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雷天龍の家から

 リーンは大きく深呼吸し、清々しい程に澄みきった空気が肺を満たす。日が昇り始め、暖かな光が辺りを包む。


「んぅ〜、やっぱりサンテグリルの朝とは違いますね!。気持ちいいです。」


 そう言ってボクは、ストレッチを始めました。本当はラジオ体操が良いんですけどね。そう思いながらも、身体をほぐしていく。


「身体が、硬くなって、ます、ね!。これ、は!、いけ、ません!。」


 そう言いながらも、普通の人からしたら十分に柔らかい方であるが…。


「ふわぁぁぁ、なんじゃ、こんな朝っぱらから…。」


 髪をボサボサと爆発させ、寝間着も着崩し何ともだらしの無い格好のライゼルカが顔を出す。


「起きた?。なら顔を洗ってシャキッとしてきなさいね?。」

「んぅ?、だが、早過ぎぬか〜?」


 寝ぼけ眼でそう言うライゼルカだが、リーンはニコニコしながら顔を近付け言った。


「早起きは三文の徳って言って、良い事があるもんだよ?」

「んぐぅぅ〜〜。」


 その瞬間にリーンの顔が固まる。リーン、もとい不破 鈴音は教育に関してはそれなりに厳しく育った。まぁ、遊ばれる事もかなりあったのだが。そんなリーンが話している時に、ライゼルカは眠りこけ話を聞かないなどといった行為をしたのだった。


 プツンと、それはもう小さな音だが確かに切れた音がした。

 だらし無い格好で眠りこけるライゼルカのお尻をそっと剥き出しにする。次の瞬間には、パシンとそれはもう盛大に音が鳴った。


「んぎゃぁぁぁぁ!?」


 そして、ライゼルカの悲鳴も木霊する。それでも止まらないリーンの手はパシンパシンと小気味良い音を量産し、更には悲鳴までもおまけで量産していた。


「や、やめ、やめる、の、じ、じゃ!!」

「人が、話して、いる時は、ちゃんと、聞かないと、ダメでしょう!」


 問答無用でライゼルカの尻を叩き続けるリーン。最早オカンの躾けである。内心でそう思ったイヴであったが、次の瞬間後悔した。


「イヴ?。誰がオカンだって…?」


 リーンの今までに無い威圧感。何時も穏やかなリーンだが、このとき2人は絶対に今後怒らせてはいけないと心に誓ったのだった。


「ひぐ、うぐ、い、痛い、ぐす、ひっく」


 ライゼルカは目に目一杯涙を溜め、必死に泣くのを我慢している。リーンはふぅ、と息を吐き出し言った。


「ボクは何もライゼルカが嫌いでお尻を叩いたわけじゃ無いんだよ?、それは分かる?」

「ひっく、うん」

「じゃあ、どうして怒ったか分かる?」

「話、聞かずに、寝た、から?」

「うん、そうだよ。ボクはね、ライゼルカ。あなたが一緒にサンテグリルに来るのなら、人の話を聞くって事は大事だと思うの。違う?」

「ひく、違わない。」

「人と関わって生きていくのなら、モラルも必要だよね?。街は怖い人とかもいるから、本当に気をつけなきゃダメなの。」


 ぐすぐすと、鼻を鳴らしながらしっかりと聞くライゼルカ。その姿はまさに母娘の図である。その様子にイヴは良いなぁと内心で羨む。なんだかんだでリーンの事が大好きなイヴなので、抱きしめられているライゼルカをかなり羨ましがっていた。


 それからというもの、ライゼルカはリーンには頭が上がらない。


「目が腫れちゃったね、これは余計に顔を洗ってこなくちゃね?」

「うん、行ってくるのじゃ!」


 そう言って顔を洗いに行ったライゼルカを見送り、リーンは台所に立つ。何故か割烹着があったのでそれを装着し今ある材料を確認する。


「メインをどうするか迷いますね。ひとまず和食は出来そうですね。」


 リーンはそう言って手早く調理を開始する。まずはお米から。しっかりと研いだ後、水に浸して白くなるまで置いておく。水分を吸わせたお米とそうでないお米とでは炊けたときの出来がまるで違うのである。

 その間に一品、玉子焼きを作る。砂糖と塩を入れ甘めにする。形は厚焼きではなく、プレーンオムレツのような形だ。中はトロトロに仕上げるので余熱で固まってしまわない様に手早く形を作り皿へと移す。

 何故か鎮座している冷蔵庫を開けると、豆腐と魚を発見する。


 魚は鱗を包丁の背で剥がしてしまい、腹を切り内臓を取り出す。血を洗い流し、バツ印の切り込みを入れ塩を振り焼き始める。

 その後に玉ねぎ––の様なもの––の皮を剥き、4分の1程度を包丁で切っていく。昨晩にしれっと出汁を作っていたので、それを使いお味噌汁を作っていく途中で後ろから軽い衝撃を貰う。見やると顔を洗い終えたライゼルカが抱きついていた。


「ん?、どうしたの?」

「それ」

「この割烹着?」

「それ、かか様のじゃ。」

「あ!?ごめんなさい、大切なものだったのね。」

「良いのじゃ、リーンにだったら来て欲しいのじゃ」

「うん、ありがとうね」


 そう言って頭を撫でると気持ちよさそうに眼を細める。料理の途中だった為、すぐに切り上げ再開しようとするとライゼルカが視線でもっと、もっとと訴えていた。


「うふふ、料理が終わって御飯食べた後にまたしてあげるから居間で待っていてね?」

「うむ、約束なのじゃ!」


 そう言って居間へと走っていった。もし自分に子供ができたらこんな感じなのかと、一瞬想像したリーンだがそんな日は来る事がないと思って忘却の彼方へとその想像をぶっ飛ばした。

 リーンはこの世界でも人目をひく容姿である事に変わりはない。冒険者の間では、わざと傷薬を買う為に怪我をする輩までいるという始末だがその事をリーンは知らないのであった。


 そうこうしているうちに、あっという間に出来上がる料理たち。皿に出来立ての料理を盛り付け、お盆で運んでいく。


「出来たよ〜。」


 待ってましたと言わんばかりに鼻息を荒くして座っているライゼルカ。その光景に微笑ましさを覚えたリーンであった。


 食後にライゼルカの頭を撫でた後に、髪を結っていたリーンは「そろそろ帰らなくちゃね。」と零す。


 それを聞いたライゼルカは薄い胸を張り、自信満々に言い放つ。


「ならば、そろそろ出立しようぞ!」

「あはは、急かせた様でごめんね?。ボクもやらなきゃいけない事があるからさ。」


 申し訳ない顔をしながら言う。即座にリーンは準備を終えた。元々身一つでこの渓谷に来たので荷物がない。ライゼルカも、鱗を変容させた服なので基本的にはそのままの様だった。


 ライゼルカが竜化しその背中に乗るリーン。リーンは鱗が痛いかな?と思ったが、どうやらそうでもないらしい。


「すべすべだね〜。」


 そう言って終始撫でまわしていたのだった。


「あまり触るでない、くすぐったいであろ…。」

「ごめんごめん、肌触りが良くってつい。」


 そんな言い訳をしながらも、手が止まる気配がないリーンだった。そんな会話の後、リーンを乗せたライゼルカが渓谷を出て行ったのだった。

最近、虫がすごいんです。

大量なんです、嫌なんです!。



羽アリとか、変な小虫とかがいっぱいで…。


外でたくないです( ´•ω•` )

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