勇者は旅の途中で陽気なエルフと語らう 02
更新です。
この短さでどれだけかかってんだ!と言いたい人もいるでしょう。
本気で文才ない人って、そんなもんです。
気長に待ってやって下さい。
「いやはや、いい愚痴っぷりだったねぇー。」
「は、恥ずかしいのでやめて下さいっ!」
穴があったら入りたいです…。
「いやいや、感情を表に出せる事はいい事なんだよ?」
「それは、まぁ、分かりますけれど…。やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいです…。」
私から見ても可愛らしい笑顔で言うユウリさんは昼間のアホっぽさが微塵も見えません。本当に不思議な人です。
「さあ、身体が冷えてしまうからもう寝ましょ?」
「そうですね、明日もありますし。」
「なんならお姉ちゃんが温めてあげるよ?」
「いえ、そう言うのは結構です。」
その瞬間、ショボくれた顔でユウリさんは見ていました。
「そんな顔しても駄目です。」
「ぶぅぶぅ」
ユウリさんは可愛らしく頬を膨らませるも、私は騙されません。こういう方は、決まって寝相が悪いか同性でもイケる人だと。
「まぁ、それはさて置いて。本当に部屋に戻らないと風邪ひくよ?」
「そうですね、風邪をひいては折角の旅が台無しですからね。」
「そうそう、だからお姉さんと一緒に寝ましょう (キリッ)」
「いえ、それは無いので。では、おやすみなさい。」
「アリスちゃんのイケズー!」
そんなやり取りに私は、あの呪われた様な街からようやく出られたのだなと安堵していました。
翌朝になると、ユウリさんの姿が見えませんでした。書き置きがあり、何やら気になることがあったらしく先に出たそうです。あの人も自由人というか何というか…。
「アリスー、おなかへったー」
「はいはい、では食堂へ行きますよ?」
「はーい。」
この宿屋の食堂は酒場も兼ねているらしく、冒険者の人も多い様です。中にはいやらしい視線を向けてくる人も居ますし、嫌なものです。
そんな中、妙に明るくて聞き覚えのある声が…。あの人書置きして先に行ったはずでは?
「ねぇねぇ、注文いいかな?」
「ひゃい!?」
声を掛けられ働いている方は物凄く噛んでいました。いきなり声をかけられたら噛む人もいますよね…。
「エルフなのにあのスタイルは、ヤバいな。」
本当に居るんですね、あんなこと言う輩って。
「いやだよねー、人がエルフだからってあんなこと考えるのってさ?」
「それは分かるんですけれど、なんで戻ってきたんですか?」
「私どこも行ってないよ?」
「じゃああの書置きは?」
「ちょっとしたイタズラだね!」
無視です、無視!。あんな人よりも注文です。
「えっと、ご注文は…」
「ごめんなさい、朝食なので軽めの物をお願いできますか?」
「か、畏まりました。ではモーニングセットを3つですね。しばらくお待ちください」
初々しさが溢れる少女は私たちの注文 (主に私ですが)を聞くとスタスタと早足で厨房へと消えて行きました。恥ずかしさなのか、顔を赤くしてトレーで顔を隠す仕草に私は眼福でした。
「ホント、初々しいねー。」
「可愛らしい方でしたね。」
「おなかへったー。」
数分後に並ばれたモーニングの内容はこんな感じでした。
バターロール、スクランブルエッグ、ミニサラダにコーヒーと説明されましたが…。こんな良質なパンなどそうそうありませんし、このコーヒーという飲み物ですが初めて見ました…。ユウリさんは「おぉ、コーヒーだ!。まさかここで飲めるとは!」なんて言ってましたけれど…。
「おや、コーヒーを知っているんですか?」
「まーねー。そういう君はここの店主かな?」
「ええ。いわゆる異世界転生者ってヤツです。」
「おお、ラノベの主人公みたいな!。」
「まぁ、チートは無かったですけどね!」
「なら此処まで大変だったっしょ?」
「それはもう。でも妻が支えてくれますから。」
「クッ、リア充め!」
「何とでも言ってくださいよ、苦労は報われないといけないんですからね〜。」
「そう言えばキミ、なんての?」
「こっちではマイルですよ。前世は…」
「前世はいいよ、終わった人生でしょ?」
「うぐっ!?た、確かに。」
バッサリと切り捨てるユウリさん、容赦ないです。
「それにしても、エルフの貴女がなぜコーヒーを?」
「キミと似た様なもんだよ。あ、美味しい。」
そんなこと言いながら、パンを頬張ってました。
「では、俺は戻ります。久々に同じ世界の人と喋れて楽しかったですよ。この街にまた来た時は是非当宿を。」
「はいはい、また来た時は利用させて貰うよー。」
朝食を食べ終えて出発する時に見送ってくれたマイルさんはそう言っていました。私はこの街に来る事は無いと思いますが…。もし来た時は利用しましょう、と思うのでした。
それから私とプリム、ユウリさんの三人でサンテグリルを目指して騒がしい毎日を過ごしていくのでした。




