帰る前に一仕事を。 02
一週間と少しぶりの更新になります。
いやはや、ブックマークされてる方、ありがとうございます!
私とライゼルカはギルドをさっさと後にする。ぶっちゃけひと暴れしたい気分なのだ。
「珍しいのぅ、お主がピリピリするとは。」
「ピリピリしている訳ではないわ。ここにはちょっと世話になった人がいるし、獣どもに害されるのが嫌なだけ。」
そうは言ったが、イライラしているのは私も認めよう。魔物には悪いが、憂さ晴らしの対象にさせてもらおう。
「ライゼルカ、そろそろ町の外よ。」
「うむ、では行くとするか。」
そう言うとライゼルカは龍形態に変身する。黄金色の鱗が陽に照らされキラキラと輝く姿はいつ見ても綺麗だと思ってしまう。
「早よう乗らぬか。」
「えぇ、悪いわね。」
軽やかにライゼルカに乗る。頭から伸びる立派な角を握り私は身体を支えると、ライゼルカは飛び立った。
龍の身体をうねらせ進み、速さはやはりドラゴンと言うべきか比べるまでも無く速い。
「そろそろかのぅ。」
「…見えたわ、あそこね。」
そこそこ広い平原を埋める勢いで魔物が進軍していた。
「これは…。」
平原で魔物狩りをしていた一部のパーティは魔物の群れを見るや、逃げる事を選択していた。またあるパーティは戦う事を選択する。
「初撃は貰うぞ?」
「えぇ、その後は私が焼き尽くすわ。」
ライゼルカは渾身のブレスを叩き込むようだ。地形が変わらないか少し不安なのだけれど…。
「ゆくぞ、有象無象の雑魚どもよ…。"天雷"」
ライゼルカから放たれる眩ゆい雷が、敵を屠っていく。治った後には半数を減らされた魔物の群れが残る。
「じゃあ、行くわ。」
「うむ、こっちは見学しておくとするかのぅ。」
ライゼルカから飛び降り、臨戦態勢へと至る。下へと落ちる感覚と、物凄い風圧が髪をバサバサと暴れさせる。その度に紅の燐光が舞い散る。
その光景を見た者が口にした。
『血が光ってるみたいだ。』
私は魔物を一体着地する時に潰す。そうでもしないと勢いを殺しきれなかったからだ。ただ、潰した余波で周りの魔物は焼け死んだ様だけれど。
2、3度拳を開いたら閉じたりする。
「よし、違和感はない。さぁ、悪いのだけれど少し付き合って貰うわよ。」
そして行動する。拳を、脚を使う度に舞い散る燐光と敵の身体の一部、そして血しぶき。
魔力を全身に循環させ、身体強化し高速戦闘を開始する。そして拳に、脚に、炎を纏う。拳で突くだけで数百メートル先まで破壊する。
「まだ、まだだ!。」
次第に纏う炎が蒼くなる。
それに伴い、一撃の威力が上がっていく。紅の時の数倍の威力になっている。放たれる燐光も紅と蒼の二つになっていた。髪にも変化が現れ、青のメッシュが所々入っていた。
「ほぅ、これは、次手合わせしたら勝敗が分からんしのぅ。」
「私は、負けない。ドラゴンにも、蛇女にも、そして何より、あの女なんかには絶対に!!」
私は忘れない。ライゼルカを軽々とあしらう程の化け物。
ーーーユウリ。
人を馬鹿にした様な呑気な性格、そのくせ強さは異常。あの女を見たらどうしてか心が乱れる。イラつくのだ。それもどうしようもなく…。
『分からない、リーンと一緒になる前に何かあった?』
「おい!地形が変わり始めておるぞ!!」
「はぁ、はぁ。」
炎を使いながら大量に屠って行く。無慈悲にも蒼の炎によって大量の魔物が焼かれる。
「ふむ、これは、何ともやりすぎじゃないかねぇ?」
不意に聞こえてきたのは、不快感が絡みつく様な喋り方をする男だった。ニヤリといやらしい笑みを浮かべている男はゆっくりと空から降りてきた。
「しかしその炎、見覚えがありますねぇ〜?」
「貴様は私の敵か?」
「ふぅむ、少しお相手しましょうかねぇ?実験用の魔物も全滅させられた様ですし…。」
「実験用?」
「そぉぉです!。先程からあなた方が殺してしまっていた魔物はぁ、実験用に用意した物なんですよぉ!」
「お前、何者よ…。」
「これはこれはぁ失礼いたしまぁしたぁ!。わたくしはぁ、魔神・フォルネウス。以後、お見知り置きを」
フォルネウス……確かソロモン72柱の…。
「それで?管理仕切れなかった魔物を殺されて怒っているのかしら?」
私がそう言うと、真顔になり返してくる。
「少しだけですがね。これだけの数を揃えるのには苦労しましたからねぇ。」
面倒だ、正直すごく面倒でならない。魔物はいなくなったのに帰れないって…。
「イヴ!やめるのじゃ!!」
ライゼルカが叫ぶ。それもかなり焦った声で。制止の声も時すでに遅し、私は行動を始めたところだったのだが私は驚愕に襲われる。
フォルネウスはいつの間にか懐に入っていた。
「遅いですねぇ!」
その声とともにお腹に衝撃が走り身体が浮き、次の瞬間には吹き飛ばされていた。バウンドしながら数十メートル吹き飛ばされた。
「ガハッ、ゴホッ、」
口の中が切れ、血が口の中に滲む。私は口から漏れる血を拭い、立ち上がる。
「ふぅむ、この姿ではこれが精一杯ですかねぇ。」
「ヤバい、ヤバいのじゃ!」
「なんて奴なの、強化しているのよこっちは…。」
そう、そうなのだ。こちらは魔力で身体強化した上に蒼炎を纏っていてこのダメージだ。
「ふぅむ、人間の質も落ちたものですね。昔ならもう少し遊べるんですけどねぇ?」
「こ、此奴!」
「ドラゴンもですよぉ?。全く、嘆かわしいぃ!」
私は、弱い。こんな事では、あの子を守れない…。
「ほぉ、珍しい波動を感じたから来てみたら…。フォルネウス、か。」
「おぅや?貴方はぁ? ッ!?」
突如聞こえてきた男の声に、フォルネウスが反応した直後に固まる。仮面をした黒衣の男がいた。
「そ、そんな…。まさか、なぜ、いるのですか!?」
「ソロモンがいなくなったらコレか、フォルネウス?」
物凄い殺気をフォルネウスに飛ばしている。此方にはきていないのにこの重圧、本当に何者なの?。
「今この娘を殺されると我が困るのだがな…。」
「クッ、手加減はできませんよぉ?」
「アッハッハッハ、いやはや、面白い冗談だ。この我を前にして手加減ときたか。……調子に乗るなよフォルネウス。堕とされ、名を消されたとはいえお前風情がこの我に勝つ気でいるとはな。」
そう言うと、先程までの殺気とは比べものにならないものが辺りを支配する。
「其処の天龍よ、その娘を連れてさっさと去れ…。ここにいると、死ぬぞ?」
ライゼルカに男が話しかける。男が視線を少し向けただけでビクリとライゼルカの身体が反応した。その直後にライゼルカは、私を回収してその場を離れたのだった。
リ「さてさて、帰ったら準備しないとね!」
イ「準備って?」
リ「それは勿論、◼︎◼︎の◼︎◼︎◼︎だよ」
イ「釜でつくるの?」
リ「え?そんな訳ないじゃん、もう」
イ「設備なくない?…。」
リ「……。」
イ「ちょっ!?視線そらしたわね!」
もうじき、もうじきですね。