いつの間にやらサンテグリル
お待たせしました!
ブックマークつけてくれている方、ありがとうございます。
ライゼルカの家からなんと、空へと飛び立ちました。ライゼルカの背中に乗って飛んだのはいいのですが、ボクは正直言って高い所があまり好きではないです。大抵の人がそうだと思いますけどね…。
ライゼルカの鱗の感触を堪能していたので気にしていなかったのですが、ついと言うかうっかりと言うか、見ちゃいました。下を、それはもう、ガッツリと。
鏡を見なくても分かるくらい血の気が引いています。冷たいです、ヤバいです。カチカチと歯が鳴り始めてきました。
「ダメダメダメ、これはダメだからぁ〜!!」
『ちょ、ちょっと、落ち着きなさいよ!』
「無理無理無理、こんな高さは絶対に無理!」
『なんなら私が変わるから!』
「ひいぃぃぃぃ!?」
そのままボクは気を失ってしまいました。気がついたらイヴが表に出ていました。
「はぁ、全く、高い所が苦手なら最初から言えばいいのに…。」
(お主やわしに心配かけぬ様にしておったのではないか?)
「それにしても、よ。苦手なものは苦手と言ってくれないと私だって分からないわ。」
(まぁ、そうだのぅ)
「もう少し頼ってくれてもいいと思うのだけれどね?」
(仕方あるまいて。この様な高さで飛ぶなど人の身では無理よのぅ。)
「で、後どれくらいで着くのかしら?」
(うぅむ、このペースならば昼前には着きそうだの。)
「話は変わるのだけれど…。家にいる時のあの子に対しての甘えようはなに?」
(なんじゃ、羨ましかったか?うん?)
「ばっ!べっ、別にそんなんじゃないわよ!。」
(あの時の様に姉さんと呼ばんのか?呼ばんのか?)
「あんたねぇ、今ここで叩き潰してやりましょうか…?」
(ほぅ、出来るものならやってみるが良いわ!)
そんな時にどこからともなく、剣戟の音が響く。イヴは下を見ると人と亜人種の混合パーティが魔物と戦闘していた。
「アレって確か錬金術の素材になる魔物よね…。」
(なにをブツブツ言っておるのじゃ?)
ニヤリとしたイヴに、ライゼルカは嫌な予感が過った。
「ライゼルカ、あそこに降りなさい。」
(何を言っておるのじゃ?)
「アレよ、アレ。丁度苦戦している様だし、あの魔物を狩りに行くわ」
(何故あの魔物なのじゃ?)
「そりゃあ、錬金術の素材を取ってあの子をビックリさせないと、ね?」
(ほぅ、それは面白そうじゃな!)
そう言ってライゼルカは急ぎ降り立った。ライゼルカの咆哮に魔物と冒険者であろう者たちがこちらを向いて驚愕の表情を露わにする。それもそうだろう、雷天龍というとてつもない存在が近づいていたのだから仕方がないといえる。
ライゼルカはある程度の高度で停滞し、イヴが飛び降りる。あまりの身のこなしに感嘆していたが、冒険者は気づく。この女、今雷天龍から降りてきたと。
「そこの冒険者、悪いわね。その魔物を私に寄越しなさい…。」
そう言った瞬間に魔力を全身に廻らせ強化すると同時に殺気を放つ。
暴れる魔力の奔流が紅蓮の髪を揺らす。圧倒的強者を前に冒険者の歯がカチカチと音を立て身体はガクガクと震える。数多の苦難を乗り越えてきたであろう冒険者たちの中には、その股を濡らす者までいたがそれは恥ずかしい事ではない。それ程までに今の彼女はその場を支配していた。
「無言は肯定と受け取るわ。」
(程々にしておくのじゃぞ?)
「さて、私の程々と他の人間の程々がどれ位違うのかは分からないけれど、善処するわ…。」
そう言ってイヴは一瞬のうちに魔物の懐に入り、その頭を掴むと片手で持ち上げた。魔物はもがくがそのまま頭を握り潰され絶命した。
続け様にもう一体の頭を掌底を叩き込み、消し飛ばす。まるで噴水の如く勢い良く血が吹き出し、雨の様に降り注ぎイヴに妖艶さを出していた。
あっという間に魔物を狩り尽くし、その死体に手を入れ弄る。中から核である、魔魂石を取り出した。
「それなりの純度ね。」
(及第点かの?)
「そうね、ギリギリ…と言ったところかしら。」
(では急ぐとしようかの。)
「少し待ってくれるかしら。」
「なんじゃ、まだ何かあるのか?)
「すぐそこに一角うさぎがいたから角を取ってくるわ。」
そう言い残し茂みに入っていったイヴ。数分後戻って来た時に手には宣言通りに角を持っていた。
「さ、行くわよ。」
(うむ、先を急ぐかの。)
イヴはライゼルカに跨り、その場を離れて行った。サンテグリルまでは目と鼻の先程度の距離だったのでそれ程時間がかからずに到着した。逆にリーンが気絶していたからここまで早く到着したと言っても過言ではなかった。
サンテグリルの少し手前でライゼルカは龍化を解いて、徒歩で門まで向かった。門まで数メートルの地点でリーンが目を覚ました。
「あら、起きたのね?」
「む?リーンかのぅ?」
『ここは?』
「サンテグリルの門近くよ。」
『もう着いたの!?』
「ちっとも起きないからよ。」
『うーん、それは、ごめん…」
「別に謝らなくてもいいわ、それより表に出る?」
『そうだね、出ようかな。』
そう言って入れ替わり、伸びをすると違和感に気付く。ぺちょりとした感触。
それは、イヴが魔物との戦いで浴びた血に他ならない。顔が青ざめていく様を、ライゼルカは見ていた。
「んもう、信じらんない!!!」
リーンの怒りの叫びは空に木霊するのだった。
次回の更新は出来るだけ近日中にしたいと思います!
ストックなんて有りませんから大変ですが頑張らせていただきます!
素材採取にはどうしても戦闘が入ってしまいがちなので、ご容赦を!
最近は気温が低くなってきましたので皆さんも体調崩さない様気をつけてくださいね!
ではでは、次回の更新でまた会いましょう!