いち紳士 ダンボーさんと朝。
いきおいです。何が書きたかったのやら………。一昨日「原初の弟」を投稿したばかりなのに、一気に三足の草鞋?なんてこったい。
ダンボーさんと俺。は完全な私の息抜きの為、不定期更新となりますがほのぼのしていただけたらいいなぁ、と思います!ひたすらゆるく!シリアスなんて、ないぜ!
「和樹。醤油かけてくれ、目玉焼きが食べたいのだ」
「自分でかけなよ、ダンボーさん」
「む。醤油はこぼすとシミになってしまうから、最新の注意を計るのだ。よって和樹、醤油かけてくれ」
「………はぁ。はい、これでいいか?」
「おう!いい醤油加減だぞ」
「何それ」
俺の名は、千葉和樹という。今年上京したばかりの、大学一年生だ。そして、ここは俺の部屋。先ほどから俺に醤油、醤油と五月蠅いのはダンボーさんという。ダンボーが名前ではなく、ダンボーさんまでが名前の、段ボールだ。
え?段ボールは喋らないって?そんなことは俺も知っている。だが、ミカン箱程の大きさの何も書かれていない段ボールに貼られている、黒の丸い二つの厚紙と、同じく黒の横に長い長方形の厚紙は、丸が三つあれば人の顔だと認識するという人間の本能に逆らうことなく無機質だが顔に見えるし、トイレットペーパーの芯を三つほどくっつけた手らしきパーツも、たまに取れるが器用に動く。
そういうことで、生きているのか?と聞かれれば微妙だが、まさしくダンボーさんはお喋り素敵段ボールなのだ。
「ところで和樹。大学とやらに行かなくていいのか?いつもなら、慌てて遅刻だ何だと騒いでいるじゃないか」
「今日は、大学は無しです。俺の目玉焼き横取り出来なくて、残念だったなダンボーさん」
「くっ………それを知っていながら、よくも俺の目の前でその目玉焼きを食べられるな!この外道!!」
「え!?これ元々俺のですが!!」
ダンボーさんの好物は目玉焼き。どんな法則が、というかどんな力が働いているのかは知らないが、このダンボーさん、なんでも美味しく頂けるスーパーボディの持ち主なのである。
先ほども言ったように、ダンボーさんの体は段ボールであり、トイレットペーパーの芯が手である。しかしながら、胴も足もない。移動手段は飛び跳ねる。某ポケットのモンスターに出てくる鯉の王様の必殺技と同じだ。皆が知っている通り、効果は毛ほどもない。ダンボーさんがこの飛び跳ねるで移動できる距離は、一回につき3㎝ほどでしかない。
つまり………。
「もういい。お前のような馬鹿には付き合ってられん!だからお前はいつまでたっても和樹なのだ!」
「どういうこと、それ」
「しかし、俺は大人で紳士な段ボール。こんなことで苛立つことなどありえない。さて、今日も電信柱の祐子さんにご挨拶といこうか。っよ!っほ!とぁ!………和樹」
「はいはい」
三回飛び跳ねたところで、目的の場所へは辿りつけないというわけだ。そうして俺は、いつものようにダンボーさんを両手に抱え、電信柱の祐子さんが良く見える窓際にダンボーさんを連れていく。
「やぁ、おはよう。今日も清々しい朝だな、祐子さん。こんな朝は目玉焼きに限る」
どんな朝も目玉焼きなわけだが、そんな野暮なことは言ってはいけない。一度それを言って、ダンボーさんに睨まれたことがある。目の形はまるで変わりはないのに、すごく睨まれているのがわかる不思議。軽くトラウマものだ。
「ほほう。祐子さんは目玉焼きには塩コショウで勝負派か。実にシンプルで素晴らしい。だが、敢えて言おう。俺は醤油でアタック派なのだ、祐子さん。今度それで食べてみるといい。新境地が開かれるだろう。和樹も、俺のこの言葉により、醤油でデストロイ派に生まれ変わったのだよ」
派ってなんだ、派って。醤油はアタックなのか?デストロイなのか?そして俺はどうでもいい派だ!!………というか、祐子さん目玉焼き食うのかい。
「ん?タイプの女性かい?ははっ、大胆だな祐子さんは。そうだね、俺は君のように芯の詰まった女性はとても好ましく思っているよ」
いきなりぃ!?そりゃ祐子さんは詰まってるよ!!だって電信柱だもの!!ダンボーさん、貴方は何と恋愛するおつもりか!!
「俺が空気のように掴めない?中身が見えなくて不安?………祐子さん、俺はそんな大それた者じゃないよ。ただ、のらりくらりと流れていたいのさ。馬鹿な男と笑ってくれて構わない。けれど、君とのこの時間を俺はとても気に入っている」
祐子さぁぁぁぁあん!!騙されないでぇぇぇ!!そいつ中身ないからぁぁぁ!!すっかすかだからぁぁぁぁあ!!ていうか、何その会話ぁぁぁ!!
「こんな綺麗な朝に、そんな泣くものじゃないよ祐子さん。男には、自分の世界があるのさ。そう、例えるなら………空を翔る、一筋の流れ星。許してくれ」
貴様はどこの大泥棒なのだ。そして朝っぱらからする会話ではない。お前こないだの再放送ではまったな?
「………和樹。祐子さんを泣かせてしまった。俺はもう、ここにはいられない。後を、頼む」
このタイミングで!?キラーパスにもほどがあるぜ、ダンボーさん!!あと、哀愁漂わせてるようだが、俺から見たら間抜けな段ボールにしか見えないぜ!
「あー、えっと、よし。ダンボーさん撤収」
「む!?おい、こら。そんな乱暴に持つな!凹む!壊れる!破れる!」
「大丈夫。ダンボーさんは丈夫な紳士。例え凹んでも、壊れても、破れても、ダンボーさんは丈夫な紳士」
「そ、そうか。な、ならいい。そうだな、俺は丈夫な紳士。珍しくいいことを言ったな、和樹」
凹んでも、壊れても、破れても、の時点で丈夫のカテゴリーからは外れるわけだが、流石はダンボーさん。紳士がつけば、万事解決だ。
「さぁ、ダンボーさん。ここで静かにしててくれ」
「む、ここは押し入れではないか!嫌だぞ、こんな場所は紳士に似合わない。お、おい!閉めるな、出せぇ!!」
「なぁ、ダンボーさん。ダンボーさんには見えないのか?そこにいる、壁のシミのくるみちゃんが」
少しばかり、呆れたように口に出すと、案の定ダンボーさんが食いついてきた。
「く、くるみちゃん………?」
「そう。そこの壁のシミのくるみちゃんはな?その暗い場所で、ずっと一人きりで寂しい思いをしてたんだ。女の子が悲しい顔をしているのに、ダンボーさんは見捨てられるのか」
「初めまして、かな。くるみちゃん。俺の名はダンボーさん、という。しがない、ただの紳士段ボールさ。すまない、こう暗くては君の涙さえ拭うことが出来ないのだ。俺でよければ、いつでも話相手くらいにはなろう」
押し入れの中ならあまり声も聞こえないだろう。それにしても、素晴らしい順応力だなダンボーさん。あっという間に押し入れになじんでしまった。ま、元々そこにいたわけだが。
あぁ、そうだな。俺とダンボーさんの出会いを話していなかったか。とりあえず、それは今度の機会としよう。この愉快な同居n………同居段ボールが騒ぎ出すまで、少しの間俺は自由な時間を過ごすのだから。
「ふむ。そんなにくっついているのに、壁殿が振り向いてくれないと?………くるみちゃん、後ろを向いていては駄目だ。もっと前向きにいかなければ、いつまでたっても壁殿に想いは届かないぞ」
シミに前も後ろもあると申すか。
今日のダンボーさん:丈夫(主にメンタル)な紳士。
ダンボーさんまじ似非紳士。ある意味ホラーなのかもしれない、これは。そして、センスが欲しい。