錬金秘密道具に、天使陥落。
遅くなりました!
何処でも行けるドアをくぐり抜けると、そこには大小浮かぶ島々がありました。眼下には雲海が広がっており、下が見えません。
「すごい…。」
絶景、と言うよりは神秘的と評した方が正確です。確かに絶景ではあるのですが、ボクは地上の方がいいです。
(うわ、下見えない…。)
「おぉ、おぉ、凄いのう!」
「ライゼルカ、リファナ、危ないからこっちにおいで」
「うむ!」
(はーい)
リファナは出会った時の威厳が無くなってどんどん可愛くなってます。ボクの隣をトコトコと歩いていきます。
ライゼルカは手を繋いでいるので、リファナとは反対側にいます。なんでしょうか、この我が子と飼犬と一緒に散歩する図が出来上がりました。
「はぁ〜、良いわぁ〜、最っ高に良いわ!!」
「ふむ、ほのぼのするの〜」
後ろにはボク達を見てにやにやしているシャンティ姉さんとおじいちゃんがいます。
見世物じゃ無いんですけど…。でも、子供か〜。ボクは結婚とか考えたこと無いけど、子供は欲しいかな。
『でも、そうなるとリーンが産まなくちゃいけないのよ?』
「うん、そうなんだよねぇ…。」
そう、問題はそこです。今は自分の事で精一杯ですけど、いずれ誰かを好きになって結婚して子供を産む…。無理っぽいんですよねー。
「ねぇ、イヴ。ボクは子供産めるかな?」
『生物学的には大丈夫よね。ただ、周りが許さない。主に私とシャン姉が。男殺しそうで怖いわ…。』
怖いよ、イヴ…。まあ、その時が来れば分かるよね?。そう思ってこの話題を終えたのでした。
そんな話をしつつ、しばらく歩いたら物凄い数の花が咲き乱れた場所に出ました。色とりどりの花が、風に花びらを舞い散らせて素敵な場所でした。
「さぁ、ここでお昼にしましょう?」
シャンティ姉さんの台詞に皆が同意します。確かに結構歩いたので、お腹が空いています。
シャンティ姉さんがバスケットからお弁当のサンドイッチを、おじいちゃんがレジャーシートを広げた上にタッパーごと置いていきます。
「結構作ってきたのだけれど、足りるかしら?」
「ふむ、食べ盛りの子たちがおるし足りぬかものお」
ライゼルカは楽しみすぎるのか目がキラキラとしていますし、リファナはおまけに尻尾までブンブンと振っています。
ボクはその隙に錬金秘密道具のノビールジャグチードリンクVerです。某青い猫型ロボットさんが出す伸びちゃう水道管のドリンバージョンです。ワンタッチで各種のジュースが出てくる優れものです。
「ひとまずコレですよね!」
そう言ってボクはコーラを選択。コカなのかペ○シかは秘密ですが、コップに注ぎます。黒く炭酸がシュワシュワと泡を立て何とも美味しそうです。
一口飲んだら懐かしのコーラでした。実験も兼ねていましたので味まではまだ確証ありませんでしたが、これは成功ですね!。
「ふむ、リーンよそれは何を飲んでいるのかの?」
「コーラですけど?」
「「……、はい?」」
シャンティ姉さんもおじいちゃんもポカンとしています。
(コーラってなにー?)
「コーラ、なんかシュワシュワだのぅ…」
コーラに興味津々の二人?にボクは簡単に説明します。
「コーラって言うのはね、ボクが元々いた世界の飲み物だよ。」
「ほぉー。」
(へぇー。)
簡単な説明に二人は同じリアクションをして、思わず吹き出しそうになったのは秘密です。
「いやいやいや、何でコーラがあるの?」
「シャンティよ、まさかあれでは無いか?」
焦りまくっているシャンティ姉さんの横でおじいちゃんがノビールジャグチーを指差しています。
「何処でも行けるドアに加えてあの蛇口か…。」
「どうしてあの子はあんな版権的にヤバそうなものばかり…。」
「ひとつ聞くぞ、リーンよ。もう無いか?。」
「えっと、その、ナ、ナイヨ?」
チラチラと目が泳いでしまいます。だって、ねぇ?。持ってきているものがまだ有るんですよ?。
「出しなさい!。」
「は、はい。」
シャンティ姉さんのプンプン顏にビクビクしつつ、もう一つの錬金秘密道具のレジャーシートを取り出します。
「ふむ、レジャーシートだのう。」
「お祖父様、あの子が作る錬金道具です。普通なはずはありません!。」
「して、どの様なアイテムなのかの?」
「ぐ、グルメレジャーシート…。」
またしても、シャンティ姉さんとおじいちゃんが口を開けて止まっています。
「のぅのぅ、グルメレジャーシートとは何なのだ?」
(うん、気になる。)
「えっとね、グルメレジャーシートっていうのは、例えばステーキとか食べたいなーって思ったらそれが出てくるの。」
「おう!それはすごいではないか!!」
ライゼルカとリファナはよだれを垂らしながら、目を輝かせています。まぁ、わからなくもないですね。食べたいものを何処でも食べれるわけですからね。
冒険者の人や軍はどんな事してでも欲しいでしょうし…。あげませんけど。
「ふぅ、仕方がないわ、足りないお弁当はレジャーシートを使いましょう。」
(わーい)
「やったのじゃ!」
「久々にパッフェでも食べるかの」
「おじいちゃん、パッフェじゃなくてパフェだよ。」
そうじゃったかの?と言って結構甘い物に目がないおじいちゃんです。ケーキとか大好きなんで、健康面で心配です。
「こぉ〜らぁ〜」
ふと遠くから何やら声が聞こえてきましたけれど、どちら様でしょうか?。
「そこの人間たち〜!、ここは天界の立ち入り禁止区域なんだから〜!。」
そんなことを言いながらフラフラと飛んで来る天使さんです。かなり可愛い顔立ちに、田○ゆかりさんを彷彿とさせる声ですね!。
そう思いながらドンドン迫ってきていますが、あの方あんなフラフラでちゃんと着地出来るんでしょうか?。不安です。
そう思っていた矢先に着地に失敗しゴロゴロと転がってくる天使さん。これだけで分かります、この方きっと残念系な方なんですね!。
「残念系ゆうな!。これでも私は熾天使なんだから!」
「あら、ちょうど良いわ。あなたのオーブが欲しかったのよ。渡しなさいな。」
「ダメに決まってるじゃん!そんな事したら私力を取り戻すまで何もできないじゃん!」
「どうせこの世界に神は居ないんだから暇でしょ?」
「そうだけど、そうだけど!。」
「それに、私にじゃなくてこの子に、よ。」
「ふぇ?この子が何で熾天使のオーブを?」
「錬金術の素材よ。」
「あー、成る程!。……いやいや、この世界で錬金術は廃れていってるのに?」
あ、やっぱりそうなんですね…。まさかとは思っていましたけれど、それはそれでちょっぴり寂しいです。錬金アイテムは便利なんですけどね…。
「なんでそんな事になってるのよ?」
「それはまぁ、今この世界を仕切ってるヤツがなんか錬金で手痛い目にあったらしいってことぐらいしか知らなーい。」
「そんな個人的な感情でこの星の文明を遅らせてるの?。そいつ馬鹿ね。」
「うぁちゃちゃ、それは厳しい意見だよー。」
何とも、ついて行き辛い話ですね!。スルーしてリファナ達と遊びましょう!。そうと決まれば、四次元巾着からこれをっと。
「ただのフリスビー!。」
「「それアウトだから!!」」
あう、変な話してる2人に突っ込まれてしまいましたがこのフリスビーでリファナと遊びましょう。
(なにそれー?)
「フリスビーっていって、ボクがこれを投げるからリファナが取ってくるの。」
(ふーん、なんか良い運動になりそ。)
「じゃあ、行くよー?」
フリスビーを軽く投げると少し曲がりながら緩やかに地面に落ちていきます。その途中でリファナが見事にキャッチし走ってこちらに来ます。
心なしか、尻尾がブンブン揺れています。
「はーい、も一回!」
今度は遠くに飛ぶように高めに投げたのがいけなかったのか、天使さんが飛んでキャッチしていました…。なんで取っちゃうんです?。そもそも貴女はシャンティ姉さんと話していましたよね?。
見てください、リファナの尻尾が萎れていますし顔も暗いじゃないですか…。
嬉々とした顔でフリスビーを持って来た天使さんの頭にチョップをお見舞いです。
「いだっ!。何するんですかー!」
「それはリファナに対して投げたものです、貴女にではありません!。」
そう言うと、天使さんはリファナをひと睨みしました。
「こんな天使さんは放っておいてご飯にしましょう。ライゼルカー!ご飯にしますよー。」
「おぉー!やっとこさなのじゃ!」
(ごっはん、ごっはん!)
グルメレジャーシートの広げて、ボクはライゼルカとリファナが食べたいものを思い描き出現させます。それをそれぞれの前に出すと興奮気味で鼻息を荒くしていました。
「すごいのじゃー!」
(うへへ、おいしそー。)
2人とも、女の子がみっともないですよ。と言おうとしたら、もっと酷いのがいました。
天使さんです、あれはヤバいです。よだれはダラダラと流れ、目は血走っていました。
「……食べたいんですか?」
〈コクコク〉
そう言って壊れたおもちゃのように縦に首を振っていました。
「しょうがないですねー。でしたら熾天使のオーブをください。」
「どうぞ!!」
速攻で差し出してきました。何とも、チョロすぎやしませんか?。まぁ、ボクとしては有り難いんですけれどね?。
そうして、熾天使のオーブは無事に入手出来ました。何と錬金秘密道具に陥落してしまうとは、秘密道具恐るべしでした。
先日誕生日を迎えました。
一年って、経つの早いですよね〜。
誕生日の日はすき焼きでした!
うまうまでした!
今度ケーキ買って食べたいな〜




