魔王のテスト

　世の中には、いい先生、面白い先生、熱血な先生、近寄りがたい先生、怖い先生、美人な先生、残念な先生、親しみやすい先生など数多くいる。

　それは先生のキャラ付けというわけではないだろうが、先生の個性であり、先生としての生き方といってもいい。　

　時代にそぐわなくても、時代に迎合するような先生でもいてもいいと思うし、いるのは当たり前という考えでなければ、時代と言う波にのまれ、沈んでしまうことだろう。

　だから、こんなことを思うのはある意味間違っているだろうし、ある意味正しいとも言える。

　うちの担任は頭がおかしいのではないだろうかと常々思っていた。

　頭がおかしいというのは、世間的には言い過ぎかもしれないが、その場合は世間が間違っているのだろうと僕は思う。

　理由を挙げるとするなら、まちがいなくこのテスト問題だ。

　解答欄に大きな×印が描かれ、僕の名前の横にデカデカと０が一つだけ書かれているテスト問題だ。

　テストがいやだからとか、０点だから、担任の悪口をいっているのではないという事を伝えたいが、このテストが嫌だという個人的な感情がこもっていると言うことを加味しても、このテスト問題で担任が頭のおかしさが分ると思う。

　そもそも、それは何のテストだといわれたら教科が分類しようがない、国語のような読解力を求められていたのかもしれないし、数学や科学のような計算が求められていたのかもしれないし、社会のように歴史的思考などが求められていたのかもしれないが、先生の頭がおかしいのか、それともゆとり世代に何か厳しさか、僕らがゆとり世代だからこの問題を出したのかはさっぱりである。

　それでも担任の頭のおかしさが分る、テストの問題だ。

　この問１から４は、あなたに魔王らしさを求める問題です、魔王になったつもりでお答えください、採点基準は魔王の要素があるかどうか判断します。

　問１　道に困っている人がいます、あなたならどうしますか？

　問２　日本に魔王の城を建てようと思います、そこで資金調達を優先する幹部Ａは東京を押しています、あなたと恋仲にある幹部Ｂはリゾート地の北海道か沖縄がいいとねだっていますが、あなたはどうしますか？　

　問３　日本征服まであと一歩、その時点であなたが取るべき行動を答えなさい。

　問４　勇者と名乗る人物があらわれました、あなたが取るべき行動を答えなさい。

　魔王として答よと言う設問自体意味がわからないが、最初の一問目から四問目まで、およそ人生で質問されることの無いものがテストとして出てきたときは、目をまるくしたし、言葉もそうそうに出なかった。

　もちろんクラスの真面目を代表とする面々は抗議したが、テストは習ったものだけでるとか一夜漬けで乗り越えるとか甘い考えしているから駄目なんだとか、すこし考えてみれば誰にだって解ける、こんな簡単な

問題もできないのに、普通のテストとかお前らにできるわけないだろう、といった趣旨の言葉を先生に言われてしまったのだ。

　テストを取り替える気も無い以上、このテストを解かなければ赤点、補習、内申等々に影響してくるし、という事で、皆しぶしぶといった様子で取り組んだ。

　先生にいわれるまでもなく、すこし考えれば誰にだって解けるのだからと皆テストに正解だと思われる答を記入していく。

　そして僕も答案に書き込みをした。　

　問１　うその道を教える。

　問２　幹部Ｂの意見を取り入れる。

　問３　裏切り者がいないか、調査する。

　問４　戦力という戦力を勇者にぶつける。

　そして僕はこの答えで大きな×を貰う。

　じゃあ何が正解なのだと言う生徒を黙らせるために、皆に答案用紙を返したあと担任は、ご丁寧に模範解答とイヤミが添えられていたプリントを生徒に配った。

　模範解答

　問１　町という町を滅ぼし、いくあてを無くしながらさまよいつづけさせるが模範解答です。

　この問で多かったのは、嘘をつくや無視をすると解答する人が多かったですが、よく考えてください、あなたが一般人がやるようなことをして、魔王になれますかと先生は言いたい、それはただの悪人です。

　問２

　　自分の建てたいところに建てる、だって魔王だから。

　　この問題は易しすぎましたかね、残念ながら幹部Aとか幹部Bとか一々気にすることは無いという魔王の器の大きさをはかる問題でした。

　かの秀吉は日本は全てわしの庭と言った事もあるとか。これぐらいの器量はもってて欲しい。

　問３　ふだんどおり過ごすがもっとも魔王に近いでしょう。

　　この問の解答で　裏切り者を粛清するとか用心するとかそう答える人が多かったですが、世界征服を目論む魔王たるもの裏切りとか小さいことを気にする、そんなやつが魔王を名乗れると思ったことを恥じるべきです。

　普段どおりやっていれば、結果はついてくる。

　慢心こそいえ、慢心してもなお世界征服できるのが魔王の華であり魔王の実力です。

　問４　何もしない。

　問３を正解したかたならわかると思いますが、勇者を名乗ったところで、それが確かなものか分りませんよね、有象無象の輩の情報を一々魔王が気にしてもしょうがありません。

　なお、世界の半分をやるとか、勇者を殺すように仕向けるとかゲームのやりすぎですよ。

　もちろん模範解答の用紙と返却された答案用紙は丸めてゴミ箱へとすてた。

　僕がテストに解答した答が間違っている腹いせでそうおもうのではない。

　たとえテストの問題に間違っていようと、僕の担任にたいする思いはかわらない。

　この担任は頭がおかしい。