酒場でイロイロとありまして。
珍しく短い期間で更新です。
このペースで出来れば良いんですけどね〜( ´•ω•` )
「ありがとうございました〜」
最近は傷薬だけじゃなくて、色々な物が売れていきます。岩石破壊用のミニ爆弾のハッカくんや、魔物除けの鈴のリンリン鈴とか。
ありがたい事です。鍛冶屋さんからはインゴットが無いか尋ねられました。勿論ありますけれどね!。結構効果が付与されているので渡せませんでしたけど、ごめんなさい鍛冶屋のおじさん。
『流石にコレは渡せないわよねぇ〜』
「うむ、コレは無理じゃろうなぁ〜」
「…、分かってるよ?分かってるからね!?」
そう、今あるインゴットに付いている効果が問題です。
破壊不能、全属性、必殺の一撃、因果律操作。こんな物世に出してはいけません。このインゴットで作った武器は何者にも破壊されず、全ての属性を持ち、確率で一撃で相手を殺してしまう。更にこの因果律操作で必ず命中、必ず効果を発動させるえげつない代物です。
大変危ない代物なので、四次元巾着の中に肌身離さず持ち歩いてます。ぶっちゃけると、神様さえも殺せてしまえる様な物です。
それはさて置き、傷薬の在庫が無くなってきたので調合しないといけません。調合はいたってシンプルで錬金釜に緑癒草と中和剤を放り込んで混ぜるだけです。緑癒草だけじゃ強すぎるので、中和剤を入れて薄めるわけです。
「あ、緑癒草がない…。」
『今日は面倒よねぇ…。』
「うぅむ、取りに行かねばのぅ…。」
イヴ、それはないよ…。ボクはため息をつきながらジト目になって鏡を見る。
『べ、別に嫌ってわけじゃないの、よ?』
「ホントかなぁ〜」
「怪しいもんじゃのぅ〜」
『リーンに言われても、あんたに言われる筋合いは無いわ!』
「ふん、そんな口は勝負に勝ってから言うんじゃのぅ〜♪」
『ホントにムカつくわね、アンタ!?』
何時ものやり取りが始まったので、二人を放置ーー1人はボクの中ですけどーーしてひとまず緑癒草を見に行きます。たまに近くの道具屋で売っているのでそれを期待したい所です。
店を準備中にして外出です。とは言っても、目と鼻の先なんですけれどね。道具屋のドアを開けるとカランカランと小気味良いドアベルが鳴ります。ウチの工房のより良い音でちょっと羨ましいです。
さてさて、今日はどんなラインナップでしょうか!。
ふむふむ、回復剤や寝袋、解毒薬にピッケルとシャベルなどなど冒険者の人には必需品が揃っていますね〜。残念ながら、緑癒草は有りませんでした。拝見していると、店主のおじさんが顔を出していました。
「おや?リーンちゃん、今日はどうしたんだい?」
「緑癒草が切れちゃったから無いかなって、見に来ました。」
「緑癒草かぁ、ちょっと難しいかもねぇ。」
「?、どうしてですか?」
「この近くの緑癒草の群生地で、変わったウルフが居たらしいんだよ。何でも銀の毛並みだったとか。」
「銀狼、ですか。」
「それと、ギガントベアーも居たらしくてね。余計に緑癒草が手に入らないんだよ…。」
「厄介ですね〜。」
「酒場に行ったら何か詳しい奴がいるかも知れないから、気になるなら聴いてみたらいいよ。」
「ありがとうございます、こっちとしては死活問題なのでイロイロ聴いてきます。」
そう言って道具屋を後にする。実は、あの道具屋さんには一部の商品を置かせてもらっていたりします。直販しているものと違って、完全に冒険者さん用の物とかですね。テントとかです。結構売れてるみたいで、追加発注がたまに来ますよ。
「銀狼だって、モフモフかな?」
『硬い毛だったら痛いわね。』
「刺さる!?」
『さぁ、どうかしら?。実際触らないと分からないけれど。』
そんな会話をしていると、酒場に到着です。ガチャリと入り口のドアを開けると、一斉に視線がこちらを向きます。マスターもチラリとこっちを見て、一言。
「珍しいな、リーンがここに来るのは。今日はどうした?」
昼間からお酒を呑んでいる冒険者の人が、ジロリとこちらを見ていました。嫌な視線ですね、アレは。
「この近くの緑癒草の群生地で銀狼とギガントベアーが出たって聞いたんですけど…。」
「なんだ、耳が早いな。そこに居る馬鹿どもが、ギガントベアーを前に逃げ帰ってきやがったんだよ。」
「ギガントベアーって、Cランクモンスターですよね?。彼らは…?」
「Bランク冒険者だ。」
そう言って、マスターは先ほどの嫌な視線をこちらに向けていた冒険者達を顎でしゃくった。それと一緒に侮蔑の視線をマスターは送っていましたけれど…。今日のマスターは不機嫌さんです。
「マスター、今日は何だか不機嫌ですね?」
「当たり前だ!。お前さんの生活の糧の一部である素材の群生地にモンスターがいた挙げ句に討伐もせずに酒盛りしてる馬鹿どもを相手にしているんだぞ!、不機嫌にもなるわ!!」
マスターは42歳の妻子持ちです。マスターの娘さんのリネットちゃんが、ボクに懐いてくれているのでそれもあってボクの事も娘みたいに見ている節があります。
「そうは言うけどよ、ありゃあ俺たちでも無理だぜ?。赤い毛並みのギガントベアーなんか初めて見たぜ。ありゃあ、亜種か希少種だ。そうなると、AかA+ランクに上がるぜ!。流石に無理ってもんだ。」
そう言いながら、エールをゴクゴクと呑みそのままおつまみに手を伸ばしていました。
「そんな事より、そこの嬢ちゃん酌してくれよ!」
「そうそう、俺ら客なんだからよ〜」
「え?、どうしてですか?。」
「はっ?。いや、だから俺ら客じゃん?」
「そう、ですね?。」
「マスターの娘なら、酌してくれても良くね?」
「ボク、マスターの娘じゃないですよ?」
「「はぁ??」」
「いや、だから、ボクはマスターの娘じゃないですからお酌する必要無いですよね?」
「いやいや、俺ら散々マスターから話聞いてたぜ?」
何か、嫌な予感がしますね。何言ったんでしょうかね、この人は。ジト目で見たら、顔逸らしましたよ!。
「やれ、上の娘のリーンがってアホみたいに…」
「誰がアホみたいだと、この野郎!」
「だってそうだったじゃねえか!緩みきった顔で自慢してただろうがよ!」
「悪りぃかよ!」
「マスター、勝手に娘にしないでよ…。」
そう言うと、バツが悪そうにしながら言います。
「す、すまん。だかな、カティアも言ってるからな?あとリネットもお姉ちゃん自慢してるし。」
家族ぐるみで!?。どうなってるの、マスターの家は!?。そう思ってくれるのは嬉しいですけどね?、でも本人に確認とかさ、取ろうよ…。
「もう、いいよ。近々ライゼルカと一緒にお邪魔するからね。」
「お、おう!。カティアとリネットも喜ぶぞ。」
「じゃあね、お父さん?。」
ふざけ交じりにそう言って外に出た所で、マスターの叫び声が聞こえたのでした。
「いぃぃぃよっっしゃあぁぁぁぁ!?」
何だろう、言わなきゃ良かったって思いながら、緑癒草の群生地に向かって走り出したのでした。