勇者は旅の途中で陽気なエルフと語らう 01
遅くなりましたのねん。
私ことアリスとプリムは、サンテグリルに向かう商人さんの馬車に乗り進んで行きました。
「やはり徒歩より何倍も速いですね。」
「おぉー、すごい!」
私とプリムは馬車の中から外を眺めていました。揺れが気になります。これは、お尻が痛くなりそうですね…。
「ねーアリスー、これお尻痛くなるー。」
「プリム、それは皆さん同じ事ですよ。」
「むぅー、なら仕方ない。」
そう言いながらも彼女は、容赦なく私の膝に座ってきました。ニコニコ顔で甘えてくるのでついつい許してしまうのですよね…。
「それにしても、お若い女性が妖精連れて旅とは珍しいですな。」
「えぇ、色々とありまして。」
間違ってはないですよ、あの自称女神の所為で私の人生を乱されてますからね。
「それは大変だね。あの方向からって事は、クラフティンベルからでしょ?」
「えぇ、そうですよ。」
「ふーん、あそこって大変でしょ?変な占い師がいるって話を聞いたよ?」
「変な、占い師…?」
この方は一体何を言っているのだろうかと思いました。
彼女は耳のそばで囁くように言いました。
「信用できない感じの女が神官たちをかどわかしているんでしょ?」
その言葉でピンときました。この人は、まともな人なんだと。初めてでは無いでしょうか、まともな人と言うか、女神の影響を受けていない者に会うのは。
「はい、そうなんです。両親や幼馴染ももう…。」
「そっか、なんかごめんね?」
「それで、質問なんですけど、魔王っているんですか?」
なんか微妙に言いにくそうな顔しています。
「あー、いるのはいるよ?。ただ、魔王って言っても役職みたいなものなんだって。」
「役職?」
「国を運営していく人、つまりは王様ってだけみたい。」
初めて知りました。ただの王様と変わらないそうです。
私はプリムの頭を撫でながらそう考えていました。どうやら見た目も人と変わらない様ですし、あのエセ女神は一体何がしたいのでしょうか…。まぁ、考えても分かりませんよね!。
「あの、ユウリさんはなぜサンテグリルへ?」
「知り合った子がさ、倒れたみたいなんだ。ちょっと心配になってお見舞いに。」
「そうだったんですね。なんか、ごめんなさい。」
「ん?なんで謝るの?」
キョトンとした顔で見てきます。いや、何故って倒れたんですよね?それって結構ヤバくないですか?。
「あ!もしかして重病とか思った?」
「え、ま、まぁ…。違うんですか?」
「あー、知り合いによれば精神的ショックらしいけど、多分大丈夫よ。……。」
最後の方が聞き取れなかったんですけど、ユウリさんが大丈夫と仰るのなら何か対策されているのでしょうしね。私は気にしないことにします。
サンテグリルまでかなりの距離があるので、野営をしながら進んでいかなければいけません。こればかりは仕方ありません。
初の遠出でしかも野営です。寝付けずにいたので少し夜風に当たる為、私はテントを後にするのでした。
「ふんふーん、ふんふん、ふんふふーん。」
小気味好い鼻歌が少し先から聞こえてきました。聴いたことのないメロディで、でも何故か心に残ってしまいそうなそんな曲でした。
鼻歌の主はユウリさんみたいでした。
「寝なくて大丈夫なの?」
気配を消していたはずなのにこうも簡単に気づかれてしまいました。やはりこの人、強いですね。
「ふむ、考え事かな?。勇者アリスちゃん。」
「っ!?」
「でも、君はあの暴走娘に巻き込まれただけみたいだね。」
「そうなんですよ!。全くなんなんですか、あの自称女神は!!。人の人生を生まれる前から滅茶苦茶にして!何とかして引っ叩いてやりたいんですよどうしたらいいですかね!周りの人はなんか洗脳された様に女神様女神様女神様!あんなの唯のイタイだけの女じゃないですか!」
お恥ずかしながら、色々とぶちまけちゃいました。いやはや、スッキリしました。
「いや〜、出たね〜。」
「当然です、どれだけ溜め込んでたことか!」
「まぁ、分からなくもないけどね〜。ちょーっとおいたが過ぎるかなって思ってたところだし、ね?」
「何かするんですか、するんですね!私にも是非参加させてください!!」
ふふふ、私の人生を縛った事を後悔させてやりますよ。
「おーい、アリスちゃん笑いが漏れてるし、怖いよー?」
おっと、いけません。気を付けないとですね、淑女ですからね。