表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな約束  作者: 如月イヴ
本編
4/8

決意

「いつまで颯くんを縛り付けておくつもりなの!?」


その言葉は、私の心を深くえぐった。


*  *  *


放課後。


「帰ろう。紗枝。」


いつものように、颯は私に声をかける。

私は、弥生と顔を見合わせて同時にため息をつく。

私は、颯に向かって渋々頷くと荷物を持って教室から出ようとする。

すると、珍しく加奈ちゃんが教室に入ってきた。

いつもは、教室の外で待ってるのに…。

若干、驚きながらも加奈ちゃんを見つめる。


「ねぇ、紗枝ちゃん。話があるんだけど。」

「え…。」

「颯くんはここで待ってて。行こう、紗枝ちゃん。」


真剣な顔で私に話しかけると私の腕をとって歩き出した。

私は、引きずられる形で教室を後にした。


連れてこられたのは校舎裏。

加奈ちゃんは私と向き合ったまま、俯いている。

何も言い出す気配がない。



嫌な予感がする。

緊張しながら、加奈ちゃんを見つめた。


「もう、限界。」


加奈ちゃんの口からこぼれ出た言葉に耳を疑った。

俯いていた加奈ちゃんが顔をあげる。

今にも、泣きそうだった。


「颯くんに誕生日プレゼントを貰ったとき嬉しかったの。ちゃんと覚えててくれたんだって。やっと、颯くんが彼氏だって実感できた。

そう、思ったのに…。

その後、颯くんが何を話し始めたか分かる…?」


何となく想像できたけれど、嘘であってほしくて首を横に振った。


「あなたのことよ。」


加奈ちゃんは悲しそうに微笑んでいた。

私は心の中で颯を責める。


「貴女とプレゼントを選びにいったこと。とても、楽しそうに話してたわ。」

「…そう。」


そっと相づちをうつ。

加奈ちゃんの瞳から一粒涙がこぼれた。


「まるで、貴女が颯くんの彼女みたいじゃない…!」

「そ、れは…。」


何も言えずに、加奈ちゃんから視線をそらす。


「颯くんの彼女は私なの!貴女じゃないの!!なのにどうして、貴女が颯くんの一番傍にいるの!?」


加奈ちゃんは涙を乱暴に拭うと私を睨み付けてきた。


「ずっと我慢してきた。颯くんが私より貴女を優先させても、颯くんに嫌われたくないからずっと我慢してきた。でも、もう限界!幼馴染みだからって颯くんに甘えすぎよ!!」


怒りを抑えるためか下唇を強く噛み締めている加奈ちゃん。


「貴女は…貴女はいつまで颯くんを自分に縛り付けておくつもりなの!?」


その言葉は、私の心を深くえぐった。

ぼやけ始めた視界。

私は、必死に瞬きをする。

私は、泣いちゃいけない。


「何か言いなさいよ…。何かいってよぉ…。」


さっきとは、うってかわって弱々しく呟く加奈ちゃん。

そっと顔を見ると堪えきれなかった涙がこぼれ落ちていた。




あぁ、私はなんてバカなんだろう…。

自分が傷つきたくないがために、加奈ちゃんをこんなに傷つけるなんて。


小さい頃の約束にいつまでもすがっていてはいけない。

そんなの分かってた。

でも、なかなか一人になる勇気がでなくて。

もう少し先でもいいやと先延ばしにしていた。

そして、ずるずるとここまで来てしまった。


もう、止めよう。

加奈ちゃんのためにも、颯のためにも私は自立するべきだ。

自立というほど大袈裟なものではないけど。

けれど、いつまでも甘えているわけにもいかない。


私は。

私は…。


もう、颯の優しさに甘えるのを止めよう。

颯を自由にしてあげよう。

これ以上、加奈ちゃんを傷つけないためにも…。



私はやっと決意したよ。



私はそっと深呼吸をした。



「加奈ちゃん。今までごめんね。私、颯に甘えすぎだよね。ただの幼馴染みなのに。

…私、ちゃんというよ。颯を自由にする。

…本当にごめんね。今までたくさん我慢させて。傷つけて。」

「ううん。いいの。それより、約束よ?」

「…うん。」


私はちゃんと微笑めていただろうか?

私は加奈ちゃんに背を向けて、颯がいる教室に向けて歩き始めた。


その時、私はまわりを気にする余裕などなかった。

だから、気がつかなかった。


「はぁ。うっとうしかった。」


加奈ちゃんの呟きに。



いつもより短い気がします。



次回は、紗枝が盛大に勘違いしたまま颯と話します。

現在執筆中ですが、書いてて思いました。

この子、にっぶ!

おかしな方向に思考が転がっていく紗枝ちゃん。

大丈夫でしょうか…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ