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夏生詩集2

細い背中 赤い自転車

作者: 夏生

年賀状の区分け

高校生のとき

はじめてのアルバイトでした


好きな男の子がいて

彼は自転車で配達していました


細い背中に赤い自転車

ヘルメットを被っていないから

彼のさわやかな表情が通りすぎて

ゆくのが見えて

胸の奥が大きく高鳴りました


アルバイトが終わった帰路

細い背中に赤い自転車が

坂道の途中から見えて


私は

ゆっくりゆっくり

気づかれないように

鼓動が早まるのを感じながら

登っていって


細い背中と赤い自転車が近づくと

彼は自転車のハンドルに腕をのせて

スヤスヤ寝ていました


箱いっぱいに詰まっていた年賀状

箱はきれいにカラになって

やりきっていました


こんなところで寝たら風邪をひく

危ないよ

起きた方がいいよ


言えない私は自分の上着を脱いで

彼の背中にかけてあげました


細い背中がぴくりと動くと

私はあわてて家路へ走って行きました


熱くて熱くて

深く暗いところへ隠れたくて

逃げたくて


あの上着に私の名前はありません

どこにでもある上着です

彼の細い背中にあげた上着です


どうか返さないで

誰にも知られたくない

いらなかったら捨ててください


私は翌日 アルバイトを辞めました

私の上着を片手に持って

「これ 誰のかわかる?」と

アルバイト仲間に聞いている彼を

背中越しに見ながら




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― 新着の感想 ―
[一言] 切なくりますね 思いを伝えるのって簡単じゃないですね
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