やるべきことと第一歩
目を覚ましガバリと起き上がるとともにゴチンという軽快な音が響いた。
ボクとクレメリアさんの頭がぶつかった音だ、何とも良い音すぎる…。
「っっったぁーい!!?」
「っく、っか!?」
ボクはあまりの痛さに声を上げ、クレメリアさんは呻き声をあげていた。こぶとか出来てないよね?ちょっと心配…。
それはそうと、今はやるべきことがあります。まずはクレメリアさんのところの工房を借りないといけません。
「い、一体、どうしたというのだ・・・?」
「クレメリアさんのところの工房を貸して下さい!!」
「ま、まてまて!一から説明してくれ!」
ボクはすぐにでもホムンクルスを作らなければいけないことを説明した。なにせ、イヴの為だもの!。ここはボクの持てるすべての力で最高の身体を作ってあげないと!!。
「そう、か。ホムンクルスを、か。」
そう呟くと、頭を抱え唸りはじめた。
「すまない、この事は私と君の二人だけ秘密にしておいてくれないか?」
「??どうしてですか??」
ボクは首を傾げる。そうすると何故か、クレメリアさんの顔が赤くなる。どうしたのだろうか?
そんな事よりも、何故に秘密にしておかなければいけないのだろうか…。
「ホムンクルスを作ることは命を作る事に他ならない。それは神の領域であり我々人の領分ではないのだよ。」
「それでも…、それでもボクはやらなきゃいけないんです。今のボクのやるべき事の、最優先事項なんです。」
「…、はぁ、全くキミは頑固だね。分かったよ、私の工房は自由にしてくれたまえ。」
よし、これで拠点確保です!!。いずれは返さなくてはいけないので後に自分の工房を得ることにしましょう!!。
それにしても、事を急ぐと良いことはありません。慎重にいきましょう。
(イヴ、聞こえてます?)
『聞こえているわ、何か用事?それともあのバカに苛められた?。もしそうならお仕置きしないといけないわね、うふふふ』
(そんな物騒な事はいいですから!そんな事よりも、どうやらイヴの身体を作るのにはかなり静かに創造ないといけないみたいです。)
『そうなの?。面倒ねぇ…。』
そう言いながら、ホントに面倒くさそうに言ってますよこの人は!。
素材を集めるのは彼女でも、実際錬成するのボクなんだけど!?。
『それよりも、はやくあの馬鹿の持ってる工房を頂くわよ』
「借りるだけなんだってば…。」
「うん?どうした?いきなり。」
あう、声に出てた。
「なんでもないですよ。それよりも早く行きましょう!」
「まてまて、先ずはギルドの掃除の続きだ。2人で手早くやってしまおう!」
「あ、そうでしたね!」
そうしてボクとクレメリアさんでギルドの掃除を手早く済ませたのだった。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
リーンがギルドを訪れた日から、半年の月日が流れた。
カランカラン。
ドアベルの小気味良い音が店内に響く。ドアを開けた主は恐る恐るといった感じで店内へと進んでいった。
「いらっしゃいませ」
出迎えるのは黒髪が特徴的な、可愛らしい女性。
「えっと、擦り傷に効く薬を…。」
「はい、これね。お代はおまけで120バースだよ?」
「えっ!?街の雑貨屋より安い…。」
そうです、ボクの所で販売しているお薬やなんかは結構安かったりします。だから、結構お客さんの層が幅広かったりします。
カランカラン!
今度の音はさっきより強い音だったから、冒険者さんかな?。
「リーンちゃん!傷薬を買いに来たぜ!!」
「ちょっとアンタね!アタシのリーンちゃんなんだから気安く呼ばないでよね!」
「オッス、中和剤あるかい?」
続々と人がこの店を訪れる。その光景に少女は驚きを隠せなかった…。
「こらこら、変な事言わないよ?」
「はあい、でもそんな顔してるよ?」
「ふふ、初めてみる娘だから驚いてるだけだよ。そんなことよりあなた達自己紹介なさい?」
「はあい、うちはここでお手伝いしてる妖精のニーナ!。よろしく!!」
「あたしはキャシー!同じく妖精!」
妖精は初めてなのかな?。まぁ、滅多な事では出会えないから仕方がないよね。
エメラルドグリーンの瞳が特徴的なのがニーナでコバルトブルーの瞳がキャシー。2人とも可愛らしい女の子の妖精で大人気の看板娘です。
「あっはは!!嬢ちゃん、ここは初めてかい?」
「は、はい!。此処には良く効くお薬があるって聞いて来ました!。」
「確かに!」
「違ぇねぇ!」
「うんうん、リーンちゃん特製の薬を使ったら他は使えないわね!」
などなど、有り難い言葉が飛びかっている。ボクが錬成するものは総じて評価が高いみたい。ミスリル製の練金釜のおかげだね!。
「えっと…」
先ほどの女の子が何か言いたそうにモジモジしている。どうしたんだろうか。
「どうしたの?」
「えっと、病気に効くお薬はあります、か?」
今度は暗い顔で俯きながら、声を出していた。
「そうだね、風邪とかならあるけど?」
「そう、ですか…。」
風邪ではないのかな?。女の子は暗い顔のまま、お会計を済ませて工房を出ようとした。
『まったく、そんなに気になるのなら追いかけたら?』
(そう、だね!)
「ちょっと待って!」
ボクが大きな声を出すと、周りのお客さんまでビクリとして一斉にこっちを向いた。うん、其処まで反応しなくても良いのにね。
「ニーナ、キャシー、お店任せていい?」
「リーン、どっかいくの?」
「リーン、おでかけ?」
2人して首を傾げながら可愛らしく聞いてくる。ホント、可愛い!。やだ、ニヤニヤが止まらない…ってそうじゃなくて!。
「ちょっとこの子のお家まで、ね?」
そう言いながら、女の子の側まで行き肩に手を置く。
「お、リーンちゃんが、出かけるなら早く会計しねぇとな!」
「そうね!」
「じゃないとリーンちゃんが安心して出かけられないからね!」
あ、ありがとうございます。実はあの2人にお留守番させるの超不安だったんです。だって、珍しい妖精だし、舌ったらずな可愛い喋り方する子たちだし!。
会計が終わった人たちはササッとアトリエを出て、これから入ろうとする人達にボクが外出する事を説明して協力を求めてくれていた。
ホント、ありがとうございます!。会計待ちの人を捌ききり女の子だけが残っている。
「お待たせ!。じゃあ行こっか?」
そう言って2人でアトリエの扉を開けると、カランカラン!と小気味良い音が響き外に出て扉の札をcloseにすると目的の場所に女の子と共に向かうのだった。
読んでくださってありがとうございます!
活動報告にて
32歳、サラリーマンが転生したら!
と言うのショートストーリーを書いていきますので是非読んでみてください(笑)
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