍の力が宿る玉の欠片がいるんですよ…。
「勝てるのですか?」
「全力を出して4割といったところね。欠片で良いのなら分けてくれないかしらね?」
(分からないけど、それは無理、じゃないかなぁ〜)
もうそこは腹をくくりましょう!。お友達のためです!!。
「そうね、アレを作るならもっと大変な素材もとらないといけない訳だしね?」
「アレってなんですの!?」
凄い食いつきですね、でもこの話はまた今度ですね。材料を集めに行かないと、サイネリアさんの身体が耐えられなくなりますからね。
「そうね、そろそろお暇してさっさと作ってしまいましょう。そういう訳だから、待ってなさい。」
「うー、はぁい。」
「ふふ、素直な子は好きよ?」
あ、顔真っ赤ですね。イヴは美人さんですから分からなくもないですけど。
そんなやりとりの後、早速出発したボクたちだった。
今日は何時もの倍くらいの量になっちゃいました。
ここまで来てくれた人、スクロールお疲れ様です!。
活動報告のリーマン話読んで頂けましたでしょうか?
とは言え、途中なんですがね!
あっちもぼちぼち書いていきますのでよろしくお願いします!